2016年08月05日

物語版「零(zero)に立つ」第8章「お職」になる!(4)/通巻54話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


本日、公演22日前!

イセさんの「あきらめない精神」を伝えたい!
動画、予告編は、こちら

日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数522)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
 オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
         メール・zeronitatsu@yumiko333.com
 シベールアリーナ 023-689-1166
 八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
 TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
 「零(zero)に立つ」公演サポーターズメンバー、他
    


脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47 
48 49 50 第8章 51 52 53
※これまでのあらすじは、こちら


「なしてですか? あれは、わたすが歌を歌って、それでもらっ
たものです!」

それを聴いたとたん、女将は、みけんのしわを立てて、どなった。

「ばかこくでねえ。この店ではたらくものが稼いだ金は、すべ
てこの店のもんだ。さあ、出せ!」

イセは、耳たぶまでかっと熱くなるのを感じた。我が身がおか
れた立場を、あらためて思い知らされる瞬間だった。

イセは、くちびるをかみしめ、さっきもらった2円をさしだした。

女将は、それを受け取ると、吐き出すように言った。

「文句があるなら、借金返してから言いな!」

言うなり、きびすを返して、台所を出ていった。

たかぶった気持ちをおさえることができず、立ち尽くすイセに、
まかないのトヨばあさんが、そっと声をかけた。

「いまはがまんおし。新入りなら一度はやられることだ。負け
ないで、がんばるんだよ。一日も早く、借金を返して、ここを
出るんだ」

長く、この店に出入りする娼妓を見てきたという、トヨばあさ
んのことばに、イセは、素直にうなずいた。

そして、「絶対にお職になってやる!」という想いを、あらた
にするのだった。

イセが、娼妓になる誕生日までは、あと数か月ある。

イセは考えた。そのあいだにできることはないだろうか。

お客に注目してもらうためには、目立つことをしなければだめ
だ。しかし、ほかの娼妓を出し抜くようなかたちでは、うまくは
いかない。もっと何か別の方法があるはず…。

当時は、娼妓になると、逃亡防止の意図もあって、娼妓たちは
外出を制限されていた。しかし、娼妓になる前のイセに、その
しばりはない。

そのため、娼妓たちは、イセに、小腹がすいたときの食料の買
い出しをたのむことが多かった。

遊廓では、表向きのはなやかさとはうらはらに、その生活はか
なりきびしいものがあった。

食事もひどく粗末なもので、その日のお客がとれないと、食事
があたえられないこともあった。

そのため、娼妓たちは、自分のこづかいから、小腹にたまるよ
うな食料を、買い求めることも少なくなかった。

そして、そのために、自分の借金をふやしてしまうのである。

一方、娼妓たちのために買い出しに出たイセは、そのおかげ
で、町のなかをあちこち見て歩くことができた。

そんななかで見つけたのが、店のある通り沿い、向かいの角に
ある、自転車屋であった。

(これだ!)

イセのなかに、ひらめくものがあった。


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
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「JR季節特急オホーツクの風」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 05:15| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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