2016年08月09日

物語版「零(zero)に立つ」第8章「お職」になる!(6)/通巻56話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


本日、公演18日前!

イセさんの「あきらめない精神」を伝えたい!
動画、予告編は、こちら

日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数456)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
 オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
         メール・zeronitatsu@yumiko333.com
 シベールアリーナ 023-689-1166
 八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
 TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
 「零(zero)に立つ」公演サポーターズメンバー、他
    


脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47 
48 49 50 第8章 51 52 53 54 55
※これまでのあらすじは、こちら


毎日30分、自転車で走り回っているうちに、イセは、だん
だん、網走という町が好きになってきた。

まず、何よりも自然がゆたかである。それも、生まれ育った
天童とはちがって、あまりにもスケールがおおきい。

網走湖の湖畔も、オホーツク海の沿岸も、その日の天気によ
って、微妙にその姿を変える。

小高い丘にのぼれば、あたりを一望でき、その景色は絶品だ。

とくに、晴れた日に、オホーツク海の向こうに見える、知床
連峰のみごとさは、ことばには尽くしがたい。

また、碁盤の目のようにそろった、まっすぐな、ひらけた道路
も好きだった。カーブを気にせず、思い切り走ることができる。

(これは、北海道という土地が、ひとが住んで道ができたので
はなく、道がつくられて町ができたことに由来している)

海岸どおりには、両脇には、美しい花々が咲き乱れる。センダ
イハギ、エゾリンドウ、スズラン、ヒオウギアヤメ、ハマナス、
エゾキスゲ、エゾスカシユリ、ミズバショウ…。

当時のイセには、その名を知る由もないが。のちにこの一帯
は「原生花園」と呼ばれ、親しまれるようになる。

また、網走港の手前から、左に折れて、能取岬に向かう道。こ
ちらもみごとな景観を見せていた。

しかし、あまりにも森が深く、30分という時間の制限のなか
では、岬まで行くことは断念せざるを得なかった。

数年後には、その能取岬の牧場で、生活することになるとは、
思いも寄らないイセであった。

そんなふうに、網走の町を探検してまわっていたイセだったが、
ある日、帰り道、いつもとちがう道を通ったとき、ふと声に気
づいて自転車を止めた。

「えいっ」
「やあっ」
「おうっ」

声にひかれて行くと、そこには、一軒の柔道場があった。声は
なかで稽古している男たちのものだった。

イセのこころに、熱いものがたぎった。

子どものころ、男の子たちと、取っ組み合いのけんかをしたこ
とが思い出されたのだ。

あの、わくわくする感じ。

イセは、思わず、自転車をおいて、門をくぐっていた。

「わたすにも習わせてください。お願いします」

たまたま、応対に出た男が、めんくらったように訊き返した。

「習いたいって…、あんた、女だろ?」

「はい。でも、子どものころから、柔道はやってみたかった
んです。並の男には負けません」

イセは、胸をはって堂々と言った。

男は、あきれて、イセを追い払おうとしたが、やりとりを聴き
つけて、この道場の主である、後藤万次郎先生があらわれた。

イセの話を聴くと、万次郎先生はおもしろそうに、応対して
いた男に言った。

「どうだ。ためしに、相手をしてみんか」

「冗談じゃない。けがさせても知りませんよ」

男は、つまらない役回りを引き受けさせられた、といいたげ
な表情をしたが、師匠のことばにはしたがわざるを得ない。

ところが、イセと組んだ次の瞬間、男は、あっけないほど軽
く、宙を飛んでいた。

どすん。

派手な音が、道場中にひびきわたった。

同時に、興味半分で見ていてまわりのものたちから、一斉に
「おおっ」という声があがった。

こうして、イセは、柔道場に通うようになり、ますます、まわり
の評判を高めていくことになるのである。


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
0809090.jpg
「麦稈ロール 網走市能取付近」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 06:06| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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