語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
本日、公演50日前!
日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数522)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
メール・zeronitatsu@yumiko333.com
シベールアリーナ 023-689-1166
八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
「零(zero)に立つ」実行サポーターズメンバー、他
脚本担当・かめおかゆみこです。
山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。
第1章 1 2 3 4 第2章 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34
※これまでのあらすじは、こちら
頼みにしてきた、松井須磨子がいない…。
イセにとっては、愕然とすることではあったが、このまま
引き返すこともできない。
そこに、劇場に出入りしているというひとが通りかかった。
こうなったら、わらをもすがる想いである。
「わたすは、女優になりたくてきたんです。見習いでもか
まいませんから、何とかここにいさせてください!」
必死に頼むと、そのひとは、困ったような顔をして聴いて
いたが、やがて「ちょっと待って」といって、なかに消えた。
ほどなくして出てくると、「見習いでよければいいそうだ」
と言う。
イセはほっとした。まずは路頭に迷わずにすんだ。見習いだ
ろうがなんだろうが、足がかりはつかめたと想った。
イセの仕事は、風呂番だった。
劇場にはおおきな風呂があり、女優たちがそこを使っていた。
イセの役目は、その女優たちのからだを洗うことだった。
ぬか袋で、ていねいに女優のからだをこすっていく。その肌
を見ながら、イセはひそかにため息をついた。
(なんて、真っ白ですべすべしてるんだ。まるで人形さんみた
いだ。こんな肌したひと、山形の田舎じゃ見たことない…)
温泉旅館の芸者として山形一の美女と言われた、継母のモヨ
さえも、女優たちの美しさの前では、色あせて見えてしまう。
イセは、つくづく自分と見比べてみた。
お世辞にも背は高いといえない。(成人してもイセの身長は
144センチだった)
おまけに、顔は日焼けして真っ黒だし、髪の毛も肌もまるで
手入れができていない。
何より、致命的なのは、ことばだった。イセは、出身の村山
地方の訛りのあることばを、そのまま使っていた。
いつものように、からだを洗いながら、女優と会話をしてい
たときだ。
「そうなの、山形の出身なの?」とたずねられ、何気なく、
「んだっす」と返事をしたとたん、大笑いされてしまったのだ。
イセは、一瞬きょとんとしたが、すぐに「あっ、方言を笑わ
れたんだ」と気がついた。
内心でかちんときたが、たしかに、女優になりたいのなら、
ことばづかいを変えなければならないだろう。訛りもなくさ
なければならないだろう。
いまなら、個性派俳優なんて道もあるだろうが、当時は、西
洋演劇が日本に入ってきて、「赤毛もの」と言われる舞台が、
おおいにもてはやされていた時代だった。
「わたす、女優に向いてないかも…」
女優のからだを洗うたびに、つくづく思い知らされるのであ
った。
イセが、女優になるのをあきらめたのは、風呂番をするよう
になって、2か月後のことだった。
「見習いなんて言って、本当は、あきらめさせるためにあの
仕事につかせたのかもしれないねえ」
後年のイセは、苦笑いしながらそう言ったそうである。
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「能取湖サンゴ草」
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