2016年12月30日

【最終回】物語版「零(zero)に立つ」第20章 一世紀を生きて(9)/通巻155話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


イセが亡くなったという知らせは、新聞・テレビなどで、一
斉に報じられた。

多くのひとびとが、数奇な運命を生きた、このひとりの女性
の死を悼んだ。

網走市は、1月20日に、市民葬をとりおこなうことを決めた。

その日、天井まで届きそうなほどの花が、祭壇のまわりを埋
めつくした。おとずれた市民の数は、800人にもおよんだ。

イセが市議会議員をつとめていた時代、網走市長であった安
藤哲郎は、イセについて、こんなことばを残している。

「どん底から這いあがり、逆境を克服し、その強靭な精神力
での“天下御免”の活躍は、庶民の味方として、また女性の
味方としても、こんなに頼もしい人はおりません」

議員時代、イセと親交のあった、網走市議会議長(当時)の
田村直美は、

「男まさりのきっぷで、時の首相や幹事長にズケズケものを
言った」と、当時をしのびながら述懐した。

そのほか、イセを評することばをいくつか紹介しておこう。

・「北海道を開拓した北の女性の代表」
               (元北海道知事の横路孝弘)

・「覚者としての人の味が、一種迫力となって伝わってくる」
(雑誌『北海道味と旅』元編集長・山本祥子)

・「自分が何者で、何をすべきかを知っている顔」(司馬遼太郎)

(※ここまでの記述は、ウィキペディアを参照しました)


能取岬ドローンから.png

いま、網走の小高い丘にある墓苑に、イセは眠っている。

そこからは、イセの愛した能取岬を、直接には、のぞむ
ことはできない。

しかし、もはや肉体のしばりをときはなたれたイセの魂は、
かるがると空の高みを駈け、岬のうえをどこまでも飛んで
いくだろう。


イセの娘・愛子は、その数年後、90歳を手前にこの世を
去った。

ちなみに、イセの実父、今野安蔵は、先妻とのあいだにで
きた娘に引き取られて、晩年は、妻モヨとともに、網走の
近くの町に住み、亡くなった。

イセの直接の血は絶えたが、イセを生み出した安蔵の血
は残り、その血のどこかに、「イセ」は受け継がれていくの
かもしれない。

今日も、能取岬の緑の大地のうえを、風が吹き抜けていく。

眼下に広がるオホーツクの海は、どこまでも青い。

                          (完)


2015年8月、語り劇「零(zero)に立つ」網走初演の際
におとずれた、能取岬の光景を、ドローンにて撮影しま
した。ぜひごらんください。イセさんの視点を、ともにたどれ
るかもしれません。(操縦・撮影・動画作成/アキラ)
https://youtu.be/dCXkAw2DkKw


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posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 06:27| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする