2016年10月03日

物語版「零(zero)に立つ」第13章 茂市の死(4)/通巻94話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


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日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
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条件/物語版「零(zero)に立つ」の感想を、400字以上 
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脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬を駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47 
48 49 第8章 51 52 53 54 55 56 57 58 59
第9章 60 61 62 63 64 65 66 第10章 67 68 69 
70 71 第11章 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 
82 83 84 第12章 85 86 87 88 89 90 第13章 91 
92 93 
※これまでのあらすじは、こちら


茂市の葬儀が終わり、ふたたび、親戚一同が集まった。

中川家は、長男である卓治がつぐことになる。卓治を上
座に、みながぐるりとすわった。

年かさの親戚のひとりが、声を発した。

「卓治よ、茂市さんの相続のことだがな…」

すると、イセが、静かに、けれどもきっぱりと言った。

「あのときもお話しましたが、借金は、私どもで引き受け
ます」

親戚たちはざわめいた。

「無茶だ。返せるはずがない!」

「あとで泣きついても、知らないからな」

「身のほど知らずにも、ほどがある」

しかしそのとき、卓治が太い声で一喝した。

「イセがやると言ってるんだ。やらせろ」

結婚して7年。卓治は、イセをこころの底から信頼していた。

イセはやる。いったん、やると決めたら絶対にやる。それを
ささえるのが、おれの役目だと。

その気迫に、親戚たちは、それ以上言うことができずに、不
承不承引き下がった。

けれども、それからが大変だった。一刻のゆうよもなく、借
金返済のために、動かなくてはならなかったからだ。

イセたちは、能取の牧場をいったんひとにまかせ、自分たち
は町に出てきて、中川の家で暮らすことにした。

当初は、町で仕事を見つけてはたらき、それで返していこう
と想っていたが、額が大きすぎて、そんなことではまともに
返せそうにない。

14万円の借金先は、すべて、北海道拓殖銀行だった。

茂市は、町会議員という肩書と信用で、それだけのお金を融
資してもらっていたわけである。

「イセよう、どうするつもりだ。何か考えはあるのか」

卓治がたずねると、イセはこたえた。

「うん。とにかくいきなり全額は無理だから、銀行さんとか
けあって、割賦にしてもらおうと思うんだ」

「なるほど。それなら、一回に返すぶんが、少しは楽になる
な。しかし、それにしても、何回くらいにしてもらうんだ」

イセはじっと考え込んでいたが、ひとこと、言った。

「50年って、想ってる」

「ご、50年?」

卓治は、めんくらったように聴き返した。

「そんなに長い割賦って、あったかのう」

「ないと思う」

「なら…」

「だけど、そのくらいでないと、どうしたって返せない。わた
すは、返すつもりで考えてるんだし、銀行さんだって返して
もらったほうが得なんだから、とにかくかけあってみる」

イセは、にこっと笑って、立ちあがった。


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
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「感動の径ウォーク」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 05:18| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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