2016年07月19日

物語版「零(zero)に立つ」第6章 運命の歯車(4)/通巻41話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


本日、公演39日前!

動画、予告編は、こちら

日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数522)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
 オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
         メール・zeronitatsu@yumiko333.com
 シベールアリーナ 023-689-1166
 八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
 TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
 「零(zero)に立つ」公演サポーターズメンバー、他
    


脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 
※これまでのあらすじは、こちら


異変に気づいたのは、年が明けてからだった。

ふだんは風邪ひとつ引かない、頑丈なイセだが、どうしたこ
とか、何日も熱っぽく、けだるい感じがつづいている。

悪いものを食べたわけでもないのに、胃がむかつく。そして、
あろうことか、月のものがやってこないのだ。

(まさか…)

その予感は、的中していた。

イセは、ぐっとくちびるを噛みしめた。

たとえ、自分を汚した、にくい男の子どもであろうと、ともさ
れたいのちの灯を、消すという選択を、イセはできなかった。

イセは決心して、八重松に会い、子どもを産むことを宣言した。

「あんとき、悪いようにはしないって言ったな! 責任をとれ!」

イセに詰め寄られ、八重松はあわてて、山形市内に、イセが子
どもを産み育てるための家を借りた。

そして、八重松の知り合いだというおばさんが、お産にそなえ
て、面倒を見てくれることになった。

それにしても、16歳で、妻子ある男の子どもを産むというこ
とは、どれだけ心細く、孤独であることだろう。

生母はとうに亡く、継母のモヨはもちろん、実父の安蔵だって、
味方にはなってくれまい。にべもなく「堕ろせ」と言うに決まって
いる。

里親のコウの顔が一瞬、頭に浮かんだが、いまさら、コウに迷
惑をかけることなど、できるわけもない。

おなかのなかで、育ってくる子どものてごたえを感じながら、
イセはずっと考えていた。

八重松は既婚者で、すでに子どももいる。この子を産んでも、
このままでは、自分は日陰の身。けっして、この子を幸せに
してやることはできないだろう。

だったら、いっそのこと、この子を殺して、自分も死ぬ…。

そう、こころに決めていた。

月日は流れ、その年の9月、17歳になったばかりのイセは、
女の赤ん坊を産み落とした。

お産を手伝ってくれたおばさんが、片づけをするために、席
をはずした。

そのすきに、イセは、そっと、赤ん坊の鼻と口に手をあてた。

(ごめんよ。せっかく生まれてきたのにな。すぐにいくから、
待ってろな…)

そのまま、その手に、ぐっと、ちからを入れる。

息が苦しくなった赤ん坊が、手足をばたばたさせて、もがく。

イセは、はっとした。

この世に生を受けてから、まだほんの少ししか経っていないのに、
この子は、生きようと必死になって、手足を動かしている。

生きたいのだ、この子は!

イセは、たまらず、赤ん坊にあてていた手をはなした。とたんに、
赤ん坊が、おおきな声で泣きだした。

(生きよう、自分も…)

こみあげてきた熱いものを、イセは、ぐっとかみしめた。

「愛子」

誰からも愛されるように…。幸せになるように…。

子どもの名前を、イセは、そう名づけた。


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
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「冬の樹木」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 10:55| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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