2016年09月28日

物語版「零(zero)に立つ」第13章 茂市の死(1)/通巻91話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


夢実子の語り劇を上演してみませんか?

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札幌★夢実子×ゆみこ 語り劇&ワークショップ

日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら
お申し込み/こちら
おもて面小.JPG うら面小.JPG
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脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬を駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47 
48 49 第8章 51 52 53 54 55 56 57 58 59
第9章 60 61 62 63 64 65 66 第10章 67 68 69 
70 71 第11章 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 
82 83 84 第12章 85 86 87 88 89 90
※これまでのあらすじは、こちら


どれほど、幸せな日がつづこうと、イセのこころのなかには、
いつもひそかに、絶えない悲しみがあった。

それは、もちろん、郷里においてきた娘、愛子のことだった。

いつしか故郷を離れて、10年の月日が流れていた。愛子も、
もう10歳になっているはずだった。

あのとき、後妻のモヨに、2年分の借金500円を、愛子の
育て賃にとあずけて、実家をあとにした。

その500円が、ただの一銭たりとも、里親である、寒河江
の五十嵐家にわたっていないと知ったのは、樺太からもどっ
てきてからだった。

どうしても、愛子に直接、着物を送りたいからと、実家に、
五十嵐家の住所をたずねたのだ。

これまではすべて、モヨに託して、わたしてもらっていた。

けれども、暮らしによゆうもでき、愛子もおおきくなって、
文字も書けるようになったろうから、直接やりとりしたいと
思ったのだ。

モヨがしぶしぶ教えてくれた住所に、送ったところ、返っ
てきた返事に、そのことが書かれてあった。

それだけではない。これまでなけなしの金をはたいて送っ
ていたものすべてが、モヨによって、粗末なものにとりか
えられていたことを知ったのだ。

「私が毎月届けてあげるから」と言った、モヨの赤いくち
びるが、鮮明に脳裏によみがえった。

だまされたのだ。一度ならず二度までも…。
自分は何のために、遊廓へと身を落としたのか…。

怒りよりも、情けなさとくやしさがこみあげてきた。

そして、愛子はそのことを聴かされているのだろうか。
自分を、どれほど薄情な親と想っているだろうか。

さいわい、五十嵐家は、イセが育ててもらった佐藤家
とちがい、暮らしにはよゆうがあった。

手紙を読むかぎりでは、愛子は、わが子のように大切
に育ててもらっているようだ。

それだけが、せめてものすくいだった。

そうこうするうち、能取岬に落ち着いて3年が経った。

あるとき、イセは思い切って、卓治に、「そろそろ、
愛子を引き取れないだろうか」と、もちかけた。

卓治も、そのことは考えてくれていたようだった。

牧場の経営は安定していて、愛子ひとりふえても何も
問題はない。

宗治も、「オレに、妹ができるのかあ」と言いながら
も、まんざらでもない顔をしている。

しかし、そのためには、中川家の当主である、茂市の
許可がいる。

思い立って、ある日、2人は、網走市内(当時はまだ
網走町であるが)の中川家をたずねた。

ところが、着いてみて、イセと卓治は顔を見あわせた。
玄関先に、くつがあふれんばかりに散らかっていたのだ。

家のなかからは、わいわいとにぎやかな声が聴こえ、
何やらもりあがっているようすが、伝わってくる。

「しまった。前もって連絡しておけばよかったかな」

そう言い合っているうち、なかから出てきた卓治の妹、
タマが、めざとく2人を目に止めた。

「あら、兄さん! ちょうどよかった。知らせをやるとこ
ろだったわ。うちのひとが、来年の選挙に正式に出る
ことが決まったの」


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
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「流氷と早春のウニ漁」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:22| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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