語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
本日、公演29日前!
★イセさんの「あきらめない精神」を伝えたい!
★動画、予告編は、こちら!
日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数522)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
メール・zeronitatsu@yumiko333.com
シベールアリーナ 023-689-1166
八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
「零(zero)に立つ」公演サポーターズメンバー、他
脚本担当・かめおかゆみこです。
山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。
第1章 1 2 3 4 第2章 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47
48
※これまでのあらすじは、こちら
「あばしりー、あばしりー」
汽笛を鳴らして、息を吐くように、汽車がゆっくりと止まると、
ホームで待っていた車掌が、語尾を長く伸ばして、駅名を告げる。
当時の網走駅は、いまよりももっと、網走川の河口の近くにあった。
汽車から降り立つと、海からの風が吹きつけてきて、イセは思わ
ず、上着のえりをあわせた。
「あの向こうが、もう、オホーツク海だ。今年はもう、氷は行っ
ちまったから、ないけどな」
「氷?」
「流氷だよ。たいていは、年末か年のはじめには、海の向こうか
ら姿を見せる。水平線が真っ白けになってな。それがずんずん
押し寄せてきて、あの海ぜーんぶが、真っ白になっちまうんだ」
「海が凍ってしまうの?」
「全部は凍らないさ。でっかい氷と氷がぎゅっとくっついてな、
まあ、ふたをしたみたいになるだけだ。風が吹くと、ギシーッ、
ギシーッと鳴るんだよ」
あの広い海が、真っ白になる?
さっき、網走湖の結氷におどろかされたばかりだが、さらにスケ
ールがおおきい。とても想像もつかない光景だった。
(遠くにきたんだ。本当に北の果てまできたんだ…)
自然にそんな想いがわいてきた。
「さっ、突っ立ってないで、行くぞ。海はすぐ近くだから、いつで
も行ける」
改札を出ると、駅前に、待合食堂があった。とたんに、イセのお
なかが、ぐるる…と鳴った。
番頭は、もう、自分の役目はほとんど終わりという気楽さからか、
その音を聴いて、ゆかいそうに笑った。
「腹 、すいたのか。よし、じゃあ、そこで飯でも食っていくか」
「島田待合」と書かれたのれんをくぐって、なかに入る。
「いらっしゃい!」
体格のいい、ひとのよさそうな男が、厨房からおおきな声を出し
た。この店の主人であろう。
「いらっしゃいませ」
つづいて、その横にいた、おかみさんとおぼしき女が、頭を下げた。
「熱い茶をくれ」
番頭は言って、ストーブのそばの席に、どかっとすわった。イセ
も、そのあとにつづいて、すわる。
「なんか、あったまるもんはないかね」
「にしんそばなんかどうです?」
「ああ、いいな。それ、ふたつ」
にしんそばとは、かけそばにニシンの甘露煮をのせたものである。
江戸時代から、北海道はにしん漁がさかんだった。
冷凍・冷蔵技術が未発達だった当時、乾燥させたにしんは、「身
欠きにしん」と呼ばれて重宝された。
「うんまいぞ」
やがて、さしだされた丼に、また、イセのおなかが、ぎゅるる…と
鳴った。
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「秋のオホーツク海」
※一般社団法人網走市観光協会さまご提供