2016年11月30日

物語版「零(zero)に立つ」第18章 塀の向こう(1)/通巻134話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


「わたすがですか? 普通、そういうところで話をするって
いえば、お坊さんとか牧師さんとかではないんですか?」

「いえ、ふだんはそうなんですが、中川さんがこれまでいろ
いろご苦労をなさっているという話を聴いて、ぜひ、囚人た
ちに聴かせてやりたいと想いまして」

「わたすなんかでいいんでしょうかねえ」

「中川さんは、人権擁護委員もなさってますから、立場的に
も問題ありませんよ」

「そうですか…」

話しながら、イセの脳裏に、不意に、遠い昔の記憶がよみが
えってきた。

あれは、まだ18歳そこそこ。遊廓に入ってまもないころのこ
とである。

金松楼の先輩娼妓のひとりが、お守り袋のなかから、何か
を大事そうに取り出して見せてくれた。

「イセちゃん、こんなの、見たことないでしょう?」

「何ですか?」

ぱっと見に、糸くずのかたまりかと想ったが、よく見ると、
草鞋のかたちをした飾りものなのであった。

それも、指先にちょこんと載るくらい、ちいさなものだ。

そのくせ、本物の草鞋と同じように、きっちりていねいに、
編み込まれている。

本物とちがうところは、そこに何本かの長めの糸がついてい
るところだ。

「わあ、本物そっくり。よくできてますねえ」

「これ、誰がつくったかわかる?」

「誰って…。土産ものやさんとかじゃないんですか?」

先輩娼妓は、自慢げに、首を振って言った。

「囚・人・さん」

「え?…あの、監獄の…ですか?」

イセは、思わず、金松楼の近くを流れる網走川のほうに目を
やった。

その網走川を少しのぼると、大曲(おおまがり)といって、
ぐっと流れが湾曲するところがあり、その川向こうに、網走
監獄は建っていた。

歴史的にいえば、1890年、「釧路監獄署網走囚徒外役所」
として開設され、のちに「北海道集治監網走分監」となる。、

「網走監獄」として改称されたのは、1903年(明治36年)。

その後、1922年(大正11年)に「網走刑務所」と改称さ
れるが、イセがいた当時は、まだ「監獄」と呼ばれていた。

当時の網走監獄は、いまとちがって、無期懲役や20年、30
年は当たり前というものたちばかりが、収容されていた。

その長い年月、檻のなかで暮らすものたちが編み出したのが、
この「豆草鞋」づくりなのである。

それは相当な熟練を要し、習熟するのに3年、5年とかかる
ものであった。

しかも、見つかれば没収の、いわば反則品である。

だからこそ、人手にわたると、ただの飾りものではない、値
打ちをもつ。

囚人たちは、晴れて出所が決まると、これをこっそりと荷物
のなかにしのばせておく。

それは、遊廓で、ひと晩過ごせるだけの値をもったのである。

「囚人さんって、おっかなくないんですか?」

イセが聴くと、先輩娼妓は首を振ってこたえた。

「普通のひとと変わんないよ。それよりも、世間さまから隔
離されて生きてるとこなんざ、あたしたちと似たような気が
して、他人に思えないんだよね…」

先輩娼妓は、豆草履を大事そうにさすりながら、しみじみと
つぶやいた。

「これを見るたびに、思うのさ。あの塀の向こうで、何十年
も耐えたひとがいたんだ。あたしも、どんなに苦しくても、
がんばろうって…」

それを聴きながら、イセのなかで、これまでいだいていた、
監獄や囚人にたいするイメージが、変わっていくのを感じ
ていた。

「中川さん…?」

電話の向こうの声に、イセははっと我に返った。

「どうでしょう? 引き受けていただけますでしょうか?」

「…あ、はい、わたすでよければ、よろこんでお話しさせて
いただきます」

「ああ、よかった。それでは、日程は…」

電話の向こうの声が、ぱっと明るくなった。


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2016年11月29日

物語版「零(zero)に立つ」第17章 イセ、奔走す!(11)/通巻133話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

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1957年には、ようやく売春防止法が成立した。

イセは、ますます、積極的に、そうした店と交渉し、商売替
えさせるなどのはたらきかけをした。

それでも、あこぎなやりかたをあらためない店は、法務局に
かけあって、廃業させることもした。

「あのやろう、店をつぶしやがった。痛い目にあわせてやら
ねえと、気が済まねえ」

そんなことをいきまくものもいたようである。

事実、何度か、道を歩いていて、つけられていると感じるこ
とがあった。

しかし、イセが有段者であることが知れ渡っていたせいだろ
うか、さいわいにも、襲われるようなことは、なかったので
ある。

そのころになると、網走市内にかまえたイセの家は、ひとび
との相談所のような状態になっていた。

「明日食べるものがないんです…」

「夫の暴力に苦しんでます。ころされるかもしれない」

そんなうったえが、ひっきりなしに入ってくる。

そのたびに、イセは、ていねいに話を聴いた。出てこられ
ないもののために、出向いて話を聴くこともあった。

さらには、必要とあれば、逃げ出すための汽車賃や、当座
の生活費までわたしてやる。

女たちは、びっくりしてイセを見る。

「ありがとうございます。…でも、私、このお金、お返しでき
ません」

「これは、貸すんでない。あんたにあげるんだ。そのかわり、
苦しいことがあっても逃げずに、がんばるんだよ」

「ありがとうございます!…ありがとうございます!」

イセに助けられた女たちは、拝むようにして、そのお金を受
け取った。

それを見ていた支援者のひとりが、あきれて言った。

「イセばっちゃん、またですか。そんなに気前よくお金をわ
たしていて、生活、大丈夫なんですか」

「だって、困ってるんだから、しかたないじゃないか」

「せめて、あげるのではなく、貸すことにしては」

「いのちからがら逃げて、精一杯のところに、今度は、借金
を背負わせるのかい。そんなことはできないよ」

「でも…」

「大丈夫。わたすは、これまでいろんな苦労を乗り越えてき
たんだ。なんとかやっていけるもんだよ」

そう言って、からっぽになった財布を振って、笑ってみせた。

イセが、最初に人権擁護委員になったのは、1950年。

その後も、さまざまな要職につくことになる。

1953年には、網走市の母子相談員、社会教育委員、防犯
協会理事を兼任。

1958年には、網走市人権擁護協議会会長となる。

それにともない、1953年には、法務省から感謝状を受け、
1961年には、全国人権擁護委員連合会会長表彰、1963
年には法務大臣表彰を受けている。

イセは、そうした肩書きや表彰を、ことさら自慢するようなこ
とはなかった。むしろ、低姿勢で、「わたすのようなものが」
と受け取った。

それでも、さんざん苦労を重ね、たどりついたこの網走で、
こうして、自分が受け入れられ、みとめられることは、よろこ
び以外のなにものでもなかった。

そんな日々のなか、イセのもとに一本の電話がかかってきた。

「網走刑務所ですが、囚人たちに、ぜひ、中川さんのお話を
聴かせていただきたいと想いまして」


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2016年11月28日

物語版「零(zero)に立つ」第17章 イセ、奔走す!(10)/通巻132話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

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イセからの連絡に、店主はいきどおった。

「勝手に女たちを連れ出しやがって。営業妨害でうったえ
てやる!」

「女たちは、自分たちの意思で、店を出たんだよ。
それに、うったえて困るのは、あんたのほうでないのかい。

女たちから話を聴いたよ。ずいぶん、あこぎなはたらかせ
かたをしてるみたいじゃないか。

料理屋だったら、料理屋の仕事ってもんがあるだろう。
それ以外のはたらかせかたをして、しかも、はたらいたぶ
んの金を、まともに払っていない。

自分のやっていることが、商売人としてどころか、ひとの
道にもはずれてるってことを、よくよく考えてみなさい。

女たちは、料理屋の仕事であれば、店にもどって、よろこ
んですると言ってる。どうする?」

店主はなおも、いきまいたが、イセはがんとして自説を曲
げない。もちろん、女たちのいどころも明かさない。

店主は困り果て、町の接待業組合の組合長に相談した。

組合長は、話を聴くと、顔をしかめて言った。

「そいつは相手が悪い。あの中川イセって議員は、もとは、
遊廓の出らしい。だから、そういう商売をやってるところ
を、つぶしてまわってるって話だ」

「遊廓出の議員? そんなこと、あり得るのか?」

「本当だ。しかも、この前の選挙ではトップ当選だと。

それに、網走の水道を通すのに、日本鋼管の社長に談判し
て、交渉成立させたとか聴いたぞ。おまけに、柔道の達人
だそうだ。相手がまずすぎる」

「冗談じゃねえ。そんなやつに営業妨害されたら…。組合
長、なんとかしてくれ」

「わかった。なんとか話をつけてくる」

組合長は、網走までやってくると、イセに会うと、頭を下
げて言った。

「店主も反省してますんで、なんとか穏便に…。店がつぶ
れてしまっては、女たちも仕事をうしないますし…」

何度も頭を下げられ、「私が責任をもちますので」とまで
言うので、イセも、「わかった」とうなずき、女たちを店
に帰すことにした。

けれども、完全に、店主や組合長を信用したわけではない。

表面では、きれいごとを言って、その実、裏腹なことをや
っているものたちを、さんざん見てきたからである。

3か月ほど経ったころ、イセは、予告なしに、ふたたび店
をおとずれた。

イセの顔を見た瞬間、店主の顔色が変わった。

同時に、女たちがほっとした表情を見せるのを見て、イセ
は、すべてをさとった。

「いや、あの…、これにはわけが…」

店主が言い訳するのを無視し、イセは店をあとにした。

そのまま、法務局に出向くと、「届け出にない、違法営業
をやっている店がある。とりしまってくれ」と通告した。

店は、営業停止となった。

イセは、女たちがあたらしい仕事につけるよう、とりはか
らった。

このうわさもまた、ひとびとの知るところとなり、なおい
っそう、助けをもとめる声が、イセに寄せられるようにな
るのである。


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「氷のトンネル」 
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2016年11月27日

盛況でした! ありがとうございます!

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

土日祝日は、連載はお休みさせていただいています。


※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


昨日は、夢実子さんの声と言葉のレッスン、
語り劇「掌編・中川イセ物語」
かめおかの「聴く」を磨く講座。

おかげさまで、盛況でした♪

ありがとうございます!!


本日、移動日につき、詳細は今夜アップします。

まずは、感謝!!

honnbann_n.jpg
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 09:26| Comment(0) | 報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月26日

これまでのあらすじ/信頼関係をつなぎながら

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

土日祝日は、連載はお休みさせていただいています。


これまでのあらすじ

★第1章★ いせよ誕生
明治34年(1901年)、今野安蔵・サダの娘、いせよ(のちの中川イセ)
誕生。サダは、産後の肥立ちが悪く、死を予感。ヤクザものの安蔵にあとを
託すことを怖れ、佐藤コウに里親を頼むと、その年のうちに亡くなった。
    

★第2章★ 差別と貧しさのなかで
イセは佐藤家の里子になった。佐藤家は貧しく、イセはまわりからいじめられ
たり、差別を受けたりするが、コウの愛情、親友・渡辺みよしの存在、自身の
負けず嫌いの性格で、それらをはね返して成長していく。
     10 11 12 13 14 

★第3章★ はじめての家出
10歳で実家に連れもどされイセは、学校にも行けず、仕事に明け暮れる。
11歳の夏、モヨとの口論から、初めての家出。山形の船山先生夫妻の
家で住み込みの女中をし、かわいがられるも、翌春、船山先生に満州へ
の転勤辞令が出て、再び実家にもどることになる。
15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25

★第4章★ イセの初恋
またまた家出し、米沢の寮づきの織物工場ではたらく。仲間もできて楽し
い日々。そんな中、隣に住む名家の次男坊・戸田茂雄との初恋も体験。し
かし、安蔵にイセの居場所を知られたことで、イセは実家に帰ることに…。
26 27 28 29 30 31 

★第5章★ 女優志願
実家にいる間、地域巡演で山形にきた松井須磨子(実はにせもの)にあこが
れ、家出して上京する。しかし、たずねた帝国劇場に須磨子はおらず、い
くつかの仕事を転々とするが、結局あきらめて山形にもどることになる。
32 33 34 35 36 37 

★第6章★ 運命の歯車
人絹工場、機織り工場などではたらくうち、かつて実家に出入りしていた
芸人・八重松と再会。乱暴されて子どもを身ごもり、17歳で娘・愛子を
出産。その後、北海道の遊廓への話をもちかけられ、悩んだ末、イセは3
年で500円の借金をし、そのお金で愛子を里子に出すことにする。
38 39 40 41 42 43 44 

★第7章★ 網走まで
大正7年暮れ、イセは北海道に旅立った。ところが途中で虫垂炎から腹
膜炎をおこし、到着した旭川で即入院。借金が倍の1000円となり、
網走の遊廓に売られることに。駅前の島田食堂の夫婦にかわいがられる。
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★第8章★「お職」になる!
自転車を借りて町内を乗り回したり、柔道場に通ったりしたイセだが、娼
妓になると今度は、囲碁や将棋をおぼえ、お客を楽しませる工夫をした。
また酒に強く、何度も杯を重ね、そこから収益をあげることも考えた。
51 52 53 54 55 56 57 58 59

★第9章★「小梅」の死
イセは、娼妓に乱暴した客を一本背負いで投げ飛ばすなどで、娼妓たちの
信頼を勝ち得ていった。しかし一方で、妹ぶんの「小梅」が、失恋を苦に
自死。小梅の死をきっかけに、娼妓みんなでちからをあわせることを誓う。
60 61 62 63 64 65 66 

★第10章★中川卓治という男
イセは、柔道場で出会った中川卓治と親しくなり、急速に気持ちが近づい
ていく。卓治の妹・タマは、2人の交際をはげしく反対するが、卓治はイ
セに求婚し、イセは身請けされて、ついに遊廓を出る。
67 68 69 70 71 

★第11章★樺太にて
中川家よりもイセを選んだ卓治。2人は樺太にわたり、仕事を見つけて
はたらき、暮らしを立てた。卓治は、酒がもとでけんかをして大けがを
したりもするが、ついに茂市の許しが出て、網走に帰れることになる。
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★第12章★岬の日々
網走の能取岬にある中川牧場の管理をまかされたイセたち。その雄大な
景色にイセは魅了される。乗馬も覚え、少しずつ馬との暮らしに親しみ、冬
になれば、流氷の美しさに見とれる。平和な日々がすぎていく。
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★第13章★茂市の死
卓治の父・茂市が、娘婿・東条貞の選挙資金調達で14万円の借金を残
して死去。イセと卓治はその借金を引き受ける。拓銀に50年割賦(ロー
ン)を頼むため、イセは札幌本店に出向き、交渉を成立させる。
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★第14章★戦況のなかで
借金返済のため、卓治とイセは、馬喰となった。また、念願の愛子をひき
とり、やがて、養子の清と結婚させる。しかし、清は、海軍に招集され、戦死。
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★第15章★米軍上陸?!
1945年7月、網走空襲。米軍が上陸するかも…という緊迫感のなか、イセ
は自分がおとりになるから、みんなは逃げろと宣言し、町長公宅に泊まり込む。
しかし米軍は上陸せず、8月15日、終戦をむかえる。
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★第16章★初の女性市議会議員誕生
1947年4月、網走が市政変更になったのを受け、初の市議会議員選挙。女
性参政権ができて最初の選挙となり、イセはまわりにおされて立候補。30議
席に83人の立候補だったが、下から3番目で当選。最初の街頭演説の日、
イセは、踏み切りの前に立ち、遊廓時代に亡くなった小梅に演説を聴かせる。
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★第17章★イセ、奔走す!(2016.11.18ぶんまで)
議員1期めから2期目へ。家の前でのラジオ体操。保育園建設。そして、日
本鋼管とかけあっての、網走での水道敷設。イセは精力的に動きつづけた。
なかでも、一番力を注いだのは、人権擁護の活動だった。
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いつもご愛読ありがとうございます


信頼関係をつなぎながら

昨日は、北海道新聞千歳支局におじゃましてきました。

支局長の石原宏治さんは、かつて、「私のなかの歴史」(中川
イセさん)の連載を担当されました。そのときのお話をうかが
いたいと想ったのです。

そのとき、石原さんは、まだ20代なかばだったそうです。
20代なかばの青年が、92歳のイセさんを取材したわけです。

感動しました。

単発の記事ではなく、16回の連載でした。それを、その若さ
の青年にまかせるという、デスクのふところの深さ。

しかも、それを、数回の取材でまとめたのではなく、半年もの
時間をかけて、イセさんとの信頼関係をつなぎながら、まとめ
あげたのです。

いまはなんでも、すぐ、即、みたいな雰囲気で、ものごとが流
れていきがちですが、信頼関係をつなぐには、ときに時間も必
要です。

それが許容される時代だったのか、あるいは、デスクが、若手
を育てることの意味を知っていたのか…。

おそらく、その両方であっただろうと想われるのです。

お話は、2時間にもおよび、すっかりおじゃましてしまいまし
たが、いくつものエピソードをお聴きすることができました。

この連載にも、加味されていくことになると想います。

どうぞお楽しみに!

さあ、今日はいよいよ、本日、札幌公演!

ぜひ、会場でお会いしましょう! 

おもて面小.JPG うら面小.JPG
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札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら 
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「サロマ湖展望台」 
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2016年11月25日

物語版「零(zero)に立つ」第17章 イセ、奔走す!(9)/通巻131話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
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ある日のことだ。見知らぬ女性の名前で、手紙が届いた。

開けてみると、津別の料理屋につとめているという、女性か
らだった。

「助けてください。私たちは、〇〇という店につとめている
ものです。
表向きは料理やですが、裏では、男をとらせているんです。

私たちは、住み込みではたらいていて、店主におどされて、
しかたなくしたがっています。

でも、先日、◇◇さんが病気になって伏せっているとき、
『ただで置かせておくことはできない』と言って、◇◇さん
にまで、お客をとらせようとするんです。

私たちは、相談して、あなたに手紙を書くことにしました。
中川イセさんというひとは、弱い女性の味方だと、店にきた
ひとが話しているのをきいたからです」

たどたどしい筆致からは、慣れない手紙を必死で書いたこと
が伝わってくる。

津別は、網走から60キロあまり離れたところにある町である。

イセは、すぐに汽車に乗り、津別のこの店に出向いた。

(当時、網走から津別までは、網走〜美幌(びほろ)まで石北
線で行き、美幌から相生線に乗り換える。ちなみにこの相生
線は、1985年に廃線になった)

最初、名刺を見ると、店主はけげんそうな顔で、イセを見た。

「網走の議員が何しにきた」

「ちょっと気になるうわさを聴いたのでね。たしかめにきた
んですよ」

店主は、一瞬いやな顔をしたが、そっけなく言った。

「ここは津別だ。あんたには関係ない」

「あんたにはなくても、私にはあるんだよ。ちょっと、はた
らいているひとたちと、話をさせてもらいたいんだけど」

イセは、なかば強引に店主を押しきり、2階の座敷に女た
ちを集めると、話を聴いた。女たちは、全部で6人いた。

「まさか、きてくれるなんて思ってもみなかった」

涙ぐむ女たちに、

「助けをもとめられたのに、ほっとくわけにはいかないよ」

イセはそう言って、手紙を書いたという女をはじめ、ほか
の女たちの話にも耳をかたむけた。

「私たち、どうしたらいいんですか」

「ここをやめても、はたらくところがなくて…」

イセは、女たちをはげました。

「あきらめちゃだめだ。人間、本気で生きてりゃなんとかな
る。まずは、いったん、ここを出ることだ」

「でも、私たち、お金も店主に管理されてるんです」

やはり、かつての遊廓と変わらないやりかたで、女たちは自
由をうばわれていたのだった。

「だったら…」

イセは、財布からお金を出すと、そっと、女たちに手渡した。

「夜中になったら、こっそり店を抜け出して、汽車に乗って、
網走の私のうちまで逃げておいで」

女たちは、おどろいた。

「え、でも、私たち、お金を返せません」

「返さなくていい。これは私から、あんたらにやるんだか
ら。駅から、私のうちは…」

イセは、駅からの地図も書いて、女たちにわたした。

その日は、店主には何も言わず、そのまま帰った。

女たちは、あとから相談したようで、その夜の最終列車で、
6人全員が、網走までやってきた。

「よくきたね。まずは休んで、この先どうするか考えよう」

女たちは、顔を見合わせた。意を決してきたものの、先のこ
とまで、じっくり考えたわけではない。

イセも、無責任に、女たちを世間に放り出すことはできない
と考えていた。

女たちは、これまで、自分の意思などかえりみられることな
く、いつもひとの思惑に動かされて生きてきたのだ。

それは、ひととしての尊厳をうばわれた生きかたではあるが、
女たち自身も、どこかそれをよしとしてきた面があった。

自分が変わると決めなければ、だめなのだ。

これまで、大勢のひとと出会って、その生きかたを見てきた
イセは、そのことがよくわかっていた。

「本気で店を出たいのか? それとも、待遇が改善されれば、
このままはたらいてもいいのか」

イセは、女たちの話をじっくりと聴いた。

男をとらされるのはいやだ。でも、普通に料理屋としての仕
事だけでいいのであれば、これまでどおりはたらきたい。

それが、女たちの気持ちだった。

「わかった」

イセは、店主に連絡をとった。


いよいよ、明日本番!
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札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
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「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
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2016年11月24日

物語版「零(zero)に立つ」第17章 イセ、奔走す!(8)/通巻130話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


けれども、7期28年にわたる議員の仕事のなかで、イセが
もっともちからを入れたのは、なんといっても「人権擁護」
の活動だった。

それは、遊廓時代に、女性の権利、いや、ひとの生きる権利
が、どれだけ蹂躙されたかを、身をもって知っていたイセに
とって、生涯をかけるに足る仕事だった。

そもそもの活動は、議員になる前、1943年(昭和18年)
からはじまっている。

この年、イセは、北海道方面委員(戦前の民生委員)をにな
うことになった。

議員になった1947年(昭和22年)、議会のなかでこそ、まだ
発言権はもてなかったが、この年に、釧路家庭裁判所網走
支部の、家事調停委員となっている。

この仕事は、議員をやめる前年の、1974年(昭和49年)
までつづけている。

本格的に、人権擁護の活動に取り組み始めたのは、1950
年(昭和25年)、人権擁護委員に任命されてからである。

イセは、何よりも、女性がお金で買われるような制度を、なく
したかった。しかし、それは簡単なことではなかった。

少し長くなるけれども、「戦後日本の公娼制度廃止にお
ける警察の認識〜内務省警保局保安係「公娼制度廃止
関係起案綴」の分析〜
」から、引用したい。

1946年1月21日、GHQは高級副官部補佐H.W.ア
レン大佐の名前で、日本政府に対する覚書「日本における
公娼の廃止」を発し、公娼制度はデモクラシーの理想に違
反し、個人の自由発達と矛盾するという理由から、その廃
止を命じた。
(略)
しかし、廃娼が即、買売春禁止を意味するものではなかっ
た。廃娼の覚書が発表される直前の1月12日、警視庁保安
部長から「公娼制度廃止に関する件」の通達が発せられ、
公娼制度は廃止しても私娼として存続を認めることが表明
されたからである。
そして、11月14日、第一次吉田茂内閣の次官会議は、
「特殊飲食店」における買売春行為を認める決定をおこな
い、「赤線」と呼ばれる売春街が成立した。


つまり、制度そのものは廃止しても、「私娼」の存在を禁止し
なかったことから、あらたな差別の構造を生むことになるので
ある。

結局、本当の意味で、買売春が禁止される「売春禁止法」が成
立するまでに、なお6年の年月を待たなければならなかった。

もちろん、イセは、だまって手をこまぬいていたわけではない。

初の女性議員となったイセのところには、差別と人権蹂躙にあ
えぐ女性たちから、助けをもとめる声が届くようになったから
である。

イセが、遊廓の出であることを聴き知って、そんな体験をもつ
ひとであれば、きっとわかってもらえる…と、必死の想いをと
どけてくるのだ。

そうした声を聴くたびに、イセのなかに、ふつふつと怒りが湧
きあがってくる。

「同じ人間が、売買の対象にされるなんて、ゆるせない!」

その足で、店に出向いて、店主と直談判である。

イセは、けっして議員という権威をカサに着ることはなかった
が、それでもその肩書きは、それなりにものを言った。

議員じきじきから談判されて…、というよりも、イセにすごま
れれば、たじたじとなり、「待遇を改善する」と約束せざるを
得ない。

本当は、いますぐそんな商売はやめさせたい。しかし、いきな
り仕事をうしなっては、女性も生きていけない。

少なくとも、女性が合意のうえで仕事をしているなら、まず、
待遇をよくさせるのが先だ、というのがイセの考えであった。

しかし、なかには、イセを甘く見て、のらりくらりとごまかそう
とするものも、少なくなかった。

「うちは割烹屋だよ。まあ、お客のなかにはいろいろいるだろ
うけど、細かいこと言ってたら商売にならないからねえ」

「知らないっていうのかい」

「さあねえ」

イセは、店主をぶんなぐってやりたい衝動にかられたが、ぐっ
とそれをこらえた。

代わりに、眼光鋭く、言いはなつ。

「裏はとれてるんだよ。なんなら、新聞社にもちこんで、記事
にしてもらおうか。法務局に通告したっていいんだよ」

イセの口調とまなざしに、さしもの店主も青ざめた。

「ちょ…。かんべんしてくださいよ」

店主が、そっと、手付けをわたそうとするのを、イセはびしっ
とはねのけて、一喝する。

「次にくるときまでに、改善していなかったら、本当に通告す
るからね」

やがて、イセの評判を聴いて、網走以外の市町村からも、うっ
たえが届くようになった。


いよいよ、あさって本番!
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札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
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「サロマ湖竜宮台展望台」 
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2016年11月23日

北海道新聞に情報が掲載されました!/23年前の舞台

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

土日祝日は、連載はお休みさせていただいています。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


いよいよ、今週末本番!
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というわけで、応援、よろしくお願いいたします

北海道新聞に、掲載していただきました

情報クリップ.jpg

11月22日付の北海道新聞「情報クリップ」(たぶん、札幌版
になるのかと思います)に、掲載していただきました!

また、同じく、11月22日の北海道新聞に折り込みされる、
「札幌10区」にも情報が掲載されました。

札幌10区_n.jpg
札幌10区とは?
http://sapporo-talk.hokkaido-np.co.jp/prom/

そして、こんなタイミングで、すてきな出会いがありました!

いまから23年前、イセさんを主人公にした舞台「岬を駈ける
女」が、北海道演劇集団によってつくられました。

それが、札幌、網走、天童で上演されています。

今回の夢実子さんの札幌公演も、当時、演出助手をつとめてい
たかたが、開催メンバーとして加わってくださっています。

もちろん、最初からわかっていてお願いしたわけではなく、た
またまのご縁なのです。

イセさんがらみでは、こうした不思議なご縁のつながりが、び
っくりするくらいたくさんあります。

話をもどすと、その道演集の天童上演の際、地元の「若妻会」
のメンバーが、共演しているのだそうです。

そして、そのメンバーのおひとりが、夢実子さんが先日、荒
谷フェスティバルで、「掌編・中川イセの物語」を上演した
荒谷公民館の、館長さんの奥さま、佐藤恵子さんなのだそう
です。

その恵子さんが、「せっかくだから役立ててほしい」とおっし
ゃって、当時のパンフレット、台本、ちらし等を、夢実子さん
にプレゼントしてくださったのです。

今日、夢実子さんが、それを写真に撮って、フェイスブックに
アップしてくださいました。

「岬を駈ける女」台本.jpg

現物は、夢実子さんの手元にありますので、25日、札幌で
合流したときに見せていただく予定です。楽しみ!!

この23年前の公演の詳細は、今回の公演が終わったあとで、
ゆっくりご紹介させていただきますね〜

さあ、いよいよ、本番3日前です

お近くのかたに、お声かけして、ぜひいらしてくださいね


おもて面.JPG うら面.JPG

ちらし設置場所(敬称略・順不同)

ちえりあ
エルプラザ
かでる27
芸術の森
札幌市こどもの劇場やまびこ座
大通情報センター
ふれあいパンフレットコーナー(地下鉄大通りコンコース)
ターミナルプラザことにPATOS
札幌市社会協議会
豊平館
市内全図書館
中央区民センター
北区民センター
東区民センター
白石区民センター
豊平区民センター
南区民センター
西区民センター
手稲区民センター
札幌文学館
教育文化会館
札幌市資料館
近代美術館
三岸好太郎美術館図書館
山の手まちづくりセンター
澄川まちづくりセンター
情報図書館(野幌)
朝日ヶ丘地区センター
あけぼのアート&コミュニティセンター
江別ホール
ドラマシアターども
小樽図書館
小樽文学館
小樽美術館
san-en
かえるめがね
パンとケーキのショコラ
夢横丁
みんたる
まなびやカフェ あけぼの分校 給食室
コンカリーニョ
詩とパンとコーヒー・モンクール
スープカレーポレポレ
ライブ&バー アフターダーク

※お名前がもれているところがありましたら、
 お知らせください。すぐに追加いたします。


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「エゾキスゲ」
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2016年11月22日

物語版「零(zero)に立つ」第17章 イセ、奔走す!(7)/通巻129話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
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それにしても、イセの、土壇場での「はったり力(りょく)」とも
いうべき、押しの強さ。

あれは、20代、卓治と宗治とともにわたった樺太で、卓治
が消防団にからまれて、いのちを落としそうになったとき。

「柔道三段の中川イセだ。かかってこい」と言って、相手に
一目置かせた。

実は、あのときも、柔道はやってはいたが、まだ三段にはな
っていなかったのだ。

それより前、17歳のとき、自分を妊娠させた八重松に、
愛子を認知するようせまったとき。

「ことわれば、東京の新聞社の知り合いにたのんで、記事に
してもらう!」と言ったのも、やはり、はったり。

ここぞというときに繰り出される、「はったり力」は、その
つど、イセの人生を、窮地からすくってきたのだった。

自分のためではなく、誰かのためにと発したそれが、結果的
には、功を奏してきたのである。

さて、翌日である。

イセたちが、日本鋼管の応接室で緊張して待っていると、社
長とともに、5、6人のひとたちが、なかに入ってきた。

「役員のみなさんです。会議の結果をお伝えします」

社長は、役員たちを紹介し、イセたちに言った。

「みなさんの熱意に負けました。この仕事、日本鋼管が、引
き受けさせていただきます」

課長が、小躍りしそうな歓喜の表情で、イセたちを見た。

しかし、そのとたん、木下がぶるぶるとふるえだした。

契約成立はうれしいが、どうやって担保をはらおうか、その
ことを案じているのだ。

それは、イセとて同じ気持ちである。

イセは訊いた。

「あの、私たちの財産は、どうすればいいんですか?」

社長は、にこやかにこたえた。

「自治体との仕事に、個人の担保を入れることはありません
よ。いりません。あなたがたを信用して、網走市と仕事をさ
せていただきます」

その瞬間、三人とも起立して、社長と役員たちに、深々と頭
を下げた。

「ありがとうございます! 市民たちがどれほどよろこぶか
わかりません」

まさか、担保をはらわないですんでよかった、とは言えなか
ったが、うれしかったのは本心である。

こうして、2億5千万円をかけた、網走の水道敷設工事がは
じまった。

藻琴山8号目の湧水から、30キロ近く離れた網走まで、水
道管をとおす工事である。

工事は、2年の歳月をかけ、1954年(昭和29年)には
完成した。

清の忘れ形見、愛子の子ども、11歳になった尋仁が、水道
の蛇口をひねって、無色透明な水が出るのを見て、歓声をあ
げた。

「ばあちゃん! ばあちゃんの水だよ!」

それを見て、イセも目を細める。

自分が何をしたかは問題ではなかった。こうして、誰もが安
心しておいしい水を飲めることになったことが、何よりのよ
ろこびであった。

この水道事業を完成させたことで、イセの人気は、確固たる
ものとなった。

「イセばっちゃんが、からだを張って、日本鋼管と交渉して
くれたから、水道事業を引き受けてもらえた」

そんなうわさが、町じゅうをかけめぐったからである。

1955年。イセにとっては、3回目の網走市議会議員選挙。
ここで、イセは、堂々のトップ当選を果たすことになる。


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2016年11月21日

物語版「零(zero)に立つ」第17章 イセ、奔走す!(6)/通巻128話

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社長もおどろいたようだ。

「あなたがたは、自分の財産を、担保にするんですか?」

あわてる木下を無視して、イセはいきおいづいて言った。

「もちろんです。私らは、ただ、自分の生活を楽にしたいた
めに、ここにきてるんじゃない。
未来の子どもたちのために、きてるんです。

この先、ずっと不健康な水を、子どもたちに飲ませるわけに
はいかない。
そのためなら、何を投げ出したって惜しくはないです!」

社長はだまりこんでしまった。

かたわらで、ずっと成り行きを見守っていた課長が、感極ま
ったように、口をひらいた。

「社長! 私も長年この会社につとめさせていただいてきま
したが、こんなに真剣な想いをぶつけてこられた事業者は、
はじめてです。どうか、引き受けてやってください」

社長は、めんくらったように、課長にたずねた。

「君は、このひとたちと、以前から知り合いだったのかね?」

課長は、首を横に振った。

「とんでもない。今回がはじめてです。
しかし、私は、このかたがたの気持ちに、感動しました。
こういうかたがたとこそ、一緒に仕事がしたい。

もし、会社がこの仕事をことわるというなら、私は辞表を出
します!」

イセたちもおどろいた。

好意的に、社長まで話をつなげてくれた課長ではあったが、
そこまで自分たちに気持ちを寄せてくれるとは、思ってもみ
なかったからだ。

そして、そこまで言われた社長も、こころを動かされずには
いられなかったようだ。

「…わかりました。
とにかく、申し訳ないが、私の一存でおこたえすることはで
きない。今日、緊急の役員会議をひらきます。

私としても、できるかぎりの対応はしますが、決めるのは役
員会です。明日、もう一度、きてください」

イセたちは、顔を見合わせた。先行きはまだわからないが、
一歩前進したのは、たしかである。

「どうか、よろしくお願いします!」

3人で、深々と頭を下げて、社長室を辞したのであった。

さて。この話にはつづきがある。

旅館にもどったとたん、木下が、たまりかねたように、イセ
にかみついた。

「中川さん、あんたは、なんてことを言い出すんだ! 社長
の前でなかったら、張り倒していたところだ」

イセは、ばつが悪そうな顔で、こたえた。

「だって、ああでも言わなきゃ、門前払いだったじゃないで
すか」

「そういう問題じゃない! 
そもそも、あんたの牧場の150頭の馬っていうのも、まわ
りの農家からあずかったものが大半だろう。

おれのうちの土地だって、全部、ほかの担保に入ってるんだ」

そう。実は、イセが言った牧場の馬も、木下の土地の話も、
まったくのうそではないが、半分ははったりだったのだ。

イセは、こたえた。

「そりゃ、木下さんまで巻き添えにして、申し訳なかったと
は思いますよ。でもそのおかげで、役員会議までもっていけ
たじゃありませんか」

それを聴いた助役も、イセに食ってかかった。

「それで、わかった、やりましょうって言われたらどうする
んだ! どうやって担保を払うんだ!」

そう言われて、イセも困ってしまった。何しろ、なんとか話
をつなぎとめたい一心での、思いつきだったからだ。

「いや、わたすだって、ああもすんなり、話が通るとは思っ
てもみなかったから…」

「ばかか、あんたは!」

すんでのところで、つかみあいのけんかになりそうになった
が、そのとき、宿のものが、部屋にやってきて言った。

「お客さまがいらしておりますが」

出てみると、なんと、日本鋼管の、あの課長であった。

「な、何か、忘れものでも、ありましたか?」

課長は、真顔で首を振った。

「いえ、今日のお礼にきたんです。

私、長年この仕事をしてまいりましたが、私利私欲でなく、
ここまで本気で、地域の未来を考えて、お仕事をされている
かたがたに、はじめて出会いました。感動しました!

もし、この契約がかなわなかったときには、私は、本当に、
会社をやめます! 
そのときは、どうか、網走で私を使ってください!」

そう言って、深々と頭を下げたのだ。

思いがけない展開に、イセたちは、目を白黒させて、お互い
の顔を見た。

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