2016年07月21日

物語版「零(zero)に立つ」第6章 運命の歯車(6)/通巻43話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


本日、公演37日前!

動画、予告編は、こちら

日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数522)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
 オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
         メール・zeronitatsu@yumiko333.com
 シベールアリーナ 023-689-1166
 八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
 TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
 「零(zero)に立つ」公演サポーターズメンバー、他
    


脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41 42 
※これまでのあらすじは、こちら


イセは考えた。

遊廓に行くということ。それは、これまで受けてきたさまざま
な屈辱を超えた、さらなる屈辱を身に強いることだろう。

わが子を里子に出すことも、身を切られるようにつらい。

けれども、イセはぐずぐずと迷いつづけてはいなかった。
これは、イセの子どものころからの性質だった。

決めたら、あとは動くだけ。動きながら、考え、また動く。
それがイセのやりかたなのだ。

「落ちるところまで落ちたら、あとは這い上がればいい」

きっぱりと自分に言い聴かせると、イセはさっそく行動に出た。

まず、八重松をつかまえると、愛子の父親として、正式に認知
をするよう、せまった。

にくい男ではあるけれども、愛子を、父(てて)なし子にはさせ
たくなかったのだ。

八重松は、最初、認知をしぶった。

「まあ、急ぐな。おまえが北海道から帰ってくるまでには、おれ
のほうで何とかするから」

すると、イセはきっ、と八重松をにらむと、こう言い放った。

「わたすは、東京の新聞社で、はたらいていたことがあるんだ。
いますぐ認知をしないんなら、そんときの知り合いにたのんで、
あんたのしたことを、記事にしてもらう!」

これには、八重松もおそれをなして、愛子の認知を承諾した。

冷静に考えれば、一週間でけんかして飛び出した出版社に、
地方の芸人のいざこざ話を持ち込んでも、記事になどなるは
ずがない。

が、ふだん、新聞など縁のない生活をしている八重松にとって
は、「東京の新聞社」ということばだけで、充分に効き目があ
ったのだろう。

イセは、ときに、こんなふうに、いささかはったりをかますよう
な、大胆な切り出しかたをすることがある。

そんなとき、ヤクザものの、安蔵の血をほうふつとさせるのだ
が、父親とちがうのは、イセは、自分の私利私欲のためには、
けっして、こうした方法を使わなかったことだ。

里親は、寒河江町(現寒河江市)の五十嵐家と決まった。

まだ子どものいない、気立てのいい夫婦で、安心して託すこ
とができそうで、イセはほっとした。

旭川の遊廓で、年季奉公をするかたちで、3年で500円の
お金を前借りした。イセは、それをそっくり、愛子の養育費
にあてることにした。

こうして、一つひとつの問題は、解決されていったが、もうひ
とつ、おおきな問題があった。

それは、契約にあたっては、親の承諾書と印鑑が必要だとい
うことだ。

イセが、子どもを産んだという話は、人づてで、すでに安蔵
の耳に入っていた。案の定、安蔵はかんかんに怒ったらしい。

いまさらおめおめと顔を出して、どんな罵倒のことばを投げ
つけられるか、そう想うだけで、イセは憂鬱であった。

それでも行かねば、ことは進まない。

イセは、重い腰をあげて、実家の門をくぐった。


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
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「冬の樹木」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 03:29| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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