2016年06月22日

物語版「零(zero)に立つ」第3章 はじめての家出(9)/通巻23話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


本日、公演66日前!

日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数522)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット購入先
 オフィス夢実子(事務局・菅野)080-6020-8837
         メール・zeronitatsu@yumiko333.com
 シベールアリーナ 023-689-1166
 八文字屋POOL(山形市) 023-622-2150
 TENDO八文字屋(天童市)023-658-8811、
 「零(zero)に立つ」実行サポーターズメンバー、他
    


脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22
※これまでのあらすじは、こちら


イセが、船山家の住み込みの女中になって、1週間ほど経ったある
日。ツヤが赤ん坊をあやしながら、イセに言った。

「そろそろ、イセちゃんに、この子をあずけたいの。お昼前と午後
と、2回、お乳を飲ませたいから、明日から、私の学校まで、この
子を連れてきてほしいの」

聴けば、これまでは、毎朝、学校に近い親戚の家に寄って、赤ん坊
をあずけ、お昼に一度、お乳をやりにまた足を運び、午後のぶんは、
そのときにしぼって、親戚に託していたという。

けれども、親戚の家では、いちいち赤ん坊にかまっているひまもな
いので、日中は、かごに入れたまま、お昼まで置きっぱなしの状態
になってしまう。

この時代、農家などでは、みな似たような状況ではあったけれども、
船山夫妻はともに教員であったから、暮らしにゆとりがあった。

教育の点でも、安全の点でも、子守をやとおうというのが、ふたり
の一致した考えで、それで、イセが選ばれたわけなのだった。

この1週間、朝晩の子守は、すでにまかせてもらっている。赤ん坊
も、イセによくなついてくれているから、何の心配もない。

それよりも、たとえ、子守の用であっても、学校に行ける! その
ことに、イセのこころは躍った。

翌日、ふたりがそれぞれの学校に出かけていったあと、イセは、時
間が経つのが待ち遠しくてたまらなかった。

時間になると、おぶいひもをしっかりと結び、赤ん坊を背中に背負
う。赤ん坊は、きゃっきゃと笑って、イセの背中にしがみついた。
学校までは、3キロほどの道のり。歩いて40分ほどかかる。

はずむこころに、自然に足どりも速くなる。学校に着いたときには、
まだ、午前の授業は終わっていなかった。しかたなく正門の脇に
たたずんでいると、ひとりの男が中から出てきた。

「なした? 何で中に入らん? おや、見かけない顔だな」

男は、ここの学校の小使いであると名乗った。

「あの、船山ツヤ先生のうちに住み込みで女中してます。先生の、
お乳の時間にあわせて来るようにって…」

すると、男は、とたんに相好をくずして、うなずいた。

「そうか、そうか、ツヤ先生の…。それじゃあ、授業が終わる
まで、中で待つといい」

イセが深々と頭を下げると、赤ん坊がずりあがり、びっくりして、
「ふぁああ…」と、泣きかけた。あわてて揺すって落ち着かせ、
草履をぬいで、はだしのまま廊下にあがった。

そっと音を立てないように、イセは、廊下を歩いた。教室のなか
からは、先生たちが教科書を読んだり、黒板に文字を書きつけ
る音が聴こえてくる。それだけで、イセの胸は高鳴った。

小使いさんの部屋で待たせてもらい、赤ん坊をあやしていると、
やがて授業の終わりを告げる鐘が鳴った。ほどなくして、ツヤ
先生が、足早にあらわれた。


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網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
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「網走刑務所湖畔農場跡地」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 12:28| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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