語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
本日、公演47日前!
日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数522)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
メール・zeronitatsu@yumiko333.com
シベールアリーナ 023-689-1166
八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
「零(zero)に立つ」実行サポーターズメンバー、他
脚本担当・かめおかゆみこです。
山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。
第1章 1 2 3 4 第2章 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35
※これまでのあらすじは、こちら
女優の夢に見切りをつけたイセは、劇場に出入りしていたひと
の口ききで、ちいさな新聞社につとめることになった。
お茶汲みや片づけなど、仕事は雑用ばかりではあるが、新聞社
の空気は気にいった。いつでも最新の情報が飛びこんでくる。
それがイセの知識欲を刺激した。
ところが、ここでも、イセは、ことばの壁にぶつかった。つい
口の端に出てしまう山形方言が、相手に通じず、誤解をまねい
たり、笑われたりしてしまう。
笑われると、イセもだまってはいない。相手が男であっても食
ってかかって、ときに、手が出るけんかになってしまう。
結局、せっかく入った新聞社も、1週間ほどでやめることにな
ってしまった。
次に紹介されたのは、浅草の海苔問屋の女中だった。
女中の仕事は慣れているので困ることはなかった。朝早くから
夜遅くまでの仕事も、それほど苦ではなかった。
それよりも、山形ではほとんど口にしたことのない、浅草海苔
を、商品にはならないくずの部分ではあったが、いつでも食べ
られることは、うれしいことだった。
ただ、イセが納得できなかったのは、問屋一家が、イセのこと
を、「お鍋」と呼ぶことである。
はじめ、いきなり、「お鍋」と呼ばれて、イセはきょとんとした。
「わたすは、イセという名前です」
すると、海苔問屋のおかみは平然と言った。
「うちでは、女中の名前は、昔から、『お鍋』と呼ぶことになって
るんだよ。だから、『お鍋』でいいんだよ」
ちっともよくない、とイセは想った。しかも、さらに腹が立つのは、
主人やおかみばかりでなく、まだ10歳にも満たぬ、問屋の娘たち
まで、イセのことを「お鍋」と呼ぶのだ。
「お嬢さん、わたすの名前は、イセです。イセと呼んでください」
イセが言うと、娘は口をとがらせて言った。
「何よう。お鍋がいやなら、おかまとか、おふろって呼ぼうか?」
イセの怒りは爆発寸前となり、思わず、その口をつまんでやろう
かと想うのを、すんでのところで止めたのである。
「もう、いやだ。やめよう。山形にもどろう」
2か月ほどもはたらいたある日、ついに決意をした。
その夜、イセは、風呂の掃除をした。
この風呂は、問屋一家の自慢のもので、総ひのき張りでできてい
た。入れるのは、もちろん問屋一家だけ。イセたち使用人は入る
ことができない。
そのひのきの風呂を、イセは、亀の子たわしの針金の部分で、ご
しごしとちからを入れて洗った。
みるみる、ひのきの板が傷ついていく。イセの憤懣やるかたない
気持ちも、これで ようやく晴れた。
夜のうちに、こっそりと荷物をまとめて、問屋を抜け出す。
「さてと。どうしたもんか…」
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「網走市北浜白鳥公園のオオハクチョウ」
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