2016年11月14日

物語版「零(zero)に立つ」第17章 イセ、奔走す!(1)/通巻123話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


右も左もわからぬまま、議員になったイセだったが、最初か
ら何もかもうまくいったわけではない。

古株議員たちから、いきなり釘を刺された。

「弱い立場の味方だかなんだか知らないが、行政のことなど
ひとつも知らんのだろう。じゃまになるだけだから、素人は、
口を出すな」

「素人は」ということばには、同時に「女は」というニュア
ンスもこめられていた。

女のイセが当選したことで、落選した現職議員もいた。そこ
への恨みも、暗黙のうちにあったにちがいない。

頭ごなしのその言いかたに、イセはむっときたが、たしかに、
何も知らないのはたしかである。

議会では、ただすわっていることしかできなかったが、その
あいだに、過去の資料などをひっくり返し、少しずつ勉強を
はじめた。

その一方で、自分にもできることはないかと考えてみた。

元刑事で、武術家の武田時宗を師範にはじめた合気道の道場
は、次第に、参加する子どもたちもふえ、盛況となった。

暮らしが落ち着いてきたこともあいまって、けんかや泥棒の
話を聴くことも、このところ、減ってきたようである。

それでも、ひとびとの暮らしは、まだ完全に回復したわけで
はない。

イセは、子どもたちが何か、気持ちをひとつにしたり、元気
が出たりする活動はないかと考えた。

子どもが元気になれば、町が活気づく。そこで思いついたの
が、ラジオ体操である。

ラジオ体操は、旧通産省が主導し、日本人の体格向上のため、
「老若男女を問わず、誰にでも平易にでき、内でも外でも、い
かなる場所でもできる」体操として、開発されたものである。

昭和のはじめにはじまって、すでに広く知られていた。

このころ、イセたちは、能取の牧場を完全に宗治にまかせて、
網走の町のなかに住むようになっていた。

議員の活動をするうえでも、そのほうが都合がよかったので
ある。

その自宅の前に、広場のようになっている空き地があったの
で、そこを会場にすることにした。

まずは、近所の子どもたちに声をかけてみた。

「やってみないかい」

「いいよー」

6時半。毎朝のラジオ体操がはじまった。

はじめてみると、これが予想以上に楽しかった。

何より、毎朝、子どもたちの元気な笑顔が見られる。

娯楽らしい娯楽など、ほとんどない時代である。評判を聴い
て、たちまち子どもたちが集まりはじめた。

子どもたちは、気さくなイセのことを、「ばっちゃん」と呼ん
で、慕うようになった。

「ばっちゃん、おはよう!」

「ばっちゃん、今日は、友だちをつれてきたよ!」

そうなると、イセもますます楽しくなるので、皆勤賞やら努
力賞などをもうけて、もりあげる工夫をした。

飴玉やら、ちょっとしたお菓子を自腹で買って、賞品にした。

やがて、通ってくる子どもの数は、100人を超えるように
なった。

それにつれて、子どもたちの親ともかかわりが生まれる。

よもやま話で、日々の生活のなかで困っていることや、相談
事のあれこれなどを聴いていると、自然に町のなかのことが
わかってくる。

それは、議会ですわっているだけでは得られない知識だった。

そんなふうにして、議員生活第1期が終わった。

そして、第2回目の市議会議員選挙。

イセは、30議席中、5番目の得票率で当選した。初回が27
番目だったことを思えば、大躍進である。

「よしっ!」

イセは、勢い込んで、議会に出向き、宣言した。

「わたすが、常任委員長になる!」


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札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら 
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「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
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詳細は、こちら
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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
20161114258.jpg
「スズラン」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:46| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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