語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
夢実子の語り劇を上演してみませんか?
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2017首都圏公演を実現させるぞ!チームミーティング
日時/2016年9月21日(水)19時30分〜21時
会場/東京都品川区西五反田2-9-7 テルミ五反田アンメゾン413
詳細/こちら! お気軽にお立ち寄りくださいね〜♪
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札幌★夢実子×ゆみこ 語り劇&ワークショップ
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら!
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1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
※イセさんの誕生〜北海道に渡るまでを、まとめて一気に読めます。
★詳細は、こちら! ★お申し込みは、こちら!
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脚本担当・かめおかゆみこです。
山谷一郎著『岬を駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。
第1章 1 2 3 4 第2章 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47
48 49 第8章 51 52 53 54 55 56 57 58 59
第9章 60 61 62 63 64 65 66 第10章 67 68 69
70 71 第11章 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81
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※これまでのあらすじは、こちら
勘当はとかれたといっても、家族や親族が歓迎してくれたわ
けではない。
実際、網走に着いて、まっさきに中川家をたずねたときも、
表玄関からは入れてもらうことはできなかった。
昼どきだというのに、食事も出ない。
けれども、イセたちは、そんなことは気にしなかった。
何より、卓治が、樺太にいたときとは比べようもないほど、
生き生きとした表情を見せていたからだ。
(ああ、本当に帰りたかったんだなあ、このひとは…)
イセは、つくづく、その横顔を見て思った。
その卓治が、イセと宗治に声をかける。
「イセ、宗治、昼めし、食いに行くべえ」
3人は、中川家をそうそうに辞して、町のなかに繰り出した。
島田食堂があれば真っ先に行きたいところだが、まだ、島
田夫婦は樺太にいる。
ようやく、一軒の寿司屋を見つけ、中に入った。
網走港からとれたての魚をのせた寿司が、どんと並ぶ。
「うまい、うまいねえ」
樺太でだって魚は食べていたろうに、宗治が、口のまわりを、
ごはんつぶだらけにして繰り返す。
卓治も、その太い指で、寿司をつまむと、ひょいひょいと、口
のなかにほうりこむ。
そのうれしそうな2人のようすに、ああ、故郷に帰ってくると
いうのは、こういうことなんだなと、イセは思わずにはいられ
ない。
自分も、網走を故郷と想って生きよう。
そう思うと、一刻も早く、愛子を引き取りたい想いがつのった。
そのためには、やはり、中川家の当主である茂市の許可をもら
わなければならない。
けれども、今日の中川家の雰囲気からは、そんなことは言い出
せそうもなかった。
また、これからの生活がどうなるかもわからない。
(もう少し…もう少し…)
これまでそのことばを、何回、いや、何千、何万回つぶやいて
きただろうか。
いまもまた、イセは、祈るような気持ちで、こころのなかでつ
ぶやくしかないのだった。
そのイセたちが住むことになったのは、能取岬の突端にある、
中川牧場の一角にある一軒家だった。
能取岬は、網走の市街から12キロほどいったところ。
遊廓時代、自転車を乗り回していたイセも、その先だけは行った
ことがなかった。
海沿いにつくられた道は、細く、奥に行くほどに、両がわは深い
森におおわれ、人家もほとんど見当たらない。
その道を、3人は、荷物をかついで歩いた。
「なんか、クマとか、出てきそうだねえ」
イセが思わずつぶやくと、卓治がのんきそうにこたえた。
「このあたりは、出てもせいぜい、エゾシカかキツネくらいだ。
クマはめったに出んよ」
「めったに?!」
イセは思わず身震いした。
その道の途中を、ぐっと右に折れる。
そこから数百メートルもいったろうか。
いきなり森がとぎれ、視界がぱっとひらけた。
イセは立ち止まり、思わず息をのんだ。
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「流氷」
※一般社団法人網走市観光協会さまご提供