2016年08月08日

物語版「零(zero)に立つ」第8章「お職」になる!(5)/通巻55話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


本日、公演19日前!

イセさんの「あきらめない精神」を伝えたい!
動画、予告編は、こちら

日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数456)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
 オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
         メール・zeronitatsu@yumiko333.com
 シベールアリーナ 023-689-1166
 八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
 TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
 「零(zero)に立つ」公演サポーターズメンバー、他
    


脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47 
48 49 50 第8章 51 52 53 54
※これまでのあらすじは、こちら


イセは、子どものころ、父親の言いつけで、自転車に乗って、
桑集めをさせられた時期がある。

また、織物工場ではたらいていたとき、出入りの業者の自転
車を借りて、乗り回したこともある。(それが初恋の相手、
茂雄との出会いのきっかけにもなった)

イセは自転車が好きだった。さっそうと、風を切って走るの
が好きだった。

東京などでは一般に普及しつつあった自転車も、この当時、
網走ではまだ、一部の金持ち層や、仕事で使うものにかぎら
れ、まして女性が乗るなど、前代未聞だった。

(町んなかで、自転車を乗り回していたら、きっと人目にも
つくんじゃないか)

それが、イセのねらいだった。

それに、遊廓の外でやることなら、女将にも、ほかの娼妓
たちにも、とやかく言われずにすむ。

思い立ったら、即実行。イセはさっそく、自転車屋に行っ
て交渉をした。

自転車を貸してもらって走り回ることで、自転車の宣伝に
もなるから一石二鳥だ、という言い分である。

自転車屋はめんくらった。いきなり、「自転車を貸せ」と
言われても、すぐに「はい」と貸せるものではない。

しかも、遊廓づとめとあっては、変な評判が立ってはたま
らない。自転車屋の返事は、あっさり、「NO」であった。

が、ことわられたからといって、すごすご引き下がるイセ
ではない。

いまでは毎日のように顔を出し、なじみになっている「島
田待合」に行き、島田夫婦にいきさつを話した。

「若いのに、よくそんなことまで考えつくねえ。あんた、
なんとかしてあげられないかね」

「そうだな。よし、同じ商店街仲間だ。おれから口をき
いてみよう」

島田夫婦も、そして、娘のとし子も、すっかりイセのこ
とが気に入っていた。

そして、島田夫婦のはたらきかけのおかげで、イセは、
1日に30分だけであるが、無事に自転車を借りること
ができるようになったのだ。

(さあ、いくぞ!)

イセは、自転車に飛び乗ると、思い切りペダルをこいだ。

初夏の網走の風は、まだ冷たさを含んでいる。けれど、
気持ちがきりりとひきしまるようで、イセには心地よく
感じられた。

その風のなかを、いきおいよく駆け抜けるように、イセは
自転車で走り回った。

反響は想像以上だった。

「誰だ、あの、軽業師みたいな女は」

「いやあ、あのすばしっこさときたら、びっくりしたなあ」

「なんでも、遊廓につとめている女だって!」

そして、実際に、宴席でお酌をしていると、「あんたが、
自転車に乗ってる娘(こ)かい」などと、声をかけられるよ
うにもなった。

ついでに、自転車屋のほうも、物珍しさで、自転車を見
に来る客がふえ、ほくほくであった。

「おじさんおばさんのおかげです。ありがとうございます」

毎日、自転車を返すと、イセは、必ず島田待合に寄って、
お礼を言った。

「なんもなんも。わしらは、イセちゃんを応援してるんだ。
さあ、走り回って、おなかがすいたろう。にぎりめしでも
食べていきなさい」

「いつもすみません」

相変わらず、食欲旺盛のイセである。網走にきて、この
島田夫婦に気に入られたことは、その意味でも幸運であ
ったろう。

そして、おかみさんに出してもらったお茶を飲みながら、
イセは、次なる作戦を考えているのだった。


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
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「巨大ヤチダモの木 網走市能取」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:41| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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