語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
語り劇「零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語」を
上演してみませんか?
このほか、会議室・喫茶店等でも気軽に上演できる、フリースタイル版
の語り劇もございます。「真知子」(25分)「掌編・中川イセの物語」(30分)
詳細はお問い合わせください。
オフィス夢実子 電話&FAX 023−658−7061
メール・yumiko@yumiko333.com
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※イセさんの誕生〜北海道に渡るまでを、まとめて一気に読めます。
※本日、専用のお申し込みフォームを開設します。しばしお待ちを。
脚本担当・かめおかゆみこです。
山谷一郎著『岬を駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。
第1章 1 2 3 4 第2章 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47
48 49 50 第8章 51 52 53 54 55 56 57 58 59
第9章 60 61 62 63 64 65 66 第10章 67 68 69
これまでのあらすじは、こちら
それからというもの、中川卓治は、足しげく金松楼に通うよ
うになった。もちろん、イセと会うためである。
牧場主の息子の卓治は、金回りがいい。
その卓治が通ってくれることは、金松楼にとってもありがた
いことで、楼主としてもほくほくであった。
しかし、そうてばなしでよろこんでもいられない。卓治自身、
みとめていたが、実は卓治は、相当に酒癖が悪かった
のである。
ふだんは、温厚で、けっして声をあらげることもない。いつ
もにこにこして、鷹揚な態度をくずさない卓治なのだが、い
ったん酒が過ぎると、ひとが変わった。いや、豹変した。
もともと巨漢で、しかもちからも強い。あばれだしたら、誰
にも止めることができないのである。
イセもはじめてその現場に遭遇したときには、唖然とした。
これが、本当にあの卓治なのかと、目をうたがったほどだ。
壁に穴をあけ、障子をやぶり、膳をひっくり返し、手あたり
次第に、ものを投げまくる。
それでもなお足りずに、咆哮し、誰かれかまわずけんかをふ
っかけ、相手が下手に応戦しようものなら、たたきのめすま
で、手をゆるめない。
そうして、あばれるだけあばれると、しまいにはばたりと倒
れて、昏睡するのだった。
そして翌朝、起きると、またいつもの、朴訥で、温厚な卓治
にもどっている。
「すまねえ。悪気はなかったんだが、酒が入るとつい…」
おおきなからだを精一杯ちぢめて、あやまるのだ。
(きっと、お母さんと生き別れたつらさが、いまもぬぐえな
いのだ…)
自分自身も、生母と死別したかなしみをかかえているだけ
に、つい、イセも甘くなる。
それどころか、このひとのさびしさを、私が埋めてやりたい
…と、そんな気持ちにもなってくるのだった。
さて。卓治が、あまりにも金松楼に入りびたっているものだ
から、ひとりぼっちになったのは、息子の宗治である。
ある日、とうとう、卓治をたずねて、金松楼にやってきた。
誰かが「お父さんは、金松楼にいるよ」と、教えたらしい。
応対に出たイセは、はっとした。まだ4歳という、こんな
ちいさな子にさびしい想いをさせるなんて…。
イセは、昼間からごろごろしていた卓治をたたき起こし、
「坊ちゃんのために、ちゃんと帰ってください」と、卓治
を部屋から追いだした。
しかし、卓治の「イセがよい」は止まらず、しかも、昼間
は宗治もやってきて、いつか、イセのことを「母ちゃん」
と呼びはじめたのだ。
これにはイセもまいった。
娘の愛子は、3歳になったはずだ。4歳の宗治を見ている
と、どうしても愛子を思い出さずにはいられないのである。
網走にきたときの借金千円は、もう返し終えていた。
そのあと、何やかにやと上積みされたぶんは、まだ残っ
ていたけれども。
宗治にとっても、きちんと面倒を見てやれる母親がいるほ
うが、どれだけ幸せかわからない。
イセのこころはゆれた。
いくら望んでも、そうそう、2人が一緒になることのできない
事情があったからである。
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「オホーツク流氷館(旧)」
※一般社団法人網走市観光協会さまご提供