語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
本日、公演32日前!
★動画、予告編は、こちら!
日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数522)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
メール・zeronitatsu@yumiko333.com
シベールアリーナ 023-689-1166
八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
「零(zero)に立つ」公演サポーターズメンバー、他
脚本担当・かめおかゆみこです。
山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。
第1章 1 2 3 4 第2章 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45
※これまでのあらすじは、こちら
いまでも、年配の北海道のひとたちは、本州(四国・九州をふ
くむ)のことを「内地」と呼ぶ。
かつて、貧しい農民、それも家督を継げない次男坊以下のもの
たちが、生きるために、北海道をめざした。
あるいは、開拓景気で、ひとやま当てようとしたものもいただ
ろう。
うまい仕事があると連れてこられ、鉄道敷設などの肉体労働に、
従事させられたひとたちもいただろう。
その誰もが、津軽海峡をわたってくる。
また、温暖化のいまは変わってしまったかもしれないが、かつ
ては、青森までが「温帯」、函館からは「亜寒帯」という区分
がされていた。
豪雪地帯は東北にもあるが、零下30度まで下がる地域は、日
本のどこをさがしても、北海道以外にはない。
その本州と北海道のあいだに横たわるのが、津軽海峡だ。
直線距離では70キロそこそこ、4時間あまりの船旅ではある
が、意外に波は荒く、たびたび海難事故が起きたことでも知ら
れている。
だから、ひとびとは無意識のうちに、そこにひとつの区切り、
境目を感じたのであろう。
ともあれ、イセたちを乗せた連絡船は、無事に函館に着いた。
もう、本州の島影は見えない。その岸壁に立って、ひとびとの
胸には、さまざまな想いが去就する。
だが、実は、イセは、そんな感傷にふけっているよゆうはなか
った。
船に乗っているときから、じわじわではあったが痛みだしたお
なかが、函館におりて、ますますひどくなってきたからだ。
ほかのものは平気なところを見ると、悪いものを食べたという
わけでもない。
しかし、休憩をとることはゆるされなかった。すぐに汽車に乗
らなければ、その次の汽車までは、また間が空いてしまう。
函館から札幌方面に行くには、現在、函館本線と室蘭本線
のルートがあるが、当時は、室蘭本線はまだ開通していない。
日本海側のルートをとおって、また、汽車は進む。函館から小
樽、札幌、目的地の旭川に着くまでに、21時間の旅である。
その硬い汽車の座席に、イセは、身をよじるようにしてすわっ
ていた。ひたいには脂汗がにじんでいる。
「どうした? 腹でも痛いのか?」
イセたちを連れてきた男が、異変に気づいて、声をかけてきた。
イセは、声も立てられず、ちいさくうなずいた。
実際、痛みは、おなかのなかをえぐるようにはげしく、耐えが
たいものになっていたのである。
汽車のなかはぎっしりの乗客で、横になる場所もない。
同行の娘のひとりが、気づかって、窓ぎわの席をゆずってくれた
が、礼を言うゆとりさえなかった。
「旭川ー、旭川ー」
ようやく、旭川に着いたと思った瞬間、イセの意識は、すうっと
うすれていった。あまりの痛みに、気を失ったのである。
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