2017年01月08日

番外編★ホンモノは誰?!

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』

※物語版「零(zero)に立つ」のあらすじと、バックナンバーは、こちら


脚本担当のかめおかゆみこです。

冊子「零(zero)に立つ」第2巻・第3巻を、かたちにするため
に、いま、原稿の再チェックをしているところです。

すると、見落としている箇所なども、ときどき見つかります。

とくに後日談は、タイミングを逸して、入れずじまいになっ
てしまったものがいくつかあります。

今日は、「三田のコウウン寺」のお話をします。

第5章第37話。14歳のイセは、家出し、女優の松井須磨子
を頼って上京しますが、会うことかなわず、飛びこんだ仕事
先でもうまくいかず、ついに山形にもどることにします。

けれども、むかっ腹を立てて飛び出してきたものですから、
先立つものがありません。

困っていると、向こうから和尚さんが歩いてきます。

「旅費を貸してください」と頼むイセに、お金を貸してくれた
ばかりか、上野駅まで案内してくれ、パンまでおごってくれ
たという、ふところの広い和尚さんです。

住所を訊くと、「三田のコウウン寺」とこたえました。

この後日談です。

               

山形にもどったイセは、紡績工場ではたらいたお金で、和尚
にお金を送金しようとした。

が、出した手紙は、宛て先不備でもどってきてしまった。よ
く考えると、「三田のコウウン寺」だけでは届くはずがない。

イセは困ったが、どうしようもない。そのまま、長い年月が
流れた。

戦後、網走市議会議員になり、その数奇な人生が小説化
されたり、テレビドラマ化されたりして、イセの名前は全国
的に有名になった。

また、自身も、しばしばテレビ出演するようになった。

あるとき、苦労を重ねた10代の思い出を語っているときに、
ふと、この和尚のことを思い出した。

「三田のコウウン寺と言いましたっけね。あのころは、調べ
るだけの知恵もなくて、そのままになっちゃいましたよ。い
までもあのときの和尚さんには、申し訳ないと思ってますよ」

そんなことを、ぽろりとこぼした。これが、思いのほか、大
きな反響を呼んだ。

放送のあと、「それは、まちがいなく、うちの先代のことです」
と名乗るものがあらわれたのだ。

しかも、3人も!

イセは困った。何十年も前に一度しか会ったことのない和尚で
ある。顔もおぼえていないのだ。

しかたなく、一番たしかだと思われるひとりに、お礼のお金を
わたすことにしたのだった。

しかし、港区三田というせまい地域に、コウウン寺なる寺が3
軒もあるものだろうか。

いま、現在の港区三田の寺を調べてみたが、コウウン寺という
名の寺は現存しない。かろうじて、コウフク寺が見つけられた
だけである。

仮に、イセの聴きちがい、もしくは、寺が引っ越したという解
釈(笑)を採用してみて、調べてみると、港区内には、200
近い寺がある。

そのなかで、コウウン寺は、1軒。高輪の住所に見つかった。

そのほかには、名前の似たものに、コウン寺、コウエン寺、コ
ウセン寺、コウリン寺が、かろうじて見つけられるのみである。

「岬を駈ける女」(山谷一郎著)によれば、イセが海苔問屋を
飛び出して歩いていた道の、ずっと先には、遊廓街があったと
いう。

朝ともなると、その道を、遊廓帰りの男たちが、よく歩いてい
たというのだ。

イセが会ったという和尚、もしかしてとんだナマグサ坊主だっ
たのではないか。

名前を訊かれて、正直にこたえることもできず、つい架空の名
前をこたえてしまったのではないか。

…などと、あらぬ想像をふくらませることも、できなくはない。

いずれにしても、それから、100年というときが流れた。
何があったとしても、水に流すには、充分な年月のようではある。


〆切まで、あと4日
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募集期間/2016年12月31日〜2017年1月12日23時59分
条件/物語版「零(zero)に立つ」の感想を、400字以上
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会場/新宿区内施設(新宿駅から約10分)
参加費/2000円(当日集めます)
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※網走以外の、北海道の写真も掲載していきます。
pyoutannotaki.jpg
「ピョウタンの滝」 
写真提供/北海道無料写真素材集 DO PHOTOさん
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 09:32| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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