語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
夢実子の語り劇を上演してみませんか?
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札幌★夢実子×ゆみこ 語り劇&ワークショップ
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら!
お申し込み/こちら!
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脚本担当・かめおかゆみこです。
山谷一郎著『岬を駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。
第1章 1 2 3 4 第2章 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47
48 49 第8章 51 52 53 54 55 56 57 58 59
第9章 60 61 62 63 64 65 66 第10章 67 68 69
70 71 第11章 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81
82 83 84 第12章 85 86 87 88
※これまでのあらすじは、こちら
樺太ほどではないけれども、オホーツクの冬は長くきびしい。
お盆がすぎると秋風が吹き、9月もなかばになると霜が降り、
10月には初雪が降って、早ければ12月のはじめには根雪
(冬のあいだ溶けない雪)になる。
本州のひとは、「雪が溶ければ水になる」と言うが、北海道
の人間は、「雪が溶ければ春になる」と言うと言われる。
その春がやってくるのは、ようやく、4月になってからだ。
そんな北海道でも、能取岬の冬は、さらにきびしかった。
三方が吹きさらしの牧草地では、風はとどまるところなく、
木々や建物に吹きつけてくる。
湿気の少ない北海道の雪は、「パウダースノー」と呼ばれ
て、スキー客にはよろこばれるが、生活をするうえでは、
ゆだんがならない相手だ。
その強い風にあおられて、いったん降った雪が、ふたたび
四方に舞い狂うのだから。
地吹雪である。
視界はさえぎられ、30センチ先も見えないほどだ。能取
岬のような、吹きっさらしの場所では、まさに一寸先は、
白い闇である。
いまとちがって街灯も何もない時代、そんななかで道に迷
えば、容赦なく死が待っている。
しかし、それほどにきびしい能取岬の冬が、イセは、好き
だった。
さすがに猛吹雪のさなかに、出歩くことはないが、雪がや
むと、すぐに外に飛び出さずにはいられない。
強い風にあらわれたあとの、真っ青な空。誰も踏みしめた
あとのない真っ白な雪原。そして、その向こうにどこまで
も広がる海。
そのどれもが、イセのこころをひきつけてやまないのだ。
「母ちゃん、オレも行く!」
小学生になって、すっかり背丈の伸びた宗治が、イセのあ
とにつづく。
凍傷にかからぬよう、幾重にもしっかりと着込み、雪をこ
いでいくイセたちの姿を、卓治はいつもあきれてながめて
いる。
「こんな日は、ストーブごんごん炊いて、甘酒でも飲んで
るにかぎるべや」
そうして、そのことばのとおり、居間のダルマストーブの
うえに鍋をおいて、ゆっくりと甘酒をかき混ぜる。
イセたちがもどってきたら、一緒に飲むためである。
しばらく経つと、頭のてっぺんから足のつまさきまで冷え
きったイセたちが、ころがるように、家に駆け込んでくる。
「わあ、いいにおい!」
宗治が、すかさず声をあげる。
そうして、一家3人、はふはふと甘酒を飲んであったまると、
また着込んで、今度は3人一緒に、雪かきにでかけるのだ。
家のまわり、厩舎のまわり、そして、町へとつながる道まで
の通り道。雪かきの量も半端ではない。
それもまた、3人でやれば、つらくはない。
そして、イセには、さらにもうひとつ、楽しみがあった。
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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
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「流氷」
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