2016年08月04日

物語版「零(zero)に立つ」第8章「お職」になる!(3)/通巻53話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


本日、公演23日前!

イセさんの「あきらめない精神」を伝えたい!
動画、予告編は、こちら

日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数522)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
 オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
         メール・zeronitatsu@yumiko333.com
 シベールアリーナ 023-689-1166
 八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
 TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
 「零(zero)に立つ」公演サポーターズメンバー、他
    


脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47 
48 49 50 第8章 51 52
※これまでのあらすじは、こちら


1889年(明治22年)、内務大臣から、訓令で、これより娼妓
渡世は16歳未満の者には許可しないと布告された。(略)1900
年(明治33年)5月、内務大臣訓令により、18歳未満の者には
娼妓稼業を許可しないと改正された。
(ウィキペディアより)

とあるように、大正8年当時、18歳未満のものは、「娼妓」
として仕事をすることはできなかった。

イセもまた、8月26日までは、「娼妓」としてはたらくこと
はできない。

当時、網走は人口がふえていたとはいえ、遊廓が遊廓だけ
の売り上げで成り立つわけではなく、昼間の宴会などとあわ
せて、採算をとっていたようだ。

だから、イセの仕事も、日常の掃除や洗濯をはじめ、宴会で
のお膳運びやお酌などからはじまった。

そして、この、いわば「執行猶予」期間は、イセにとって重要
な時間になった。

それは、 店にやってくるお客や、先輩娼妓たちの対応を、観
察することができたことだ。

客の好み、興味のある話題は何か。お酌をするタイミングは、
どんなときなのか…などなど。

そんななかで、イセは気がついていった。

ただ、お膳を運んでいるだけでは、客には顔をおぼえてもら
えない。おぼえてもらえなければ、指名もしてもらえない。

何をすれば、注目してもらえるだろう…。

黙々と仕事をしながら、イセは考えた。

そんなある日のこと。いつものように、お酌をしていたイセに、
酔客のひとりが、声をかけた。

「ほう、見かけない顔だな。新入りか。まだ若いな。最近の
歌を、何か歌えるか?」

言われて、イセは思い切りうなずいた。そういえば、北海道
にきて以来、歌を歌うことさえ忘れていた。

イセは歌いだした。当時、大流行した「さすらいの唄」。

♪行こかもどろか オーロラの下を
 ロシヤは北国 果てしらず…

もともとイセは歌がうまい。イセの声が朗々とひびいた瞬間、
まわりの酔客たちから、おおっと声があがった。

「ちっこいの、うまいなあ。もっと歌え!」

そんな声があがる。ちっこいのはよけいだと思ったが、歌っ
てよろこばれることは、実にうれしい。

イセはつづけて、「カチューシャの唄」「ゴンドラの唄」を
歌った。胸のなかに、かつてあこがれた、松井須磨子の姿が
よみがえった。

3曲歌い終わったときには、宴席全体から、さらにおおきな
拍手が沸き起こった。

「いやあ、よかったよ。これ、とっておきなさい」

最初にイセに「歌えるか」と聴いた客が、にこにこして、イセ
の手に、2円をにぎらせた。

千円という途方もない借金の前に、想いあぐねていたイセの
こころに、ひとすじの光がさすように感じた。

(そうか。客をよろこばせることをすればいいんだ。そうす
れば、こうしてお金をためることができる!)

うきうきして、台所に、お膳を下げていったときだ。女将が、
待ちかまえていたように、どなった。

「イセッ、さっきもらった金を出しな!」


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
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「ビューポイントパーキング「流氷街道鱒浦」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 06:01| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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