語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
本日、公演24日前!
★イセさんの「あきらめない精神」を伝えたい!
★動画、予告編は、こちら!
日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数522)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
メール・zeronitatsu@yumiko333.com
シベールアリーナ 023-689-1166
八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
「零(zero)に立つ」公演サポーターズメンバー、他
脚本担当・かめおかゆみこです。
山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。
第1章 1 2 3 4 第2章 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47
48 49 50 第8章 51
※これまでのあらすじは、こちら
「おお、花絵、この娘(こ)がそうだ。しっかり、一人前に
しつけてくれや」
楼主が、ほおの肉をふるっとたるませて、花絵を見た。
「わかりました。もう、お話はすんだんですか? 私の部屋に
連れていっていいかしら?」
きれいにひかれた口紅や、粉おしろいに白く染められたうなじ
が、花絵と呼ばれた娼妓の、なまめかしさをかもしだしていた。
イセは、ぽかんとして、ことばなく見とれた。
あの、帝国劇場の風呂で背中を流した、女優たちとのそれとも
まったくちがった、美しさだった。
「さっ、私の部屋に行きましょう」
花絵はそう言って、イセの手をとって、いまおりてきた階段に向
かった。
「余計な入れ知恵はするんじゃないよ」
背中に、女将の声が飛んだ。
花絵の部屋は、きれいな調度品に囲まれ、ひとりで住むにはゆっ
たりすぎるくらいの広さがあった。
花絵は、イセのそんな気持ちを読み取ったのか、すまなそうに
言った。
「ごめんね。この部屋を使えるのは、『お職』だけなの」
「おしょく?」
「その店で一番の売れっ子のこと。いまは、私がそう。あとで
案内するけど、あんたは、ほかの娘(こ)と一緒の大部屋よ。
そのかわり、私はみんなの面倒も見る立場だから、困ったこと
はなんでも言ってね」
花絵は、この遊廓でのしきたりや、注意すべきことなどを、事
細かに教えてくれた。
外見のはなやかさからは想像のつかない、庶民的で面倒みのい
い雰囲気が伝わってきた。
訊けば、年は20歳だという。家の借金のかたに、この遊廓に
入ったのだという。
単に売れっ子なのではない。それだけの苦労をしているのだ。
花絵もまた、イセの身の上話を聴くと、もらい泣きをして、
「私も苦労してきたと思ったけど、あんたはそんなに若いの
に、もっと苦労をしてるんだね」
と言って、熱いお茶と、客にもらったというお菓子をふるま
ってくれた。
(こんな、底辺のような仕事にも、上下関係はあるんだな…。
よし! 自分は絶対にお職になる! お職になって、たくさん
稼いで、一刻も早く借金を返して、ここから抜け出してやる!)
イセは、ひそかにこころに誓った。
もう、しおれた気持ちは、すっかりどこかに吹き飛んでいた。
この立ち直りの早さこそ、イセを、泥沼のような生活にあって
生き延びさせるちからなのだった。
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「鱒浦海岸の朝日」
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