2016年08月26日

物語版「零(zero)に立つ」第10章 中川卓治という男(3)/通巻69話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


本日、公演1日前!

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イッセー尾形の舞台の演出家である、森田雄三さんが、
「零(zero)に立つ」の「宣伝」をしてくださいました→こちら

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日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数522)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
 オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
         メール・zeronitatsu@yumiko333.com
 シベールアリーナ 023-689-1166
 八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
 TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
 「零(zero)に立つ」公演サポーターズメンバー、他
    


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「零(zero)に立つ」第1巻
※イセさんの誕生〜北海道に渡るまでを、まとめて一気に読めます。

割引+特典は、昨日で終了しました。ありがとうございます!
28日から、あらたなお申し込みフォームを作成しますので、
いましばらくお待ちください。明日、語り劇「零(zero))に立つ」
をご観劇いただけるかたは、会場でご購入いただけますよ〜♪

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脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47 
48 49 50 第8章 51 52 53 54 55 56 57 58 59
第9章 60 61 62 63 64 65 66 第10章 67 68
※これまでのあらすじは、こちら


「島田待合」で、一緒にカツ丼2杯をたいらげて以来、卓治と
イセは、しばしば話をするようになった。

しかし、イセが柔道場に行ける日はかぎられているし、終われ
ばすぐに、娼妓として、遊廓にもどらなければならない。

2人が会える時間はかぎられていた。

ある日のこと。イセに指名がかかった。

誰かと見ると、そこに、にまあっと笑顔を見せて、卓治が立っ
ていた。

「いや、なかなかゆっくりと、話もできんもんだから」

そう言って、ぽりぽりと頭をかいたのである。

料理膳と酒が運ばれてきた。イセは卓治に酒をすすめた。
卓治は、それを受けながらも、真顔で言った。

「俺は酒好きだが、飲みすぎると、どうもいけねえ。今日は、
本当に、話がしたくてきたんだ」

「話って?」

「うわさには聴いとるけど、おまえさんみたいな娘(こ)が、
なして、こんなところに来たんか。よっぽど苦労したんだろ
うということはわかる。よかったら、話してもらえんか」

イセは、卓治のまっすぐな気持ちに打たれた。

幼少時からの、さまざまなできごと。愛子を産んだこと。その
ために遊廓に入ったこと…。

話しながら、何度も涙が流れた。とりわけ、愛子のことを話す
とき、会えずにいる月日を想って、涙があふれた。

卓治も、涙を浮かべながら、イセの話を聴いてくれた。

イセの話が終わると、今度は、イセが、卓治に話をしてくれ
と、たのんだ。

卓治もまた、子どものころ、火事でショックを受けたこと、
母親が離婚して家を出ていったかなしみなどを、語った。

イセは、いつも明るく見える卓治が、ふとしたおりに見せる
かげりの理由を知った気がした。

「金持ちのぼんぼんだと想っていたのに、卓治さんも、苦労
してきたんだねえ」

「おめえほどでねえ。おめえはまだ若いのに、よくここまで、
がんばって生きてきたなあ」

卓治は、そのおおきな手で、イセの頭をわしわしとなでた。

その夜。卓治とイセは、ぴったりと肌をあわせて眠った。

卓治は、まるで、宝ものをかかえこむように、イセを包み
こみ、イセはすっぽりと、そのなかにくるみこまれた。

遊廓ではたらくようになって以来、これほどまでやすらか
な気持ちで眠ったことは、かつてなかった。

それは、互いに、孤独をかかえてさまよっていた、ふたつ
の魂が、ひとつになった瞬間だったかもしれない…。


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「零(zero)に立つ」第1巻
※イセさんの誕生〜北海道に渡るまでを、まとめて一気に読めます。

割引+特典は、昨日で終了しました。ありがとうございます!
28日から、あらたなお申し込みフォームを作成しますので、
いましばらくお待ちください。明日、語り劇「零(zero))に立つ」
をご観劇いただけるかたは、会場でご購入いただけますよ〜♪

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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
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「網走刑務所」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 05:08| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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