2016年07月20日

物語版「零(zero)に立つ」第6章 運命の歯車(5)/通巻42話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


本日、公演38日前!

動画、予告編は、こちら

日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数522)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
 オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
         メール・zeronitatsu@yumiko333.com
 シベールアリーナ 023-689-1166
 八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
 TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
 「零(zero)に立つ」公演サポーターズメンバー、他
    


脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41
※これまでのあらすじは、こちら


八重松は、愛子が産まれて一か月ほどは、イセの住む家に顔を
見せたが、そのうち、めっきり姿をあらわさなくなった。

それと同時に、生活に必要なお金も入らなくなってきた。

イセは意地でも、愛子を自分の手で育てようとしたが、それは
想像以上にむずかしいことだった。

そもそも、乳飲み子をかかえて、満足な仕事につけるわけがない。

やっと仕事を見つけても、2人で暮らすにはとうてい足りない。

生まれて初めての体験に、さすがのイセもあせりと心細さをか
くせなかった。

そんなイセを見て、あるとき、お世話をしてくれているおばさ
んが、こんな話をもちかけてきた。

「いま、北海道は、たいそう景気がいいそうだよ。いっそのこ
と、子どもを里子にあずけて、はたらいてきたらどうだね」

「里子? とんでもない! それだけはいやです!」

イセは、とっさに言い返した。

里子に出されたおかげで、自分がどれほど差別され、屈辱
に耐えなければならなかったか。

わが子に同じ想いはさせたくない。

「ほんの2、3年の辛抱だよ。あのとおり、八重松さんはあて
にならないし。身元のたしかなところにあずけて、かわいがっ
て育ててもらうほうが、子どもにとってどんだけ幸せか」

おばさんのことばに、イセは、なおも言い返そうとしたことば
を飲み込んだ。

たしかに、おばさんの言うことにも一理ある。

それに、知り合いに会うかもしれない山形で、肩身の狭い想い
をしてはたらくより、誰も知らない、自然豊かな北海道ではた
らくほうが、どれだけ気が楽か。

イセのこころがぐらついたのをのがさず、おばさんは、北海道
から求人にきたという男を連れてきた。

「あんたは若くて丈夫そうだから、三年で五百円くらいすぐ稼
げるよ」

男は、イセをじろじろ見ながら、そう言った。

三年で五百円。身動きままならないイセにとっては、夢のよう
な大金だ。

「それで、仕事はどんな…」

イセに問われて、男はちょっと言いよどんだが、たいしたこと
はない、というような口調でさらりと言った。

「旭川の遊廓なんだがな。いや、いい着物着て、みんなにちや
ほやされて、かわいがられて、あっというまに金がたまるんだ
から、いい商売さね」

イセは、一瞬、息が止まるかと想った。遊廓…。いま、男は、
たしかに、遊廓と言ったのか?

それが何を意味するか。子どものころから、安蔵や子分たち、
あるいは旅芸人たちのうわさ話で、イセにはわかっていた。

まさか、そんなところに、自分が?


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
0720063.jpg
「冬の樹木」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 05:33| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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