2016年05月30日

物語版「零(zero)に立つ」第2章 差別と貧しさのなかで(2)/通巻6話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ〜
激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜」


日時/2016年8月27日(土)18:00開演
会場/シベールアリーナ(客席数522)
観劇料/3000円(当日3500円)
チケット発売開始は、6月20日!
本日、公演89日前!


脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬に駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章  


イセは、並みの女の子とは比較できないほど、たくましく、また力も強か
った。何しろ、男の子たちと取っ組み合いのけんかをしても、余裕で勝っ
てしまうのだから。

成長するにつれ、その強さはますます顕著なものになった。そして、その
体力を補強するかのように、イセは小柄なからだで、よく食べた。

小学校にあがるかあがらないかのうちから、ごはんはおかわりが当たり前。
それでも足りずに、3杯めもほしがる。いくら、里親のコウが、自分の食
事をへらしたとしても、焼け石に水である。

幼いイセに、「居候3杯目はそっと出し…」なんて配慮はなかったろう。
いや、仮にあったとしても、育ちざかりのからだで、空腹をがまんするこ
となど、できなかったにちがいない。

そして、これに癇癪を起こしたのが、コウの長女・ツタである。イセが、
佐藤家にやってきたころには、すでに、娘ざかりにはなっていたが、1
人ぶんの食い扶持がふえれば、さまざまな面で影響を受ける。

もともと、日々の食にさえ事欠くほど、貧しい佐藤家である。おしゃれ
のひとつもしたい年頃になっても、ほかの家の娘たちのようには、櫛ひ
とつ自由に買うことができない。

それがイセのせいではないとわかっていても、遠慮もなしに、おかわり
を要求してくるイセに、がまんのならぬ想いが湧き上がるのだ。

炊事番をまかされていたツタは、イセがおかわりのお碗をさしだすと、
わざと、しゃもじで、ぴしゃっとイセの手を打った。

「育て賃も出さねえやつが、しゃあしゃあとおかわりなんかすんな!」

すると、イセは、しゅんとなるどころか、ほおをふくらませ、顔を赤
くして、ツタをにらみ返す。その態度に、ツタはますます腹を立てて、
あらあらしく、おひつのふたをバシンと閉めた。

「終わりったら終わり! いくら待ったって、おかわりはないよ!」

こんな攻防戦が、しょっちゅう繰り広げられた。そのようすを、コウ
ははらはらして見ていたが、ツタに気兼ねして、おもてだってはイセ
をかばうこともできない。

時折、運良く手に入れた芋の切れっ端などを、こっそりイセに食べさ
せるのが関の山であった。

しかし、この攻防戦、実は、ひょんなことから決着がつくのである。


朝焼けアップ用1.jpg
※網走市潮見から見た朝の空。イセさんもこんな空を見て暮らしていたろうか。


posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 13:41| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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