2016年08月01日

物語版「零(zero)に立つ」第7章 網走まで(6)/通巻50話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


本日、公演26日前!

イセさんの「あきらめない精神」を伝えたい!
動画、予告編は、こちら

日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数522)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
 オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
         メール・zeronitatsu@yumiko333.com
 シベールアリーナ 023-689-1166
 八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
 TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
 「零(zero)に立つ」公演サポーターズメンバー、他
    


脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47 
48 49
※これまでのあらすじは、こちら


あたたかいごはんが、おなかのなかを満たしていく。

イセは、久しぶりに、食事らしい食事をしたと感じた。

食堂のおかみさんが、お茶をつぎたしてくれる。その着物のすそ
を、ちいさな女の子が、にぎっているのに気がついた。

山形においてきた、愛子のことが思い出された。思わず、手が伸
びて、その子の頭をそっとなぜた。

「ありがとうございます。とし子っていって、3歳になったばか
りですわ。ほれ、お姉ちゃんにあいさつしな」

とし子は、はにかんだような笑いを見せて、ぺこりと頭を下げた。

がまんできず、イセの目から、ひと粒、大粒の涙がこぼれた。涙
は、食べかけのどんぶり飯のうえに、ぽたっと落ちた。

それだけで、おかみさんは何かを察したようだ。

「何やら苦労をしているんだねえ。まあ、ここにくる娘さんたち
は、みんなそうだがね」

おかみさんは言って、ちらりと番頭を見た。番頭もうなずく。

「がんばってはたらいて、借金返して、できるだけ早くに田舎に
もどれるようにするこった」

おかみさんが、ことばを添えた。

「何かあったら、いつでも話を聴くよ。だから、遠慮しないでこ
こにおいで」

イセがつとめることになる、「金松楼」は、駅から、つまりはこ
の「島田待合」から、さほど離れていないところにあった。

「ありがとうございます」

イセも、素直に頭を下げた。

北の果ての町で、こんなあたたかな人情にふれることができると
は、思ってもみなかったからだ。

この島田夫妻が、のちのち、イセの人生に、深くかかわるひとに
なろうとは、このときのイセは、知る由もない。

「さあ、そろそろ行こうか」

番頭のうながしに、イセは立ち上がると、おかみさんと、主人に、
もう一度、深々と頭を下げた。


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
0801078.jpg
「網走川河岸の霧氷」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 06:34| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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