2016年07月15日

物語版「零(zero)に立つ」第6章 運命の歯車(3)/通巻40話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


本日、公演43日前!

日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数522)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
 オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
         メール・zeronitatsu@yumiko333.com
 シベールアリーナ 023-689-1166
 八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
 TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
 「零(zero)に立つ」実行サポーターズメンバー、他
    


脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 
※これまでのあらすじは、こちら


八重松と、差し向かいで食事をしながら、これまでのいきさつ
をあらためて話しながら、イセは、なんとはなしに、こころが
ざわつくのを感じていた。

八重松の視線が気になるのである。

イセの話にあいづちを打って聴いてくれるものの、ふとした拍
子に、視線に、ぎらりとしたものが走る感じがする。

このいやな感じは…。イセには覚えがあった。

東京に家出する前、ある夜、安蔵とモヨが、何かの会合に出か
けて留守をした。

少し前に、モヨの連れ子である孝一が、つとめ先をやめて、家
にもどってきてぶらぶらしていた。

2人で夕食を食べたが、孝一が、ちらちら、イセを値踏みする
ような目つきで、盗み見している。

イセは知らんぷりをして、食事を終えて洗いものをすませると、
さっさと自分の部屋に引っ込んだ。そして、昼間の仕事のつか
れもあって、ふとんを敷くとすぐに寝入ってしまった。

どのくらい経ったろう。異変を感じて目を覚ました。ふとんが
ずっしり重い。誰かが上に乗っている。孝一だ!

「何すんだ!」

「いいべ。おふくろが、おまえを俺の嫁にしてもいいって言っ
てたぞ」

つい先日、安蔵たちがもちこんだ縁談話を、きっぱりはねつ
けたばかりだった。まさか、すぐあとに、そんな話をしていた
とは。

「冗談じゃない! 誰が!」

なおものしかかってこようとする孝一に、イセは、からだを
ねじると、思い切り蹴りを入れた。

不意を食らった孝一は、もんどりうって倒れ、その拍子に、
ガツンと何かで頭を打ったらしい。ぎゃっと悲鳴をあげてう
ずくまった。

イセは、すかさず体勢をととのえ、立ち上がると、どなった。

「とっとと出てけ! さもないと…」

みなまで言う間もなかった。孝一は、ころげるように、イセの
部屋から走り出ていった。

あのときの孝一の目…。

そう思ったとき、八重松は、すでに、イセの目の前にいた。

「イセちゃん…」

両腕をがしっとつかまれ、そのまま、床に押し倒された。

「すっかり女らしくなって…」

そこにあるのは、かつての師の顔ではなく、欲望をむきだし
にした、40男のそれであった。

「やめ…、はな…せ…」

「悪いようにはしないから」

言いながら、八重松の腕が、足が、強いちからで、イセのか
らだにからみつく。耳元に、熱い息がかかる。

「いや…だ…」

大声を出そうとしたのに、声がかすれた。振り払おうとした
が、ちからが出ない。いや、むしろ抜けていくようだ。自分
でもわけがわからなかった。

「そうだ。それでいい」

慣れた手つきで、八重松が、イセの着物の帯に手をかけた。

(茂雄さん…)

かたときも忘れたことのない、茂雄の顔が脳裏をかすめた。
ふっと、涙がこぼれた。

イセ、16歳の冬。


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
0715058.jpg
「網走市北浜付近」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 10:41| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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