2016年06月28日

物語版「零(zero)に立つ」第4章 イセの初恋(2)/通巻27話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


本日、公演60日前!

日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数522)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
 オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
         メール・zeronitatsu@yumiko333.com
 シベールアリーナ 023-689-1166
 八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
 TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
 「零(zero)に立つ」実行サポーターズメンバー、他
    


脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 
※これまでのあらすじは、こちら


「おじさん、その自転車、ちょっとだけ貸してください!」

休憩時間、工場の外で休んでいると、工場出入りの業者が、自転
車で荷物を運んできた。それを見て、イセは思わず叫んでしまった。

「え? 自転車、乗れるのか、おまえ」

「もちろん!」

イセは目をきらきらさせてこたえた。

実家で桑集めをしていたとき、安蔵から借りて使っていた自転車。
あの爽快感は忘れられない。

「じゃあ、ちょっとだけだぞ」

出入り業者も、おもしろいと想ったのか、あっさりとイセに自転車
を貸してくれた。

イセは、さっそうとその自転車に飛び乗り、慣れたハンドルさばき
で、あたりを走り回ってみせた。

「イセちゃん、すごーい」

女工仲間たちも、そのようすに歓声をあげた。

「おいおい、休憩時間はそろそろ終わりだぞ」

歓声を聴きつけて外に出てきた工場長も、イセが自転車で
走り回るようすに、目を丸くした。

歌が上手で、お話もたくみで、そのうえ自転車にも乗れる。
イセは、すっかり、みんなの注目の的になってしまった。

そんなある日のこと。

「イセさん、手紙が届いてるよ」

仕事からもどると、そう言って一通の手紙を手渡された。差出人を
見ると、ていねいな字で、「戸田茂雄」とある。

「誰だろ?」

すると、目ざとくそれを見つけた同僚のひとりが、声をあげた。

「ええーっ! イセちゃん、知らないの?! 戸田っていったら、
この工場の隣の、あのでっかいお屋敷のことよう」

その声を聞きつけて、ほかの娘たちも集まってきた。

「なんでも、議員さんやってるんだって」
「工場経営してるって、聴いたよ」
「ご先祖さまは、米沢藩の家老職だったんだって!」

このあたりでは、かなりの資産家、名士らしい。どうやら、何も
知らなかったのは、イセだけだったようだ。

「てことは…、この茂雄ってひとは?」

「ご子息さまに決まってるよ。それも、中学2年の次男坊のほう」

つまりは、イセよりひとつ年上ということになる。

「ね! ね! 何が書いてあるの?」

イセはみんなに取り囲まれ、てんてこまいになってしまった。

ようやくひとりになって、手紙を開いてみると、みじかいあいさ
つ文のあとに、「今度の休日に、松が岬公園にて会いたし」と書
かれてあった。

松が岬公園とは、上杉城跡につくられた公園で、明治6年に城が
とりこわされ、その後、整備されて、明治9年から、市民に公園
として開放されている。

いまでは250本の桜が咲き誇る、観光スポットのひとつとなっ
ているが、この時代にはまだ、それはない。

さて、その、約束の、次の休日がやってきた。


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
0628039.jpg
「呼人浦キャンプ場の日没」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 08:54| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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