2016年08月31日

物語版「零(zero)に立つ」第11章 樺太にて(1)/通巻72話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


語り劇「零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語」を
上演してみませんか?

このほか、会議室・喫茶店等でも気軽に上演できる、フリースタイル版
の語り劇もございます。「真知子」(25分)「掌編・中川イセの物語」(30分)

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オフィス夢実子 電話&FAX 023−658−7061
    メール・yumiko@yumiko333.com

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「零(zero)に立つ」第1巻 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
※イセさんの誕生〜北海道に渡るまでを、まとめて一気に読めます。
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脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬を駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47 
48 49 50 第8章 51 52 53 54 55 56 57 58 59
第9章 60 61 62 63 64 65 66 第10章 67 68 69 
70 71
これまでのあらすじは、こちら


しかし、卓治の妹のタマをはじめ、強固に反対する親戚たちは、
イセを受け入れようとはしない。

「中川家をとるのか、イセをとるのか」と卓治にせまる。

ついに卓治は、「オレはイセをとる」と断言した。つまりは、
中川の家を出ると宣言したのである。

卓治とイセは、あのカツ丼2杯をたいらげた、島田食堂の2階
で、ささやかな祝言をあげた。

卓治の父・茂市は、2人を前に、百円をさしだして言った。

「わずかな金だが、当座の生活の足しにしてくれ。いまは、少
しのあいだ、網走を離れたほうがいい。親戚たちも、そのうち
気持ちが落ち着くだろう」

ことばはやわらかいが、実質は、手切れ金である。

イセは、こんなことになって…と、卓治に申し訳なく感じたが、
当の卓治は、のんきなものであった。

「うるさい親戚連中から離れられるんだから、けっこうなもん
だ。親子三人、気楽に暮らすべえ。なあ、宗治」

宗治は宗治で、イセが本当の母ちゃんになったと、無邪気に
よろこんでいる。

イセは、そんな宗治を、ぎゅっと抱きしめた。

実の母親と別れ、どんなにさびしかったことだろう。もうけっし
て、そんな想いはさせたくない…。

そう思う胸の内では、郷里においてきた娘、愛子への想いが、
いつも影を落としていた。

あれから3年。愛子も、もう3歳だ。

育て親にはかわいがってもらっているだろうか…。さびしい
想いをしてはいないだろうか…。

遊廓を出たものの、いまの状態では、引き取ってやることは
かなわない。

私は、なんて薄情な母なのだろう…。

そんな想いがふつふつとわいてきて、イセは、いっそう強く、
宗治を抱きしめるのだった。

そんなイセに、卓治が声をかける。

「ところで、イセよ、実際のところ、どこへ行こうか。オレは、
東京はどうかと思うんだがな」

「東京?」

「百円ありゃあ、3人ぶんの汽車賃はらっても、お釣りがく
る。残りの金で、東京で何か商売でもするべえ」

北海道で生まれ育った卓治は、東京を知らない。

イセにとっても、東京での生活は、14〜15歳で家出して、
わずか数か月ではあったけれど、生き馬の目を抜くようなせ
わしさは感じとっていた。

卓治の鷹揚な性格には、どうにも向いているとは想えないの
である。

考えあぐねた2人は、島田夫婦をたずねた。

話を聴いた島田食堂のおじさんは、こう言った。

「いっそのこと、樺太へ行くというのは、どうだね?」

「樺太?」


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
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「濤沸資料館」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:33| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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