『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。
土日祝日は、連載はお休みさせていただいています。
これまでのあらすじ
★第1章★ いせよ誕生
明治34年(1901年)、今野安蔵・サダの娘、いせよ(のちの中川イセ)
誕生。サダは、産後の肥立ちが悪く、死を予感。ヤクザものの安蔵にあとを
託すことを怖れ、佐藤コウに里親を頼むと、その年のうちに亡くなった。
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★第2章★ 差別と貧しさのなかで
イセは佐藤家の里子になった。佐藤家は貧しく、イセはまわりからいじめられ
たり、差別を受けたりするが、コウの愛情、親友・渡辺みよしの存在、自身の
負けず嫌いの性格で、それらをはね返して成長していく。
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★第3章★ はじめての家出
10歳で実家に連れもどされイセは、学校にも行けず、仕事に明け暮れる。
11歳の夏、モヨとの口論から、初めての家出。山形の船山先生夫妻の
家で住み込みの女中をし、かわいがられるも、翌春、船山先生に満州へ
の転勤辞令が出て、再び実家にもどることになる。
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★第4章★ イセの初恋
またまた家出し、米沢の寮づきの織物工場ではたらく。仲間もできて楽し
い日々。そんな中、隣に住む名家の次男坊・戸田茂雄との初恋も体験。し
かし、安蔵にイセの居場所を知られたことで、イセは実家に帰ることに…。
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★第5章★ 女優志願
実家にいる間、地域巡演で山形にきた松井須磨子(実はにせもの)にあこが
れ、家出して上京する。しかし、たずねた帝国劇場に須磨子はおらず、い
くつかの仕事を転々とするが、結局あきらめて山形にもどることになる。
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★第6章★ 運命の歯車
人絹工場、機織り工場などではたらくうち、かつて実家に出入りしていた
芸人・八重松と再会。乱暴されて子どもを身ごもり、17歳で娘・愛子を
出産。その後、北海道の遊廓への話をもちかけられ、悩んだ末、イセは3
年で500円の借金をし、そのお金で愛子を里子に出すことにする。
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★第7章★ 網走まで
大正7年暮れ、イセは北海道に旅立った。ところが途中で虫垂炎から腹
膜炎をおこし、到着した旭川で即入院。借金が倍の1000円となり、
網走の遊廓に売られることに。駅前の島田食堂の夫婦にかわいがられる。
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★第8章★「お職」になる!
自転車を借りて町内を乗り回したり、柔道場に通ったりしたイセだが、娼
妓になると今度は、囲碁や将棋をおぼえ、お客を楽しませる工夫をした。
また酒に強く、何度も杯を重ね、そこから収益をあげることも考えた。
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★第9章★「小梅」の死
イセは、娼妓に乱暴した客を一本背負いで投げ飛ばすなどで、娼妓たちの
信頼を勝ち得ていった。しかし一方で、妹ぶんの「小梅」が、失恋を苦に
自死。小梅の死をきっかけに、娼妓みんなでちからをあわせることを誓う。
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★第10章★中川卓治という男
イセは、柔道場で出会った中川卓治と親しくなり、急速に気持ちが近づい
ていく。卓治の妹・タマは、2人の交際をはげしく反対するが、卓治はイ
セに求婚し、イセは身請けされて、ついに遊廓を出る。
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★第11章★樺太にて
中川家よりもイセを選んだ卓治。2人は樺太にわたり、仕事を見つけて
はたらき、暮らしを立てた。卓治は、酒がもとでけんかをして大けがを
したりもするが、ついに茂市の許しが出て、網走に帰れることになる。
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★第12章★岬の日々
網走の能取岬にある中川牧場の管理をまかされたイセたち。その雄大な
景色にイセは魅了される。乗馬も覚え、少しずつ馬との暮らしに親しみ、冬
になれば、流氷の美しさに見とれる。平和な日々がすぎていく。
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★第13章★茂市の死
卓治の父・茂市が、娘婿・東条貞の選挙資金調達で14万円の借金を残
して死去。イセと卓治はその借金を引き受ける。拓銀に50年割賦(ロー
ン)を頼むため、イセは札幌本店に出向き、交渉を成立させる。
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★第14章★戦況のなかで
借金返済のため、卓治とイセは、馬喰となった。また、念願の愛子をひき
とり、やがて、養子の清と結婚させる。しかし、清は、海軍に招集され、戦死。
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★第15章★米軍上陸?!(2016.11.4ぶんまで)
1945年7月、網走空襲。米軍が上陸するかも…という緊迫感のなか、イセ
はおとりになると宣言し、町長公宅に泊まり込む。しかし米軍は上陸せず、8
月15日、終戦をむかえる。
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いつもご愛読ありがとうございます
ラストが見えてきました。
今週で、一番の山場である、「米軍上陸」の章が終わりました。
このあと、戦後に移り、はじめて、女性に参政権ができ、イセ
さんは、網走市議会議員選挙に立候補することになります。
今回、主要資料にさせていただいている、山谷一郎さんの
「岬に駈ける女」は、実は、そこで終わっています。
語り劇「零(zero)に立つ」も、ほぼ、そこで完了です。
「岬に駈ける女」が書かれたのは、1992年。
ただしこの作品は、それより6年前に出版された、「オホーツク
凄春記」のリメーク版です。
このとき、イセさんは85歳。そこからまだ、18年は現役の人
生がつづくわけです。
ですから、本当なら、連載はそこまでつづくわけです。
けれども、イセさんのことを直接語れる、みぢかな関係者は、
ほとんど亡くなってしまいました。
夫の宗治さんはもちろんですが、息子の宗治さんも、旅立た
れました。
娘の愛子さんも長寿であったようですが、80代で亡くなった
と聴いています。
イセさん自身は、遊廓時代の、からだへの無理がたたってか、
その後、お子さんはできませんでした。
清さんと愛子さんのあいだにできたお子さんは、たしか、イ
セさんより早くに亡くなられたように記憶しています。
ですから、イセさんの血を直接つぐかたは、もうどなたも残
っておられないのです。
山谷さんが書かれた「岬を駈ける女」以降、残念ながら、イ
セさんのことを記した著書は、どなたも書いておられません。
それにしたがえば、この連載も、あと数回で終わりになります。
ただ、もうひとつの資料とさせていただいている、北海道新
聞での集中連載「中川イセ 私のなかの歴史」(石原宏治記
者)は、1993年、もう少しあとまでを追っています。
そこまでは、連載に反映させていただこうと想っています。
なお、今月、ご縁あって、札幌で、語り劇「掌編・中川イセ物
語」を上演させていただく予定です。
それにあわせて、この新聞記事を聴き書きされた、石原さん
とお会いできることになりました。
直接、イセさんに取材されたかたのお話が聴けるのは、とて
も貴重な機会で、楽しみにしています。
そんなわけで、たぶん、この連載、単発のエピソードを含め
ても、今年いっぱいくらいで、完結することになるのではな
いかと考えています。
10月22日のエッセイで、「零(zero)に立つ」第2巻の
ことについて、書きました。
原稿はすでに書き終え、あとは印刷するだけなのですが、少
部数のため、ある程度の冊数が出ないと、制作費に達しません。
もし、この連載をお読みいただき、おもしろいと想っていた
だけましたら、第1巻をご購入いただけると、大変ありがた
いです。(それが第2巻の制作資金にもなります…)
どうぞよろしくお願いいたします。
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札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら
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イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
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夢実子の語り劇を上演してみませんか?
網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
「網走川祭」
※一般社団法人網走市観光協会さまご提供