2016年09月13日

物語版「零(zero)に立つ」第11章 樺太にて(10)/通巻81話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


夢実子の語り劇を上演してみませんか?

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2017首都圏公演を実現させるぞ!チームミーティング
日時/2016年9月21日(水)19時30分〜21時
会場/東京都品川区西五反田2-9-7 テルミ五反田アンメゾン413
詳細/こちら!     お気軽にお立ち寄りくださいね〜♪
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札幌★夢実子×ゆみこ 語り劇&ワークショップ

日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら
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「零(zero)に立つ」第1巻 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
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脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬を駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47 
48 49 第8章 51 52 53 54 55 56 57 58 59
第9章 60 61 62 63 64 65 66 第10章 67 68 69 
70 71 第11章 72 73 74 75 76 77 78 79 80
※これまでのあらすじは、こちら


荒らくれ男のひとりが、すっとんきょうな声をあげた。

「あっれー、おまえさん、もしかして、たんぽもち売りの
姉さん…?」

その声に、殺気だった雰囲気が、ふっとやわらいだ。

「なんだと?」

男たちの視線が、いっせいにイセに集まった。

吹雪のなかを、一軒一軒売り歩いたイセの顔を、みんなは
おぼえていたのだ。

「ほんとだ」

「たんぽもちの姉さんが、なんでここに?」

「え? まさか、この男が、姉さんの…亭主?!」

みんなは顔を見合わせ、あわてて、すまきになった卓治を地
面におろした。

「あんた!」

すかさず、イセは駆け寄り、卓治をぐるぐるまきにしていた
縄をほどいた。

さいわい、息はしているが、顔は赤黒くふくれあがっている
し、あちこちから出血していて、相当ひどくやられたようすが
見て取れる。

「いや、こりゃ、すまんことをした。姉さんの亭主だと知って
いたら…」

「何せ、なあ…」

男たちの話をつなぎあわせてみると、朝、卓治は、作業場の
けんかの仲裁に呼ばれて、出かけていった。

仲裁は無事にすみ、卓治は、すすめられるままに、昼ひなか
から、酒を飲みはじめた。

それがいけなかった。

一緒に飲んでいた男と、ちから自慢の話になったのだ。

「いくらなんでも、電柱ば引っこ抜いたりなんかできるかい」

「何だとおっ! 信じないんだら、見てろ!」

すっかり気が大きくなった卓治は、荒々しく、店の外に出た。

たまたま店のとなりに、火の見やぐらが建っていた。

卓治は、その支柱を両腕にかかえると、いきなり、ゆっさゆ
っさと揺さぶりだしたのである。

びっくりしたのは、火の見やぐらに乗っていた男である。

「うわあ、地震だ!」

たちまち、まわりのやじ馬たちも集まってきた。

このようすを、当の消防団の男たちがだまって見過ごすわ
けがない。

「何しやがる!」と、ひとりが止めに入ると、酔いのまわっ
た卓治に、「うるせえ」とばかりに張り飛ばされた。

そのとたん男たちが、いっせいに卓治におそいかかった。

男たちにぼこぼこにされ、「こんなやつは、一度は、死ぬ
思いをさせてやれ」と。

…あとは、宗治とイセが目撃したとおりである。

いかにも荒っぽい話ではあるが、当時は、こんな物騒な話
もまかりとおる時代だったのである。

「う、うむ…う」

ようやく、卓治が息を吹き返した。うっすらと、目を開け
てあたりを見回す。

男たちを見るや、起き上がろうとしたが、からだが思うよ
うに動かない。

「あんた、大丈夫? しっかりして!」

そのとき、手際よく、番屋からたんかをかついできたもの
がいる。

「姉さん、すまねえ。たぶん、骨の2、3本は折れてるは
ずだ。俺らが、いまから医者に連れて行く!」

そうして、さっき、卓治をすまきにしてかついだ男たちは、
今度は、卓治をたんかに乗せて走り去っていった。

嵐のようなできごとであった。


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
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「流氷観光砕氷船おーろら」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:21| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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