語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
本日、公演10日前!
★イセさんの「あきらめない精神」を伝えたい!
★動画、予告編は、こちら!
日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数456)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
メール・zeronitatsu@yumiko333.com
シベールアリーナ 023-689-1166
八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
「零(zero)に立つ」公演サポーターズメンバー、他
★「零(zero)に立つ」第1巻お申し込み受付中!
※この連載の第1話から第44話までを、まとめて一気に読めます。
※今回かぎりの特典ゲットは、8月25日まで!
脚本担当・かめおかゆみこです。
山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。
第1章 1 2 3 4 第2章 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47
48 49 50 第8章 51 52 53 54 55 56 57 58 59
第9章 60 61
※これまでのあらすじは、こちら
そんなわけで、娼妓たちのイセにたいする信頼は、ますます
厚いものになった。
年齢では、たいがい、イセのほうが下になるわけだが、みん
な、「姐さん、姐さん」と、イセを慕って寄ってくる。
そんななかのひとりに、小梅がいた。
小梅は、おっとりした、気立てのいい娘だった。口数は多く
ないが、こまやかな気遣いができ、客の評判も悪くなかった。
だが、どこか少し線が細く、頼りなげなところがあり、それ
がイセの心配の種だった。
さらに借金も、イセと同じく千円もあり、「この娘(こ)に返せ
るのだろうか」と案じたものだ。
小梅自身、返せるものではないと、こころのどこかで、あき
らめていたのかもしれない。
そんな影がついてまわるような、娘だったのである。
「姐さん、あたしの話、聴いてくれる?」
あるとき、小梅が、そっとイセの部屋に入ってきて言った。
小梅が打ち明けてきたのは、ひとりの客への恋心であった。
それは、たしかに、小梅のもとにしばしば通う客ではあった。
だが、小梅が想うように、相手も小梅を想ってくれるかとい
うと、そうはいかない。
男が、仮に、甘い言葉をささやいたとしても、それは、娼妓
のこころをつかむための、弄言であることのほうが多い。
男のやさしさが、その場かぎりの、かりそめのものであると
わかっていても、ついほだされてしまう。
その結果、ほかの客をとることをいやがったりすれば、楼主
のきつい折檻が待っている。
そして、男のほうはといえば、娼妓の想いをいいことに、娼
妓に金をせびり、登楼の代金まで、娼妓に負わせるものさえ
いたのである。
そうすれば、娼妓の借金もかさむし、店の売り上げも落ちる。
娼妓にとっても、店にとっても、いいことはひとつもない。
だから、昔から遊廓では、お客との恋愛は御法度であった。
だが、かなしいかな、娼妓とて人間である。
いや、普通の人間である以上に、「苦界」と呼ばれる世間
の底辺におかれ、孤独をかかえて生きている。
そんななかで、情におぼれず、借金を返して抜け出すとい
うことは、相当に大変なことだったのである。
「小梅。気持ちをしっかりもつんだ。私らは、まず、借金
を返すことを考えなきゃいけないんだよ」
イセのことばに、小梅は、ちからなくうなずいた。
けれども、またしばらく経つと、ふたたび、イセの部屋に
やってきて、ほろほろと涙をこぼすのだ。
「姐さん、私、もうだめ。あのひと、このところ、ちっとも
きてくれなくなって…。それに…」
小梅は言いよどんだが、イセは、すでにうわさを聴いてい
た。小梅が恋した男が、町の女と結婚することになったの
だと。
イセは、ただ、小梅の肩を抱いてやるしかできなかった。
イセが網走にきて、2度目の冬を迎えていた。
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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
「博物館網走監獄」
※一般社団法人網走市観光協会さまご提供
遅ればせながらイセさんの物語りを読み始めました。するとすぐに引き込まれてあっという間に今回まで読んでしまいました。
イセさん、まだ18歳なのですね。。。現在ならば高校三年生の子どもと言ってもよい歳なのに、これほどまでの苦難を体験されていることに驚きました。
今後イセさんの人生がどんな風に進んでいくのかとても気になります。
こんな人がいたなんて、かめおかさん達がスポットを当ててくれなければずっと知らなかった事でしょう。
「語り劇」ぜひ全国で講演してくださいね、観に行きます。
本当に、年齢を考えると、あらためておどろきますよね。
でも、実はまだまだこれが、序の口なんです。
イセさんの人生とかかわってみると、
人間の可能性って、本当に無限なんだなあと
感じて、勇気が湧きます。