語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
夢実子の語り劇を上演してみませんか?
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札幌★夢実子×ゆみこ 語り劇&ワークショップ
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら!
お申し込み/こちら!
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脚本担当・かめおかゆみこです。
山谷一郎著『岬を駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。
第1章 1 2 3 4 第2章 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47
48 49 第8章 51 52 53 54 55 56 57 58 59
第9章 60 61 62 63 64 65 66 第10章 67 68 69
70 71 第11章 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81
82 83 84 第12章 85 86 87 88 89 90 第13章 91
92
※これまでのあらすじは、こちら
1928年(昭和3年)秋。
卓治の父、茂市がたおれたとの一報が、能取岬のイセたちの
もとにとどいた。
あわてて駆けつけると、すでに親戚たちも集まってきていた。
さいわい、一命はとりとめたが、心臓がかなり弱っていると
のことだった。
状態が安定するまで、数日、入院し、その後は、茂市の希望
もあって、自宅にもどることになった。
そのかん、イセは、献身的に看病につとめたが、そんななか
で、親戚たちのうわさ話がもれ聴こえてくる。
「相続が…」
「借金が…」
聴いてみて、おどろいた。
町の資産家、町の名士として名の通っていたはずの茂市が、
実は、莫大な借金を背負っているというのだ。
「選挙だよう」
「そうそう。町の選挙ならまだしも、国の選挙となると、そり
ゃあ途方もない金がかかるだろ」
「相当ばらまいたらしいからねえ」
娘の夫である、東条貞の選挙資金の話だった。
4年前の北海道議会議員選挙にはじまって、この春の衆議
院選挙にいたるまで、茂市は、自分の資産を担保に入れま
くって、東条の選挙資金を捻出した。
「なんでも、それが、14万円にもなるっていうじゃないか」
当時の14万円は、現在に換算すると、およそ2億8千万円に
なる。計算方式にもよるだろうが、少なく見積もっても1億は
くだらない。
いずれにしても、途方もない額である。
「それを、卓治さんが相続するのかい?」
「背負いきれるものかね。まさか、我々にまで火の粉がふりか
えるなんてことはないだろうね」
「いや、法律で、限定相続っていうのをすれば、借金は相続し
なくてすむんだってさ」
「そんならいいけど…」
ここでいう限定相続とは、正式には、「相続の限定承認」の
ことをいう。
「相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務
及び遺贈を弁済すべきことを留保して」相続の承認をするこ
とである。 ※詳細は、こちら
実際、茂市自身も、自分のいのちはもう長くないことを察し
て、卓治に、そっと、限定承認をするように、すすめていた
のだ。
けれども、町の名士としてやってきた茂市にとって、それは
苦渋の決断であったにちがいない。
自分が一代できずきあげてきたものを、すべてうしなってし
まうばかりか、かけがえのない息子に、何ひとつ残してやる
ことはできないのだから。
イセは、決心した。
いまわのきわの茂市の枕元で、こう宣言したのだ。
「お義父さん、安心してください。お義父さんの借金、私たち
がはたらいて、必ず返します。お義父さんがきずきあげてき
た財産、なくすようなことはしませんから」
まわりの親戚たちは、顔を見合わせてざわめいたが、茂市
の手前、おもてだって何かを言うことはできない。
いや、内心では、死んでいく茂市にたいする気休めとしか、
想っていなかったかもしれない。
しかし、それを聴いた茂市は、ほっと安堵の表情を見せた。
そして、糸が切れるように意識をうしない、こんこんと眠りつ
づけ、数日後、静かに息を引き取ったのだ。
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「ワカサギ釣り(網走湖」
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