2016年08月10日

物語版「零(zero)に立つ」第8章「お職」になる!(7)/通巻57話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


本日、公演17日前!

イセさんの「あきらめない精神」を伝えたい!
動画、予告編は、こちら

日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数456)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
 オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
         メール・zeronitatsu@yumiko333.com
 シベールアリーナ 023-689-1166
 八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
 TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
 「零(zero)に立つ」公演サポーターズメンバー、他
    


脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47 
48 49 50 第8章 51 52 53 54 55 56 
※これまでのあらすじは、こちら


それでも、約束のときはやってくる。

8月26日、イセは、18歳になった。これまで、誕生日を、
これほど呪わしく想ったことはなかったろう。

イセの源氏名は、「市緑(いちろく)」とつけられた。

覚悟はしていたつもりだが、やはり、それは想像以上につら
い日々だった。

だが、いやだといって、客をこばむことはできない。そんなこ
とをしたら、大変な折檻を受けることを、イセは、この数か月
の間に見て知った。

それだけではない。遊廓のしくみは、徹底的に、娼妓たちに不
利にできていた。

借金のかたに買われてきたのに、日々の食事代から、着物代、
日常生活で使用するこまごましたものさえ、すべて、借金に加
算されるのである。

また、ことが終わると、娼妓たちがまずすることは、薬液を使っ
てみずからを洗浄することだった。

男たちから病気を移されるのを予防するためであるが、それでも
なお、病気になって苦しむ娼妓たちが絶えなかった。

その病気治療代さえ、娼妓の借金として加えられ、その額はとう
てい返せぬほどにふくらんでいく。

仮に病気をまぬがれたとしても、洗浄液があまりに強烈なため、
誰もがみな、子どもを産めないからだになってしまう。

一体、娼妓たちは、どれだけみずからの尊厳をおとしめられるこ
とだろう。

世間では、遊廓は「苦界」と呼ばれ、そこに落ちたものは、もう
人生は終わったかのような言われかたをする。

いや、娼妓たちを買う男たちのなかにさえ、彼女たちをさげすみ、
いやしいもののようにあつかうものがいるのである。

イセは、その屈辱に必死に耐えながら、考えた。

ここを抜け出すためには、借金を返さなくてはならない。
どうやったら、売り上げを上げることができるだろうか。
トップの座「お職」につくために、何ができるだろうか。

何より、イセが奮起したのは、「お職」になると、特権として、
いやなお客をことわることができる、つまり、客を選ぶことが
できると知ったからである。

幸か不幸か、自転車と柔道のおかげで、イセの名前と顔は、
遊廓にやってくる男たちに広く知られることとなった。

初見せ(遊廓に初めてつとめること)ということもあって、お客
もよくついた。

そんななかで、イセは、お客の好みをいちはやく読み取った。

たとえば、旅が好きな客なら旅の話、釣りが好きな客なら釣り
の話…と、話題をあわせることができると、よろこばれ、次も
指名してもらいやすくなるのだ。

あるとき、将棋の話が出たはずみに、イセは「わたすにも教え
てくれませんか」とたのんでみた。

「ほう、興味があるのか」

お客の目が、おもしろそうにかがやいた。

イセは覚えが早かったから、教えてもらうと、水がしみこむよ
うに覚え、それもまた、お客をよろこばせることとなった。


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
0810091.jpg
「除雪風景 網走市内」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 05:20| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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