2016年09月29日

物語版「零(zero)に立つ」第13章 茂市の死(2)/通巻92話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


夢実子の語り劇を上演してみませんか?

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札幌★夢実子×ゆみこ 語り劇&ワークショップ

日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら
お申し込み/こちら
おもて面小.JPG うら面小.JPG
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脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬を駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47 
48 49 第8章 51 52 53 54 55 56 57 58 59
第9章 60 61 62 63 64 65 66 第10章 67 68 69 
70 71 第11章 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 
82 83 84 第12章 85 86 87 88 89 90 第13章 91 
※これまでのあらすじは、こちら


タマの夫、東条貞(とうじょう・ただし。通称は「てい」)は、茂市
と同じく、網走町会議員であった。

それが、3年前の1924年に北海道議会議員に鞍替えし、さ
らに、衆議院議員に立候補しようとしていた。

この年、1927年。翌1928年は、日本ではじめての普通選
挙がおこなわれることになっていたのである。

それまでの法律では、立候補できるのは「直接国税3円以上
納める25歳以上の男子」というきまりがあり、それは、全対
象者の5.5パーセントにすぎなかった。

しかも、この時代、まだ女性の参政権はみとめられていない。

普通選挙.JPG
※出典は、こちら

もともと、富裕層しか立候補できない仕組みだったから、選挙
現場も、すべて金次第という空気が蔓延していた。

いわゆる「札束が飛び交う」というのは、けっして比喩ではな
かったのである。

法律が変わったからといって、その空気がおいそれとあらたま
るはずがない。

そのなかにあって、東条貞は、新聞記者を転任した経歴をもち、
珍しく弁舌の立つ男であった。

雄弁ぶりがみとめられ、一町議会議員から衆議院議員までの
ぼりつめることになるわけだが、その東条とて、金なしには選挙
はできない。

金庫番として、采配をふるったのが、ほかでもない、東条の義
父となった、中川茂市だったのである。

もともと、町議会でいちはやく東条の才能を見抜いていた茂市
にとって、タマとの結婚は、願ってもないことだった。

それ以来、ことあるごとに、うしろだてとなって、資金の調達に
奔走してきたのである。

翌1928年(昭和3年)2月20日、東条は33歳の若さで、
衆議院議員に立候補。惜しくも落選するが、2年後の1930
年の総選挙では、当選し、計5期をつとめることになる。

しかし、その後、戦時中、翼賛政治会に所属していた経歴
などがもとで、戦後は公職を追放となり、引退するのであった。

…と、話は横道にそれたが、ともかくその日は、東条の衆議
院議員立候補表明の内祝い会となり、とても、愛子のことを
言い出せる雰囲気ではなかった。

「しかたない。イセ、またにすべえ」

卓治が言い、イセも、うなずかざるを得なかった。

しかしこのあと、事態が急展開し、愛子を引き取るまでに、
さらに、4年の歳月を要しようとは、このときの卓治とイセ
は、知る由もなかったのである。


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
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「流氷」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:55| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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