2016年12月28日

物語版「零(zero)に立つ」第20章 一世紀を生きて(7)/通巻153話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


イセは、昔から、困ったひとを見ると、つい援助せずにはい
られないたちである。

周囲のものが、「ほっとくと、お財布がからっぽになる」と
危惧してしまうほどだった。

収入がふえても、それで豪華な生活をしたいとは思わなかっ
た。だから、イセの生活は、ずっと質素なままだった。

また、その豪放磊落さで、男まさりのイメージが先行するイ
セではあるが、けっしてがさつであったわけではない。

「私のなかの歴史」を聴き書きした、北海道新聞の記者、石
原は、「身ぎれいにしていて、いつでも女性らしさを忘れな
いひとでしたね」と、述懐する。

「いせの里」で、イセをしたう職員や、元気にあやかろうと
する入居者たちに囲まれて暮らす日々を、イセは静かに楽し
んでいた。

もっとも、完全に「引退」できたわけではない。

イセに相談ごとを持ちかけるものは、相変わらず引きも切ら
なかったし、イセ自身も夢をもっていた。

それは、「いせの里」の近くに、高齢者のための施設を、も
うひとつつくることだった。

「ダンスホールのある施設をつくりたいんだよ。踊れば、元
気が出るよ。毎日が生き生きするよ。そんなホームがあって
いいじゃないか」

周囲のものたちは、感嘆しつつも、なかばあきれた。そんな
イセにたいして、

「ばっちゃん、無理ですよ。お金はどうするんですか」

などと、意見を言おうものなら、イセは、しれっとこたえた
ものだ。

「わたすに意見を言いたいなら、3ケタ(100歳)になって
からにしてもらいたいね」

…もはや、口出しするものはいなくなったという。

2004年、イセは、103歳になった。

8月26日の103歳の誕生日には、たくさんのひとが集ま
って、お祝いをした。

その約1か月前の、「いせの里」の「いせの里祭」で、イセの
写真が撮られた。それが、ポストカードとして配られた。

P_20141207_135541_NT.jpg

(「いせの里」さんで、現物を撮影させていただいたため、
左がわの部分に、反射の光が入っています)

おおきな花束も贈られた。

イセは、いつも以上にごきげんで、満面の笑みをはじけさせた。

「ばっちゃん、シャンパン、いかがですか?」

このところやめていた酒であったが、イセは上機嫌で、そ
れも飲み干した。

楽しい時間は、この先まだまだつづくかと思われた。

その2日後、イセは、たおれた。


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※網走以外の、オホーツク地方の写真も掲載していきます。
niko.jpg
「知床五湖 二湖」 
写真提供/北海道無料写真素材集 DO PHOTOさん
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 07:26| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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