2016年10月31日

物語版「零(zero)に立つ」第15章 米軍上陸?!(1)/通巻113話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


1941年暮れに開戦したのち、勝っていたのは最初のうちだ
けで、翌1942年夏には、もう連戦連敗におちいっていた。

国民のほとんどは、そんなことは知る由もなく、ただただ、「御
国のために」と、御旗をふり、家族を戦場に送り出したのだ。

1944年になると、網走でも、米軍上陸にそなえて、海岸線を
中心に、各地に、トーチカ(コンクリート製の防御陣地)が掘ら
れた。

それとて、男手はほとんどなくなっていたから、女や老人たちが
かりだされた。

1945年に入ると、海から離れた場所に、疎開をはじめるひと
もあらわれた。

そのころになると、おおっぴらには言わないものの、軍関係者を
中心に、日本の敗戦を予想するものは少なくなかった。

あるとき、出入りしていた陸軍師団に立ち寄った折、イセは、顔
見知りの将校に呼び止められた。

「これ、もっていきなさい。…勝てない戦争だから、死ぬときは
きれいにだよ」

小声で、ちいさな包みを、そっとわたされた。

その場ではたずねていけないような気がして、帰宅して開けてみ
ると、薬包紙のなかに、少量の白い粉末が入っていた。

(青酸カリだ…)

イセは直感した。

背筋がぞくっとしたが、そのまま、たんすの奥にしまい、誰にも
見せなかった。

愛馬婦人会の会長として、「外事軍曹」とまで言われていたイセ
である。

(女であっても、戦犯になるかもしれないな…)

あらためて、そう覚悟せざるを得なかった。

1945年7月14日・15日。米軍は、13機の航空母艦を引き
連れて、北海道にやってきた。

そこから、3000機の戦闘機を、北海道全土に飛ばした。

根室では、全家屋のうち7割が焼失。死者369名。
釧路でも、1618戸が焼失。死者192名。
室蘭は、2日間にわたる艦砲射撃で、436名が死亡。
函館では、すべての青函連絡船が損壊。死者350名。

計70の市町村で、2000名近い死者が出た。

網走も例外ではなく、15日の早朝、4機の戦闘機の襲来に
より、機銃掃射を受け、14名が死亡した。

それにより、町は、上を下への大混乱となった。

「米軍が、いまにも、浜から上陸してくるぞ!」
「男は奴隷にされて、こき使われるって!」
「女は襲われないように、顔を汚してかくれろ!」

流言蜚語がとびかい、誰もが冷静さをうしなった。

しかも、頼りとなるべき兵隊たちは、隊ごと、いつのまにか
どこかに移動してしまっていた。、

生まれたばかりの、愛子の赤ん坊が、火のついたように泣く。

「母さん、どうしよう。どうしたらいいの?」

「落ち着くんだ。絶対に、おまえは、赤ん坊を守るんだよ。
大丈夫。おまえたちに指一本だってふれさせるもんか」

イセのことばに、愛子青ざめたまま、うなずく。

町に、ようすを確認するために出ていた卓治が、やせ馬に鞭
打って、もどってきた。

「イセ、招集だ。国防婦人会、愛馬婦人会の幹部は、町長の
公宅に集まれと! 俺は、これから、組合員の状況を確認し
に、もう一度まわってくる!」

いつもはおだやかな表情を絶やさない卓治も、このときばか
りは、こわばった顔つきだ。

「わかった! 宗治! 愛子! 留守宅を頼んだよ!」

イセも、軍馬として徴用されずに残った馬に飛び乗り、町
長公宅に向かった。

町のそこかしこに、きなくさい匂いがたちこめていた。

イセは、たずなをしっかりとにぎり直すと、さらに馬の速度
をあげた。


------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら 
------------------------------------------------
---------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------


夢実子の語り劇を上演してみませんか?



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1031222.jpg
「海釣り」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供

posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:19| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月30日

「掌編・中川イセ物語」は、「武勇伝」編です。

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

土日祝日は、連載はお休みさせていただいています。

これまでのあらすじ


いつもご愛読ありがとうございます

「掌編・中川イセ物語」は、本編「零(zero)に立つ」に盛り込
みきれなかったエピソードを、盛り込んだ内容です。

…というご紹介をしたところ、「どんな内容なんですか?」
というおたずねを、いただきました。

たしかに、内容がわからないと、興味も湧きにくいですよね。

本編「零(zero)に立つ」は、サブタイトルにあるとおり、ま
さに「激動の一世紀を生きた中川イセの物語」なのですが、

この「掌編」のほうは、イセさんの「武勇伝」編なんです。

物語版「零(zero)に立つ」の連載をお読みいただいているか
たは、ご存じでしょうが、イセさんは、武術の達人です。

とくに、柔道。一本背負いが大得意。

そして、イセさんのなみなみならぬ、「弱い立場のものを守
りたい」という気持ち。

このふたつが合わさると、権力をかさにきたり、暴力で相手
をねじふせようとするものを、やっつけちゃう!という、実
に爽快なお話になるわけです。

しかも、当然ながら、実際にあったお話なんです。

連載でも、女性のかたから、「かっこいい!」「ほれる!」な
んて感想をいただいたりしました♪

これを、夢実子さんが、臨場感たっぷりに語るわけです。

現代では、この時代(戦前)のような、遊廓はなくなりました。

でも、ちから(実際の腕力でも権力でも)の強いものが、弱い
ものを蹂躙するようなできごとは、たくさんあります。

ごらんいただくお客さまは、無意識のうちに、そのような現
状を重ね合わせておられるのではないでしょうか。

イセさんの痛快なありかたに、あこがれをいだかれるかたも、
いらっしゃるでしょう。

負けない。けっしてあきらめない。

そんな気持ちを揺さぶられたいかた、ぜひ、会場に足をお運
びください。

お待ちしています!

おもて面.JPG うら面.JPG

この「武勇伝」(笑)が、ナマの語りで聴けますよ〜
                

------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら 
------------------------------------------------
---------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------


夢実子の語り劇を上演してみませんか?



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1030221.jpg
「カヌー体験」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 10:10| Comment(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月29日

これまでのあらすじ/語り劇「掌編・中川イセ物語」の魅力について

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

土日祝日は、連載はお休みさせていただいています。


これまでのあらすじ

★第1章★ いせよ誕生
明治34年(1901年)、今野安蔵・サダの娘、いせよ(のちの中川イセ)
誕生。サダは、産後の肥立ちが悪く、死を予感。ヤクザものの安蔵にあとを
託すことを怖れ、佐藤コウに里親を頼むと、その年のうちに亡くなった。
    

★第2章★ 差別と貧しさのなかで
イセは佐藤家の里子になった。佐藤家は貧しく、イセはまわりからいじめられ
たり、差別を受けたりするが、コウの愛情、親友・渡辺みよしの存在、自身の
負けず嫌いの性格で、それらをはね返して成長していく。
     10 11 12 13 14 

★第3章★ はじめての家出
10歳で実家に連れもどされイセは、学校にも行けず、仕事に明け暮れる。
11歳の夏、モヨとの口論から、初めての家出。山形の船山先生夫妻の
家で住み込みの女中をし、かわいがられるも、翌春、船山先生に満州へ
の転勤辞令が出て、再び実家にもどることになる。
15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25

★第4章★ イセの初恋
またまた家出し、米沢の寮づきの織物工場ではたらく。仲間もできて楽し
い日々。そんな中、隣に住む名家の次男坊・戸田茂雄との初恋も体験。し
かし、安蔵にイセの居場所を知られたことで、イセは実家に帰ることに…。
26 27 28 29 30 31 

★第5章★ 女優志願
実家にいる間、地域巡演で山形にきた松井須磨子(実はにせもの)にあこが
れ、家出して上京する。しかし、たずねた帝国劇場に須磨子はおらず、い
くつかの仕事を転々とするが、結局あきらめて山形にもどることになる。
32 33 34 35 36 37 

★第6章★ 運命の歯車
人絹工場、機織り工場などではたらくうち、かつて実家に出入りしていた
芸人・八重松と再会。乱暴されて子どもを身ごもり、17歳で娘・愛子を
出産。その後、北海道の遊廓への話をもちかけられ、悩んだ末、イセは3
年で500円の借金をし、そのお金で愛子を里子に出すことにする。
38 39 40 41 42 43 44 

★第7章★ 網走まで
大正7年暮れ、イセは北海道に旅立った。ところが途中で虫垂炎から腹
膜炎をおこし、到着した旭川で即入院。借金が倍の1000円となり、
網走の遊廓に売られることに。駅前の島田食堂の夫婦にかわいがられる。
45 46 47 48 49 

★第8章★「お職」になる!
自転車を借りて町内を乗り回したり、柔道場に通ったりしたイセだが、娼
妓になると今度は、囲碁や将棋をおぼえ、お客を楽しませる工夫をした。
また酒に強く、何度も杯を重ね、そこから収益をあげることも考えた。
51 52 53 54 55 56 57 58 59

★第9章★「小梅」の死
イセは、娼妓に乱暴した客を一本背負いで投げ飛ばすなどで、娼妓たちの
信頼を勝ち得ていった。しかし一方で、妹ぶんの「小梅」が、失恋を苦に
自死。小梅の死をきっかけに、娼妓みんなでちからをあわせることを誓う。
60 61 62 63 64 65 66 

★第10章★中川卓治という男
イセは、柔道場で出会った中川卓治と親しくなり、急速に気持ちが近づい
ていく。卓治の妹・タマは、2人の交際をはげしく反対するが、卓治はイ
セに求婚し、イセは身請けされて、ついに遊廓を出る。
67 68 69 70 71 

★第11章★樺太にて
中川家よりもイセを選んだ卓治。2人は樺太にわたり、仕事を見つけて
はたらき、暮らしを立てた。卓治は、酒がもとでけんかをして大けがを
したりもするが、ついに茂市の許しが出て、網走に帰れることになる。
72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 

★第12章★岬の日々
網走の能取岬にある中川牧場の管理をまかされたイセたち。その雄大な
景色にイセは魅了される。乗馬も覚え、少しずつ馬との暮らしに親しみ、冬
になれば、流氷の美しさに見とれる。平和な日々がすぎていく。
85 86 87 88 89 90 

★第13章★茂市の死
卓治の父・茂市が、娘婿・東条貞の選挙資金調達で14万円の借金を残
して死去。イセと卓治はその借金を引き受ける。拓銀に50年割賦(ロー
ン)を頼むため、イセは札幌本店に出向き、交渉を成立させる。
91 92 93 94 95 96 97 98 99

★第14章★戦況のなかで(2016.10.28ぶんまで)
借金返済のため、卓治とイセは、牧場経営だけでなく、馬喰として馬の
売買にもかかわる。また、念願の愛子をひきとり、やがて、調教師にす
るべく養子にした清と、結婚させる。しかし、幸せのさなかにも、戦争の
影は刻一刻とせまり、清は、海軍に招集され、戦死する…。
100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 
111 112


いつもご愛読ありがとうございます

語り劇「掌編・中川イセ物語」の魅力について

脚本家が、自分の作品の魅力について語る…というのは、
少々おこがましい気がするのだけれど、それができてしま
う理由があります。

それは、この作品が、私の作品であって、私の作品ではな
いからです。

「零(zero)に立つ」もそうなのですが、脚本を書いている
とき、自分が書いているのではなく、イセさんに書かされ
ているという気持ちになることが、しばしばありました。

もとより、史実にもとづく作品というのは、作家の自由に
はなりません。

時代考証も必要ですし、まして近年のひとであれば、子孫
のかたもいらっしゃるので、おいそれと適当なことは書け
ません。

「零(zero)に立つ」は、もともと、山谷一郎さんの「岬を駈け
る女」を主要資料とさせていただいていますので、流れは
先にできあがっていました。

だから、その意味ではゼロからの創作ではなく、ずいぶん
気持ちは楽だったのですが、それでも、苦労はありました。

103歳で脳梗塞で倒れるまで、現役だったイセさんには、
エピソードがありすぎるのです。

複数のひとが登場する劇ではありません。まして、「語り」
がメインですから、動きまわるわけでもありません。

企画段階で、「上演時間は、1時間ちょっと。できれば1時
間15分くらい」という合意ができていました。

それが、演者にとっても、お客さんにとっても、ベストの
時間だろうというのが、結論だったのです。

が、そのために、削ったエピソードの数々…。

夢実子さんが、今年1月の、アポックシアターでの「ひとり
芝居フェスティバル」に出演することが決まったとき、演目
をどうしようという話になりました。

ひとりの持ち時間は60分。75分かかる「零(zero)に立つ」
は、もともと無理。

これまでやってきた、語り劇「真知子」なら25分でおさま
るので、あと1本、30分くらいの作品はないだろうか?

という話になったとき、前々から構想していた、「零(zero)に
立つ」に載せられなかった、エピソード編の話が再浮上した
のです。

異論はありませんでした。

もともと書きたかったので、書き始めて、脱稿までは早かっ
たです。

載せられなかったエピソードのうち、「武勇伝」を集めたみ
たいな作品になりました。

とにかく、痛快! 豪快! 気分爽快!(笑)

演じる夢実子さんも、思わず、ノリノリ。

そうして、1月28日の初演の幕をあげることができたのでし
た。(おかげさまで、好評でした!)

その後、ぱたぱたと、山形県内数か所で、上演の依頼があり、
さらにブラッシュアップ。

8月27日の、山形市・シベールアリーナでの本編「零(zero)
に立つ」があった関係で、小休止していましたが、このたび、
札幌で再々々々…演!

ぜひぜひぜひ、ごらんくださいね。

「札幌は遠すぎる〜」というかたは、ぜひ、札幌周辺のお知
り合いに、おすすめしてくださいませ。

お客さまの感想で、「本編(「零(zero)に立つ」)では、生きる
ことの重厚さに感動したが、「掌編」のほうは、イセさんの人間
味が伝わってきて、それぞれにちがう感動があった」そう。

脚本家冥利、役者冥利に尽きるおことばですね。


この「武勇伝」(笑)が、ナマの語りで聴けますよ〜
                

------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら 
------------------------------------------------
---------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------


夢実子の語り劇を上演してみませんか?



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1029220.jpg
「カヌー体験」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 21:11| Comment(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月28日

物語版「零(zero)に立つ」第14章 戦況のなかで(13)/通巻112話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


愛子の妊娠がわかり、よろこびに湧いていた中川家に、一通
の通知が届いた。

海軍への召集令状。いわゆる「赤紙」である。宛て名は、清
であった。

よろこびは、一気に、かなしみへと変わった。

けれども、見送るものは、涙を流すことはゆるされない。

「この子と一緒に、ご無事を祈っています」

愛子は、芽生えたばかりのいのちをかかえるように、おなか
に、そっと手をそえて言った。

「日本は神風の国だもの。負けやしないさ」

清は、愛子とイセたちに、ちからづよく敬礼をして、旅立っ
ていった。

1943年に入ると、戦況は刻一刻ときびしさをましていた。

卓治もイセも、軍馬をあつかう関係上、軍の人間とかかわる
機会が、しばしばあった。

開戦当時は、威勢のいいことばを発していた軍人たちが、そ
うしたことばを口にしなくなっていく。

戦況のきびしさは、ことばに出さずとも伝わってくるものが
あった。

また、当時、すでに衆議院議員になっていた、東条貞(卓治
の妹・タマの夫)が帰郷する折、話をもれ聴く機会もあった。

東条は、翼賛政治会・大日本政治会に所属していたので、上
層部の情報に通じていた。

もちろん、軍事機密を簡単に話してくれるはずもなかったが、
イセは、ことばの端々や、地元の支援者たちとのやりとりか
ら、その様子を察知した。

清の戦死が伝えられたのは、愛子が臨月に入ろうとするとき
であった。

B4判の薄い和紙に「死亡告知書(公報)」と書かれたそれ
には、「中川清」の名前、所属、死亡した地名などが書かれ
てあった。

そして、「英霊に就ての御知らせ」という、はがき大のちい
さな紙がそえられ、「死亡賜金」のことなどが書かれていた。

「清…、なんで死んだ…、生まれてくる子の顔も見ないで…」

戦死公報をにぎりしめ、イセは、必死に涙をこらえた。

当時は、戦争で亡くなったものは「英霊」としてたたえられ、
けっして、泣いたり悲しんだりしてはいけなかったのである。

イセも、人前では涙をこらえた。

けれども、養子とはいえ、かわいがって育てた子どもが死ん
で、かなしくない親がいるだろうか。

何よりも、残された愛子が不憫であった。

「子どものためにも、生きるんだ。絶対に、変な気を起こす
んじゃないよ」

ひとには聴かれぬよう、イセは、愛子をはげました。

立場はちがえど、大切なひとを想って悼む気持ちは、ふたり
一緒だった。

もしかしたら、このときようやく、イセと愛子の、埋めがたか
った溝が埋まったといえるのかもしれない。

ちなみに、この年の5月、アッツ島の戦いで、日本軍2638
名が、いのちを落とした。

生き残ったものわずか28名という、凄惨な戦いであった。

そのほとんどが、北海道から出征していったものたちだった。

それまでは、対岸の火事のような想いでいた北海道民も、い
よいよ、戦争が身にせまるものを感じたのである。

こうして、日本は、しりぞくことを選ばぬまま、各地で、たく
さんの尊いいのちを散らしていった。

第2次世界大戦での日本の戦没者数は、310万人といわれ
ている。

また、戦争末期ともなると、軍馬の数も、思うようにそろわ
なくなってきた。

ついに、イセがかわいがって、いつも乗っていた「初梅」が、
買い上げられることになる。

「初梅を戦地に? いやだ…」

しかし、そんなことを口にすれば、イセだけでなく、家族や
馬喰組合の仲間すべてが、処罰の対象になりかねない。

「初梅…」

イセは、涙をこらえて、最後の手入れを、それはていねいに
おこなった。

引かれていくとき、初梅が、ひと声おおきく、いなないた。
その目からは、涙が伝っていた。

(初梅…、おまえ…)

馬はかしこい生きものである。初梅は察知していたのである。
これがイセとの最期の別れであると…。

初梅の、その涙を、イセは、一生忘れることはできなかった。


------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら 
------------------------------------------------
---------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------


夢実子の語り劇を上演してみませんか?



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1024209.jpg
「乗馬体験」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供

posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 05:53| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月27日

物語版「零(zero)に立つ」第14章 戦況のなかで(12)/通巻111話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


ときは前後するが、1941年12月、日本は、真珠湾を攻撃。

翌1942年1月にはマニラを占領、2月にはシンガボール占
領、そして、3月にはジャワ島を占領…と、破竹のいきおいで
進撃をつづけた。

けれども、日本の勝利はそこまでだった。

1942年6月、ミッドウェイ海戦において、空母4隻をうし
ない、また、3000名以上の兵士がいのちを落とす。

そこから先は、撤退の一途を強いられるのだが、軍部に牛耳
られていたマスコミは、連戦連勝のごとき報道しか流さない。

ましてや、軍港もない網走は、さほどさしせまった危機感な
ど、感じることのなく、いまだ戦争景気に酔いしれていた。

このころ、卓治は、牛馬商組合・畜産組合の責任者として、外
に出る機会がふえた。

そこは、ほとんど男ばかりの仕事ゆえ、酒はつきものである。

しばらくなりをひそめていた、酒ぐせの悪さが再燃するよう
になっていた。

それと同時に、羽振りがよさそうに見える卓治に、目をつけ
る女もあらわれた。行きつけの料亭の芸者であった。

せまい町のこと、イセの耳にも自然とそのうわさは入ってきた。

しかし、イセは卓治を問い詰めることもなく、つとめて平静
をたもっていた。

ところが、ある夜のこと。

「おい、イセ、いま、帰ったぞ」

卓治がいつものように、したたかに酔って、車に乗せられ
帰ってきた。

こんなとき、イセは、「お疲れさまです。お世話をかけまし
て」と、何がしかの心付けをいれた祝儀袋をわたすのが常
であった。

けれども、この夜、車のなかに、卓治とうわさのある芸者の
姿を見たとき、イセの胸のなかに押し込められていた想い
が、ボッと音を立てて燃え上がった。

「あら、せっかく送っていただいたのに、いまはあいにくと
手元にお金がなくて、ごめんなさい」

そう言って、そっけなく、そのまま帰してしまったのだ。

けれども、そのあとが大変であった。

「わずかばかりの金で、男の顔さ泥ばぬりやがって!」

酔った卓治が、太い腕を振り上げて、イセにかかってきた
のだ。

ふだんの温厚な卓治なら、こんなことは、けっしてしない。

だから、イセも、これまでは、黙って耐えるか、うまく身
をかわして逃げてきた。

だが、この日のイセはちがった。きっ!と卓治をにらみつ
けると、どこからでもこいと身がまえたのだ。

その姿勢を見た卓治が、一瞬とまどい、動きが止まった。

イセはそのすきをのがさず、卓治の腕をとるや、ふところに
飛び込み、もたれかかる巨体の勢いを借りて、得意の一本
背負いをかけた。

どっすーーーーん。

卓治は大きな円を描いてすっ飛び、ものすごい音を立てて、
土間にたたきつけられた。

イセの動きはそこで止まらない。

駆け寄って卓治に飛びつくや、太い首に腕をまわし、全身の
力をこめて締め技に入る。

卓治の顔が紫色に変わっていく。そのうち、からだからちか
らが抜けて、くったりとのびてしまった。

イセは、しばらく肩で大きな息をついていたが、気持ちが落
ち着いてくるにしたがい、事の重大さに気がついた。

「あんた! あんた! 起きて! 起きてちょうだい。ねぇ、
目を覚まして!」

ほおをぺたぺたたたいたり、抱き起こして背骨にひざをあて、
後ろに反らせて活を入れるまねごとをしてみたが、まったく
反応がない。

「このまま息を吹き返さなかったら…」

イセが、仏壇のご先祖様にもすがりたい気持ちになったとき、
卓治が「うーん」とうなって起き上がった。

おおきな目をぎょろりと開いて、不思議そうにあたりをなが
めている。何が起きたか、まだ把握できていないようだ。

イセは、急に全身の力がぬけた。

「あんた! 生きてた! よかった!」

そうして、おいおいと、大声で泣きだしてしまった。

卓治がことの次第を理解するのは、翌朝、酔いから醒めた
あとのことである。

けれども、この一件がよほどこたえたのか、以後、卓治は、
酔って暴力をふるうことはなくなったという。


この「武勇伝」(笑)が、ナマの語りで聴けますよ〜
                

------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら 
------------------------------------------------
---------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------


夢実子の語り劇を上演してみませんか?



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1027218.jpg
「乗馬体験」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 05:41| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月26日

物語版「零(zero)に立つ」第14章 戦況のなかで(11)/通巻110話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


しかし、イセたちが過ごしたこの時代は、また、15年戦争
の時代とぴたりと一致している。すなわち、

満州事変 1931年
日中戦争 1937年
太平洋戦争 1941年

これらは、相互に不可分の関係にある、ひとつづきの戦争と
して、「15年戦争」と呼ばれるのである。

(戦争状態がつづいたという意味で、ひとつの戦争という意
味ではない)

それは、1945年の第2次世界大戦終結までつづく。

同時に、戦況が悪化する1942年までは、この一連の戦争
によって、日本は戦争景気にわいた。

この時代がなければ、イセたちは、あの巨額の借金を返すこ
とができていただろうか。

(少なくとも別の方法を嵩じる必要があっただろう)

いずれにしても、このかんの記録は、ほとんど残されていない。

時代のうずに巻きこまれ、日々を忙しく、また楽しくはたら
き、10年という年月が、あっというまに過ぎていくのである。

イセは、愛馬婦人会の会長として、100名をこす会員をまと
めた。

国防婦人会の活動にもかかわった。

女ながらに「軍曹待遇」という呼称もあたえられ、馬をつらね
て、師団の慰問などにでかけていったりもした。

卓治は、牛馬商(馬喰)組合や畜産組合の会長として、網走
地方を一手にまとめた。

中川牧場の経営は、ほとんど、息子の卓治がになうようにな
っていった。

養子にした清も、調教師として成長し、中川牧場の支え手と
なった。

もちろん、その時間は、イセと愛子のあいだをも、次第にや
わらかなものにしていった。

ぎこちなさはあったものの、愛子は、イセを「母さん」と呼ぶ
ようになり、家での仕事を手伝った。

のちになって、愛子は、

「正直、はじめのころは、これが本当に、血のつながった母
親なのかとうたがったわ」

と笑って話すのだが、それが笑い話として話せるようになっ
ていった、ということでもある。

記録には残っていないが、おそらく、このかん、卓治の母親
も、静かに、あの世に旅立っていると思われる。

(イセより11歳年上の卓治は、1941年当時、51歳になっ
ていたはずだから、その母親は、70歳以上。当時の平均寿
命を越している)

1941年4月、東京で開催された、興亜馬事大会で、イセは、
愛馬婦人会会長として、国策に貢献したとして、表彰された。

イセの乗馬姿が全国紙に載り、もちろん、網走じゅうの評判
にもなった。

そんなさなかに、さらに、うれしいことがあった。

清と愛子のあいだに、恋が芽生えたのである。

もともと同い年の2人は、ともに暮らすなかで、少しずつこ
ころの距離をちぢめていった。

清もまた、この家では新参者であったから、愛子とは、気持
ちが通ずるところもあったのかもしれない。

清は、中川家の養子ではあるが、愛子は引き取ったとはいえ、
中川家の「養女」にしたわけではない。

2人が一緒になることは、血のつながりのうえでも、形式的
にも、なんの問題もないのであった。

いや、しいていえば、愛子の父親は、地方のしがない芸人で
ある。かつてなら、親戚筋が文句を言ったかもしれないが、

愛馬婦人会での活躍で、最近では、中川家の親戚たちも、お
もてだって、イセの批判をすることもなくなっていた。

愛子が、中川家にやってきて、10年。

1942年、24歳になった2人は、祝言をあげた。そして、その
年のうちに、愛子は身ごもることになる。

海の向こうでは、戦況は悪化しはじめていたが、北の果ての
網走では、まだそれをさほど感じることはない。

ひとときの幸せが、中川家をつつんでいたのである。


------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら 
------------------------------------------------
---------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------


夢実子の語り劇を上演してみませんか?



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1026217.jpg
「チューブボブスレー オホーツク流氷館(旧)」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 05:55| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月25日

物語版「零(zero)に立つ」第14章 戦況のなかで(10)/通巻109話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


そんな一件がありつつも、中川家は、ついに、あたらしい家
族をむかえた。

愛子である。

「帰ったぞ」

卓治の声に、イセは玄関先に飛び出した。

14年ぶりに会うわが子が、目の前に立っていた。

「さあ、今日からここが、我が家だ。遠慮はいらん」

卓治が、愛子の肩をぽんぽんとたたいた。愛子が、はにかみ
ながら、うなずく。

そのようすを、イセは、不思議な気持ちで見ていた。

あれほど待ち焦がれていた愛子を目の前にして、なぜか、
どうにも実感がわかないのである。

うれしいというよりも、戸惑いの気持ちのほうが、イセの胸
にうずをまく。

数えで15の愛子は、もう立派な娘ざかりである。

けれども、実の母でありながら、ここまでおおきくなるまでの
姿を、自分は何一つ見ていない。

どんな体験をし、どんな想いで生きてきたか、まるで赤の他
人のように、何ひとつ知らないのだ。

愛子もまた、はじめて会うイセを、すぐに「お母さん」と呼ぶ
ことができずにいた。

14年間、自分を育ててくれた五十嵐家のほうが、愛子にとっ
ては、本当の家族のように思えていたのだから。

それでも、じっくりと時間をとって、これまでのいきさつを聴
けば、少しは、その空白も埋められるかもしれない。

けれども、イセはそうしなかった。

家族にあいさつをさせ、部屋に荷物を置かせると、すぐに台
所に立つように言ったのだ。

「イセさん、いま着いたばかりなんだから、まずはゆっくり、
休ませてあげたら…」

さすがに見かねて、卓治の母までが言ったほどだ。けれども、
イセは、首を振った。

「いいえ、最初がかんじんですから。愛子、五十嵐の家で、
手伝いは、ちゃんとやっていたかい?」

「はい」

愛子も、緊張した気持ちのまま、ちいさな声でうなずく。

言われるまま、まるで、親戚の家にでも来たかのように、台
所に立ったのである。

その夜、皆が寝静まったあと、卓治とイセは、ストーブを囲
んで、茶をすすった。

「あんた、無事に愛子を連れてきてくれて、ありがとうね」

イセは、卓治に頭を下げた。卓治は言った。

「そのことだけんど、イセよ、おまえ、愛子にきびしすぎる
んでないか。今日くらい、何もせんで休ませてやってもよか
ったろう」

イセは、茶を飲む手を止めて、じっとうつむいていたが、や
がて、ぽつりと、ひとりごとのように言った。

「わたすだって、愛子が来てくれて、うれしいよ。だけど、
これから一緒に暮らしていくのに、ここで甘やかしてしまっ
たら、清や宗ちゃんにしめしがつかないと思うの」

「イセ…、そんなことは…」

卓治は、言いかけて、思わずことばを止めた。

イセは、愛子が加わることで、ここまで築き上げてきた中川
家の調和がくずれることを、何よりもおそれたのである。

それは、本当の家族と暮らすことなく、生きてきたイセの、
不器用さであったかもしれない。

「実の子だもの、愛子はきっとわかってくれる…」

自分に言い聴かせるように、ひとりごつイセを、卓治は、じ
っと見つめているしかないのだった。


------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら 
------------------------------------------------
---------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------


夢実子の語り劇を上演してみませんか?


網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1025210.jpg
「北の新大陸発見!あったか網走」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:48| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月24日

物語版「零(zero)に立つ」第14章 戦況のなかで(9)/通巻108話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら



山岡は、風のうわさで、父親と親交のあった、中川茂市が死
んだこと、その借金を、息子夫婦が引き受けたことを知った。

そのとき、自分の家にあった、一枚の借金証書のことを思い
出したのだ。

死んだ父親の遺品を整理しているときに、見つけたものだ。

もう10年以上経って、効力は消失している。捨てるしかな
いと想っていた矢先に、そのうわさを聴きつけた。

これはひと芝居打てば、金になる。そう踏んで、わざわざこ
こまでやってきたのに、とんだ眼鏡ちがいである。

ここで、下手に、詐欺だ、おどしだと騒がれてはたまらない。

そう判断した山岡は、次の瞬間、ひとが変わったようにぺこ
ぺこしはじめた。

「あ、いや、奥さん、失礼しました。実はちょっとばかり、金
が入り用なところへ、この証文が出てきたもんですから。ええ、
東京へ帰ったら、一か月以内に返済します」

イセは、表情を変えずに、山岡をまっすぐに見ている。
山岡は、さらに、追従笑いを浮かべて、杯をさしだした。

「まあ、お気持ちを直して。ここは私がおごりますから…」

イセは、むしずが走る思いがしてつっかえそうとしたが、
ふと頭にひらめくものがあった。

「山岡さん、杯でちびちびではなんですから、コップでいた
だきませんか」

そう言って、山岡に酒をつがせると、そのコップの酒を、一
気に飲み干した。

イセは、遊廓時代から、めっぽう酒が強いのだ。一升飲ん
でも酔わなかったほどだった。

それは、三十路を超えたいまも、おとろえることはない。

山岡もいける口だが、すでに下地ができあがっている。

しかも、「なんとかこの場をごまかせる」と安心して、いき
おいよくコップ酒をあおったものだから、急速に酔いがまわ
っていく。

たまたま、そこにいた芸者のひとりが、イセの遊廓時代の顔
なじみだった。

山岡が、足をふらつかせながら、手洗いに立ったすきに、イ
セは、その芸者に、すっと近寄った。

「米吉さん、ごぶさたしてました。ちょっと頼まれてほしい
んだけど…」

「姐さん、お久しぶりです。ええ、なんなりと」

イセは、耳元で、そっと何事かをささやいた。それを聴いた
米吉が、承知したとばかりにうなずき、にっこり笑う。

やがて、山岡が厠からもどってきた。米吉は、その山岡に誘
いをかけた。

「お客さま、このあたりで河岸を替えて、ゆっくりとおやり
になってはいかがですか」

山岡は、いきおいよくそれを受けた。

「よかろう。席を変えて飲み比べといきましょう」

しかし、ことばは威勢がいいが、すでに山岡は、ひとりでは
立てぬほどに酔っている。

その山岡の腕をかかえるようにして、米吉が案内した先は、
網走一の料亭だった。

山岡のふところには、先ほど、イセからむしりとるようにし
た300円が入っている。

そのことは、すでに米吉がやった使いをとおして、店に伝わっ
ている。

料亭では、10人の芸者が繰り出して、山岡を待ち受け、鳴り
物入りの大宴会となった。

3日後。

料亭の女将が、菓子折りをもって、イセをたずねてきた。

「このたびは、粋なお計らい、ありがとうございます」

あのとき、イセは、米吉にこうささやいたのだ。

「こういうやつは、少しこらしめてやったほうがいいんだ。
帰りの汽車賃くらいだけ残して、あとはしぼりとっておやん
なさい」

山岡は、10人の芸者に囲まれて、さんざん飲み食いし、遊
びほうけたあげく、さしだされた勘定書きを見て顔色を変え
たそうだ。

そして、かろうじて残った金で、しょんぼりと帰っていった
という。

それを聴いて、イセはすましてこたえた。

「料亭にお金をおとすために、わざわざ北海道までくるなん
て、山岡さんも酔狂なおひとだね。あっはっは」

のちに、網走市市議会議員となったイセは、女性の人権を
踏みにじるものたちに、とくにきびしく対処したという。

その片鱗は、すでに、こんなところにもあらわれていたの
かもしれない。


>-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! 
---------------------------------------------
--------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
--------------------------------------------------------------------


夢実子の語り劇を上演してみませんか?


網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1024209.jpg
「北の新大陸発見!あったか網走」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 06:20| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月23日

夢実子さんの熱い語り★かめおかメルマガ13周年記念イベントより

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

土日祝日は、連載はお休みさせていただいています。

これまでのあらすじ


いつもご愛読ありがとうございます

昨日は、かめおかのメルマガ13周年記念イベント
「いのちの使いかた」でした。

P_20161022_134220_1.jpg

夢実子さんにゲスト出演していただいて、「中川イセのあきらめ
ない精神」を語っていただきました。

P_20161022_135933_1.jpg

いつもながら、話をしている内に、どんどん熱を帯び、参加され
たみなさんの気持ちを引き込んでいきました。

来年、首都圏公演をめざしています、というくだりになると、
みなさん、もう、すっかり「応援します!」「協力します!」という
雰囲気に♪

終わってからの懇親会も、遅くまでもりあがりました!

参加いただいたみなさんに、こころからの感謝!


また、イベントの前に、夢実子さんと2人で、ランチ・ミーティング。

「零(zero)に立つ」首都圏公演に向けての準備をどうすすめてい
くか、おおもとの話をしました。

まだ、日程も会場も決まっていませんが、準備しなければいけない
ことは、たくさんあります。

いま、一番必要なのは、核になって一緒に動いてくれるひとです。

それも、制作の経験のあるひとが必要です。

また、それ以外にも、さまざまなかたちでサポートしてくれるひ
とを募集しています。


これをお読みいただき、興味がある!と想っていただけるかたは、
ぜひ、お声をかけてくださいね。

お待ちしています!


-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! 
---------------------------------------------

---------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------


夢実子の語り劇を上演してみませんか?


網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1022206.jpg
「北の新大陸発見!あったか網走」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 17:16| Comment(0) | 報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月22日

これまでのあらすじ/第2巻を出したいのです!

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

土日祝日は、連載はお休みさせていただいています。


これまでのあらすじ

★第1章★ いせよ誕生
明治34年(1901年)、今野安蔵・サダの娘、いせよ(のちの中川イセ)
誕生。サダは、産後の肥立ちが悪く、死を予感。ヤクザものの安蔵にあとを
託すことを怖れ、佐藤コウに里親を頼むと、その年のうちに亡くなった。
    

★第2章★ 差別と貧しさのなかで
イセは佐藤家の里子になった。佐藤家は貧しく、イセはまわりからいじめられ
たり、差別を受けたりするが、コウの愛情、親友・渡辺みよしの存在、自身の
負けず嫌いの性格で、それらをはね返して成長していく。
     10 11 12 13 14 

★第3章★ はじめての家出
10歳で実家に連れもどされイセは、学校にも行けず、仕事に明け暮れる。
11歳の夏、モヨとの口論から、初めての家出。山形の船山先生夫妻の
家で住み込みの女中をし、かわいがられるも、翌春、船山先生に満州へ
の転勤辞令が出て、再び実家にもどることになる。
15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25

★第4章★ イセの初恋
またまた家出し、米沢の寮づきの織物工場ではたらく。仲間もできて楽し
い日々。そんな中、隣に住む名家の次男坊・戸田茂雄との初恋も体験。し
かし、安蔵にイセの居場所を知られたことで、イセは実家に帰ることに…。
26 27 28 29 30 31 

★第5章★ 女優志願
実家にいる間、地域巡演で山形にきた松井須磨子(実はにせもの)にあこが
れ、家出して上京する。しかし、たずねた帝国劇場に須磨子はおらず、い
くつかの仕事を転々とするが、結局あきらめて山形にもどることになる。
32 33 34 35 36 37 

★第6章★ 運命の歯車
人絹工場、機織り工場などではたらくうち、かつて実家に出入りしていた
芸人・八重松と再会。乱暴されて子どもを身ごもり、17歳で娘・愛子を
出産。その後、北海道の遊廓への話をもちかけられ、悩んだ末、イセは3
年で500円の借金をし、そのお金で愛子を里子に出すことにする。
38 39 40 41 42 43 44 

★第7章★ 網走まで
大正7年暮れ、イセは北海道に旅立った。ところが途中で虫垂炎から腹
膜炎をおこし、到着した旭川で即入院。借金が倍の1000円となり、
網走の遊廓に売られることに。駅前の島田食堂の夫婦にかわいがられる。
45 46 47 48 49 

★第8章★「お職」になる!
自転車を借りて町内を乗り回したり、柔道場に通ったりしたイセだが、娼
妓になると今度は、囲碁や将棋をおぼえ、お客を楽しませる工夫をした。
また酒に強く、何度も杯を重ね、そこから収益をあげることも考えた。
51 52 53 54 55 56 57 58 59

★第9章★「小梅」の死
イセは、娼妓に乱暴した客を一本背負いで投げ飛ばすなどで、娼妓たちの
信頼を勝ち得ていった。しかし一方で、妹ぶんの「小梅」が、失恋を苦に
自死。小梅の死をきっかけに、娼妓みんなでちからをあわせることを誓う。
60 61 62 63 64 65 66 

★第10章★中川卓治という男
イセは、柔道場で出会った中川卓治と親しくなり、急速に気持ちが近づい
ていく。卓治の妹・タマは、2人の交際をはげしく反対するが、卓治はイ
セに求婚し、イセは身請けされて、ついに遊廓を出る。
67 68 69 70 71 

★第11章★樺太にて
中川家よりもイセを選んだ卓治。2人は樺太にわたり、仕事を見つけて
はたらき、暮らしを立てた。卓治は、酒がもとでけんかをして大けがを
したりもするが、ついに茂市の許しが出て、網走に帰れることになる。
72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 

★第12章★岬の日々
網走の能取岬にある中川牧場の管理をまかされたイセたち。その雄大な
景色にイセは魅了される。乗馬も覚え、少しずつ馬との暮らしに親しみ、冬
になれば、流氷の美しさに見とれる。平和な日々がすぎていく。
85 86 87 88 89 90 

★第13章★茂市の死
卓治の父・茂市が、娘婿・東条貞の選挙資金調達で14万円の借金を残
して死去。イセと卓治はその借金を引き受ける。拓銀に50年割賦(ロー
ン)を頼むため、イセは札幌本店に出向き、交渉を成立させる。
91 92 93 94 95 96 97 98 99

★第14章★戦況のなかで(2016.10.21ぶんまで)
借金返済のため、卓治とイセは、牧場経営だけでなく、馬喰として馬の
売買にもかかわり、良心的なイセの仕事は、評判を呼ぶ。昭和7年、つ
いに2人は愛子を引き取ることにし、卓治がむかえにいくが、その間…。
100 101 102 103 104 105 106 107


いつもご愛読ありがとうございます

さて。連載は、すでに、第2巻を出せる分量になっているの
ですが、第1巻の資金回収がまだ終わっておりませぬ。

連載を読んでいないかたも、第1巻を読むと、「これはおも
しろい」と言ってくださっています。

読んでいただいたかたからは、「第2巻はいつ出ますか?」
というおたずねも、複数いただいています。(感謝)

そこで、ぜひぜひ、第2巻を出したいのですが、
私の告知力のなさで、まだ、第1巻の制作費が回収できて
いないのです…。

「零(zero)に立つ」前に、まだマイナスなのであります。

このブログの連載を読んでくださるかたに、お願いです。

イセさんの生きかたをもっとたくさんのひとに、お知らせし
ていきたいのです。

また、ネットをやっていないかたにも、お伝えしていきたい
のです。

そのために、よかったら、冊子「零(zero)に立つ」を購入し
てくださいませ〜。

また、すでにご購入いただきましたかたは、お友だちにおす
すめくださいませ〜。

あと、約80冊売れたら、第1巻制作にかかった費用が回収
できます。(少部数印刷なので、それなりに費用がかかります)

そしたら、第2巻に着手できます。

私もますますがんばりますので、応援いただけたらうれしいです

詳細は、こちらから


さて。これから、今日の午後のイベント準備にかかります。

こちらも、定員にまだよゆうがあります。当日参加も歓迎です!

本日開催!!
---------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
日時/2016年10月22日(土)13時30分〜16時45分
会場/東京・日本橋ホール(馬喰町・馬喰横山・東日本橋から数分)
   中央区日本橋馬喰町1-9-1 NKビル5階
   ※三越前の「日本橋三井ホール」ではありません。ご留意ください。
   お申し込み/こちら
   お問い合わせ/info@kamewaza.com
-----------------------------------------------

メルマガちらしおもて-1.jpg
----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら

----------------------------------------------------------------

-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! 
---------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?




網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1022206.jpg
「北の新大陸発見!あったか網走」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 07:40| Comment(0) | 報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

講話とワーク★いのちの使いかた★本日開催!

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


本日開催です!

かめおかゆみこの日刊メルマガ13周年記念イベント
いのちの使いかた


日刊メルマガを発行しはじめて、13年になります。

1日の欠号もなく、昨日で4738号を発行しました。

まるで、日記を書くように、毎日毎日、
私からの想いを、発信してきました。

それがご縁になって、たくさんのかたと
出会うことができました。

さまざまなことを、学びました。

そのなかで、いま、私が一番こころに止まっている
フレーズが、「いのちの使いかた」なのです。

そして、このフレーズこそが、いま、山形の女優・
夢実子さんとともにつくっている、語り劇
「零(zero)に立つ」の基本テーマでもあるのです。


あなたは、自分のいのちをどう使いたいですか?

「いのち」の「使いかた」とは、そのまま、
「使命」ということでもあります。

あなたの、「使命」は何ですか?


今日は、ふたつの側面から、あなたの
いのちの使いかたを、見つめなおす時間になります。

ひとつは、夢実子さんによる講話
「中川イセのあきらめない精神」


このブログをお読みのあなたは、もちろん、
中川イセさんのことをご存じでしょう。

イセさんを演じつづける女優・夢実子さんが、
渾身の想いで、イセさんの生きかたを語ります。

ブログをとおして感じてくださっているで
あろう、イセさんのエネルギーを、

夢実子さんのお話から、あらためて
感じていただくことができると思います。

それは、きっと、あなたの生きるエネルギーに、
ちからをあたえてくれると思います。


後半は、私がワークをリードします。

あなたのいのちの使いかたを、未来に向けて
実感するワークです。

21年のワークショップ経験をもつ
かめおかゆみこが、あなたをナビゲートします。


かめおかのメルマガ13周年記念の特別企画。
夢実子×かめおかゆみこで、お贈りします。

ご来場、お待ちしています!


本日開催!!
---------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
日時/2016年10月22日(土)13時30分〜16時45分
会場/東京・日本橋ホール(馬喰町・馬喰横山・東日本橋から数分)
   中央区日本橋馬喰町1-9-1 NKビル5階
   ※三越前の「日本橋三井ホール」ではありません。ご留意ください。
   お申し込み/こちら
   お問い合わせ/info@kamewaza.com
-----------------------------------------------


-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)

詳細/こちら! 
---------------------------------------------
--------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら

--------------------------------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?



P_20160624_151136.jpg
(201606.かめおか撮影)
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 03:57| Comment(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月21日

物語版「零(zero)に立つ」第14章 戦況のなかで(8)/通巻107話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


「東条会の高田です。その節はお世話になりまして」

東条会とは、卓治の妹・タマの夫、東条貞を応援する会の名前
である。

東条は、2年前の1930年、衆議院議員に立候補し、当選し
ていたが、この年の総選挙での立候補を見送り、次の選挙にそ
なえる状態になっていた。

選挙の際には、イセもかりだされて、手伝った記憶がある。

「こちらこそ、ごぶさたしております」

「その後、お変わりはありませんか?」

おそらく、この高田も、イセたちの借金のことは耳にしている
だろう。

親戚たちからことわられた無念さもあり、つい、イセは、山岡
との一件を語るともなく語ってしまった。

高田は、おどろいた顔で聴いていたが、イセが語り終わると、
こう言った。

「大変な借金を背負っても、つぶれずに返しつづけていること
を、やっかんでいるひとも、いるのかもしれませんねえ」

高田は、腕組みをして少し考えているようだったが、ふたたび
口をひらいた。

「3か月でお返しいただけるのでしたら、お貸しできるお金が
ありますが」

イセは、耳をうたがった。高田とは、面識こそあれ、とくに親
しいかかわりはない。

高田も、それを察したように、つけくわえた。

「いや、いまの奥さんのお話を聴いて、正直、感銘しました。
それに、我々も政界のはしくれで仕事をしている身です。そう
いう政治ゴロみたいなやつの話を聴くと、いささか腹も立ちま
すのでね」

地獄に仏とは、このようなことを言うのだろうか。

翌日、高田からお金をあずかったイセは、山岡のいる旅館を
たずねた。

昼ひなかというのに、山岡は、芸者を2人もはべらせて、もう
酒を飲んでいた。

イセを見ると、一瞬おどろいた顔をしたが、手にした猪口をく
いっと飲み干し、言った。

「これはこれは中川の奥様。約束の金は用意できましたかな」

「約束どおり、耳をそろえて持参いたしました」

イセは、封筒に入れた300円を、山岡の前にさしだした。

山岡は、その封筒を受け取ると、中を開け、なめるように、札
を数えた。

そして、それがきっちり300円あることをたしかめると、にや
にやしながら、借用証書をふところから取り出し、イセに渡した。

「さすがは中川、網走一の借金王といわれながら、一日で300
円の大金をつくってしまうんだからなあ」

イセは、わたされた借用証書をかばんにしまうと、山岡に言った。

「山岡さん、約束の時間の前に、お金をもってきたのですから、
宿の支払いはそちらでお願いします」

とたんに、山岡の目が引きつった。

「なんだと。こっちは東京から高い汽車賃をかけてきたんだ。本
来なら、汽車賃と日当もはらってもらうところだ」

イセは、深々と息をつくと、居住まいを正して、こう言った。

「それならこちらもひとこと言わせてもらいます。債権の時効は
十年。これ、法律に定められておりますよね。それに、先代の貸
し借り、わたすどもには、本来、返済の義務はありません」

山岡の顔色が変わった。


明日開催!!
---------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------


-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! 
---------------------------------------------
--------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら

--------------------------------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?


網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1021205.jpg
「北の新大陸発見!あったか網走」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:52| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月20日

物語版「零(zero)に立つ」第14章 戦況のなかで(7)/通巻106話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


さて。卓治が愛子を迎えに行っているあいだのできごとである。

ひとりの男が、中川家をたずねてきた。

男は「山岡」と名乗った。東京で政治団体に所属しているもの
で、父親が、亡くなった茂市と交流があったという。

その男が、「実は…」と言ってもちだしたのが、一枚の借金証
書であった。

「先代(茂市)が、15年前に、うちの親に借りたものですよ。
これを返していただきたいと思いましてね」

寝耳に水の話だが、証書をみると、まちがいなく、茂市の筆跡、
茂市の印鑑である。しかも、額面は150円。

「15年経ってますんで、そのぶんの利子をつけて、300円、
いますぐ返していただきたい」

イセはおどろいた。愛子を迎えに行くために、卓治に家の金を
ほぼすべてもたせているので、とてもそんな金はない。

「山岡さん、申し訳ありませんが、いま、うちは、主人が留守
なんです。主人がもどってくるまで、何日か待っていただけま
すか?」

イセが頭を下げると、とたんに、ていねいな物腰だった、山岡
の態度が豹変した。

「冗談じゃない。こっちはわざわざ東京から来てるんだ。明日
まで待ってやるから、耳をそろえてもってこい。払わないと訴
訟を起こす。松井旅館にいるからな。宿賃もはらってもらうぜ」

そう言い捨てて、出ていった。想いもよらない展開である。

そもそも、親の借金を子どもがはらう必要はない。

それどころか、民法では、借用証書の時効は10年と定められ
ている。

つまり、山岡のもってきた借用証書は、すでにただの紙くずな
のであった。

イセは、借金を返すために、生命保険の代理店などもやってい
たから、法律の知識を、それなりに身につけていたのだ。

それでも、それを口にしなかったのは、わざわざ東京からやっ
てきたのには、何か理由があるのだろうと考えたこと。

何より、お金のことでごたごたもめるのはいやだったのである。

イセは考えた。300円は、安い金額ではないが、馬一頭を売
れば、捻出できない額ではない。

親戚から一時的にお金を借りて、それで返して、卓治がもどっ
てきてから馬を売って、そのぶんを返そう…と。

イセは、すぐに親戚まわりをはじめた。

ところが、イセの予想に反して、どこもお金を貸してくれない
のだ。

「先代(茂市)の借金を勝手に引き受けたのは、あんたなんだ
から、いまさら言われてもね」

「うちには、よぶんな金は一銭もないよ」

そんな返事が返ってくるばかりであった。

この4年、がむしゃらにはたらいて、借金を返してきた。その
かん、ただの一度も、親戚にたよったことはない。

それなのにこんなときさえ…。

無念さが湧いてくるのを、ぐっとこらえて、歩いていると、イセ
に声をかけるものがあった。

「中川の奥さんじゃありませんか。ごぶさたしています」

振り向くと、見覚えのある顔がそこにあった。


今週末開催!!
---------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------


-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! 
---------------------------------------------
--------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら

--------------------------------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?


網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1020204.jpg
「カムバックサーモンin網走湖」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:08| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月19日

物語版「零(zero)に立つ」第14章 戦況のなかで(6)/通巻105話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


イセは、五十嵐家に手紙を書いた。

五十嵐家では、突然の申し出におどろいたが、自分たちの
子どもが産まれていたこともあり、愛子をてばなすことに抵抗
はもたなかった。

だが、愛子は、最初、山形を離れるのをしぶった。

それも無理からぬことである。

イセにとっては、かたときも忘れたことのない娘であっても、
愛子から見れば、乳飲み子のときに里子に出されて以来、
一度も会ったことのない、いわば「知らない母」なのである。

また、これもあとで知ったことであるが、愛子の父親である、
あの八重松は、ごくたまにではあるが、ふらっと、愛子に会
いに、五十嵐家をたずねていた。

イセとのことは、その場かぎりの出来心であっても、産まれ
た娘のことは、かわいかったらしい。

ふだんは、知らん顔をして、会ったときだけ、土産をもってか
わいがるのだから、無責任のきわみではあるが、五十嵐家
は、これを黙認していた。

愛子がよろこんでいるなら、それでよし、と思ったのである。

そんな調子だから、イセから、網走に引き取るという知らせ
があったとき、愛子は、ふともらしたものだ。

「このうちを出なきゃならないなら、父親のうちのほうがいい」

愛子にしてみれば、行ったこともない、北の果ての土地に行
くのは不安…という気持ちだったろうが、その返事に、イセ
はかっとなった。

愛子にたいして、というよりも、八重松にたいする怒りが再
燃したのである。

それは15年経っても、消えることのない怒りであった。

「そんな気持ちなら、親子の縁を切る!」

この剣幕に、びっくりした愛子は、すぐに返事を撤回し、中川
家にひきとられることになったのである。

15歳の娘にひとり旅をさせるわけにはいかないので、こちら
から迎えに行くことになる。

卓治は、当然、イセも一緒に迎えに行くものと想っていたが、
イセはことわった。

「だって、はたらき手が2人ともいなくなったら、牧場が困る
じゃないか。少しでも借金を返さなくちゃならないときにさ」

「そったらこと言ったって、ほんの1週間ばかりでねえか。誰
か、牧場仲間にでもたのめば大丈夫だべ」

「2人でいけば、そのぶん、旅費もかかるよ。だったら、女の
わたすより、男のあんたが行ってくれたほうが、道中、愛子
も安心だし」

「そんなものかなあ」

卓治は、首をかしげながらも、承知し、出かけていった。

本当は、イセとて、一緒に行きたかった。

行けば、なつかしい、親友のみよしとも会えたろう。里親の
コウにも、元気な姿を見せられたろう。

それでもなお、あの八重松が生きている町に行くことへの嫌
悪が、イセをそこにとどめたのである。


今週末開催!!
---------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------


-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! 
---------------------------------------------
--------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら

--------------------------------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?


網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1019203.jpg
「カムバックサーモンin網走湖」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:39| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月18日

物語版「零(zero)に立つ」第14章 戦況のなかで(5)/通巻104話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


さて。このところの中川牧場は、大所帯になってきていた。

卓治に、イセ、それに宗治。そこに、少し前に、宗治よりひと
つ下の、14歳になる清を、養子としてひきとっていた。

将来は、宗治に牧場の経営をまかせ、清には調教師として、
切り盛りしてもらおうと考えたのである。

また、卓治がおさないころに別れた母親が、ひとりで暮らし
ていることを知り、その母親もひきとって、一緒に暮らして
いた。

がむしゃらにはたらいてきたおかげで、北海道拓殖銀行札幌
本店頭取とのあいだにかわした、「3年」の約束は、なんとか
果たすことができた。

そこで、正式契約となったわけだが、借金は変わらず返しつづ
けなければならない。

牧場経営だけでなく、生命保険の代理店をやったり、とにかく、
「お金になることならなんでも引き受けた」というほど、イセた
ちは、はたらいた。

それでも、食べるものは、畑もあったし、漁師にたのめば海産
物は分けてもらえたので、暮らしていくぶんには、なんとかな
った。

清は、男手として一人前のはたらきをしてくれたし、卓治の母
親も、何くれとなくまかないの手伝いをしてくれた。

人手があることは、むしろ助かることだった。

そんな暮らしのなかで、ある日の夕食のあと、卓治が、茶をす
すりながら、不意に、イセに言った。

「イセ、愛子はいくつになった?」

イセは、はっとした。

もちろん、イセは、かたときも愛子のことを忘れたことはない。
いつか引き取るという約束も、卓治とはしていた。

けれども、50年割賦の借金を背負ってしまったいまは、自分
からはとても言い出せない。

卓治も何も言わないので、まさか忘れてしまったのでは…と、
ひそかに気に病んでいたところだったのだ。

「あ、うん、数えでもう、15になるよ。…早いもんだねえ」

17歳で出産し、まだ乳飲み子のうちに里子に出した。

あのときは2年で帰ると想っていたのに、いつのまにかそんな
年月が経ってしまっていた…。

しばらく前から、愛子を引き取ってくれた五十嵐家とは、実家
を介さず、直接手紙のやりとりをするようになっていた。

そのおかげで、いままで知らずにいたことも、次第にわかって
きた。

自分の身を挺してわたした、借金500円を、一銭のこらず、
実家の安蔵・モヨによこどりされていたこと。

やりくりしたなかから、愛子のためにと送ったいろいろなもの
も、モヨが、粗末なものにすりかえてわたしていたこと。

それでも、愛子を大切に育ててくれてきた五十嵐家に、待望
の赤ん坊が生まれたこと。

そんなことを、イセは、ぽつぽつと、語った。

卓治は、だまってそれを聴いていたが、イセが語りおえると、
ぽそっと言った。

「うちに、女の子がひとりくらいいてもいいなあ」

「あんた…! だけど、うちはいま…」

「ひとりくらいふえたって、なんとかなるさ。いままでだって、
なんとかしのいできたんだし」

卓治は、そう言って、いつものひとなつこい目を細めた。

イセの目からは、涙があふれた。


---------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------

-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! 
---------------------------------------------
--------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら

----------------------------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?


網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1018202.jpg
「カムバックサーモンin網走湖」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:54| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月17日

物語版「零(zero)に立つ」第14章 戦況のなかで(4)/通巻103話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


1931年(昭和6年)の満州事変につづき、翌1932年(昭和7年)
には、上海事変が勃発した。国勢は一気に戦争色を強めていく。

日本軍は、日清・日露戦争の経験から、大陸での戦争には
軍馬が一番と信じてうたがわなかった。そのため、大量の軍馬
が必要になった。

そして、軍馬は、農耕馬よりもはるかに高い値段で売れるので
ある。

当時、兵士は召集令状1枚で集められるが、軍馬は一頭数百円
で国費で買い上げていた。

そのため、兵士たちは、上官から、

「お前たちは、一銭五厘でいくらでも集められる消耗品だ」
「お前たちの命は、一銭五厘の値打ちしなかい」

などと言われていたようである。

はがきの値段が、この時代、一千五厘だったため(昭和12年
に2厘に値上げ)、そのような表現がなされたと考えられる。

しかし、実際には、召集令状は公文書として、役場から本籍地
に送達されていた。だから、はがきでなかったことはたしかである。

おそらく、このようなことを言った上官は、自身は職業軍人で、
召集令状は受け取っていないため、かんちがいして言ったこと
ばが、そのまま流布したものと考えられる。

いずれにしても、ひとのいのちは、さほど軽くあつかわれたの
である。

北海道は、馬の産地であったから、イセたちのまわりも、にわ
かにあわただしくなっていく。

1932年には、国防婦人会が結成され、出征兵士の見送りなど
にあたった。

イセたちもこれにならって、「愛馬婦人会」を結成した。

「女の手で軍馬を育てて、国に貢献しながら、お金ももうけよう」

イセの呼びかけに、会員は、120名にもなった。

4月7日を「愛馬の日」として、町のなかでパレードをやったり、
畑でつくったにんじんを、馬で軍に運んでいって、よろこばれた
りもした。

しかし、実際に、軍馬を育てるのは、大変なことであった。

軍馬として買い上げてもらうためには、購買官という、専門の将
校の審査を通る必要があったのである。

だから、イセたちは、軍馬審査日にそなえて、いつも以上に、馬
の手入れをし、調教をした。

そして、あるときなど、中川牧場から出した7頭の馬が、全頭買
い上げという、北海道でもまれな快挙をあげるのである。

ところで、イセが乗馬ズボンを着こなして、さっそうと馬を乗り
まわす機会は、ますますふえていくのだが、困ったことがあった。

和装とちがって、正座がしにくいのである。

いちいち着替えるのも面倒なので、イセは、そのうち、家に上が
ると、あぐらをかくようになった。

「行儀悪いけど、これで失礼するよ」

それが、戦後になってもつづいたものだから、「あぐらばっちゃん」
と呼ばれるようになるのだが、それはまたのちの話である。


---------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------

-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! 
---------------------------------------------
----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら

----------------------------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?


網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1017200.jpg
「カムバックサーモンin網走湖」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 06:36| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月16日

かめおかゆみこが、「零(zero)に立つ」の脚本を引き受けたわけ

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


2014年9月、横浜で、私は、夢実子さんの語り劇「真知子」
と、「中川イセ物語」を観劇しました。

どちらも、山形出身で、信念を持って自分の道を生きた女性
をテーマにした作品です。

このうち、「真知子」は、夢実子さんが、10年以上前から、
ひとり芝居として上演していたものを、語り劇としてリメーク
したもの。

そして、「中川イセ物語」

これは、現在の「掌編・中川イセ物語」でも、「零(zero)に立
つ」でもありません。

もともと、夢実子さんは、ひとり芝居「真知子」を演じていた
ときから、第2弾は、中川イセさんにしたいと考えていました。

それで、その当時、私に脚本を…と、打診をしていただいたこ
ともありました。

けれども、私は、そのころ、子どもたちの演劇活動に夢中にな
っていて、おとなをあつかったお芝居にあまり興味がありませ
んでした。

それで、資料をちらっと見ただけで、スルーしてしまったので
した…。

ところが、それから、10年後の2014年、冒頭の語りを聴
いたとき、私のなかに、びんびんひびいてくるものを感じた
のです。

終わってから、聴くと、なかなか脚本にすることがかなわない
ため、イセさんの半生をあつかった『岬を駈ける女』(山谷一
郎著)から、自分で抜粋して読んでいるのだと。

あとからテキストを見せていただいたのですが、失礼ながら、
本当に部分を抜粋してつなげただけで、全体の統一感もない
し、構成もととのっていないのです。

けれども、あの日、私はたしかに、強い手応えを、夢実子
さんの語りから受け取った
のです。

まるで、広島や沖縄の、戦争の生き証人の語りを聴くような、
真実のひびきがそこにはありました。

もし、先に、テキストを見せていただいていたなら、もしかし
たら、私は脚本を引き受けなかったかもしれません。

イセさんの人生はたしかに、すばらしいけれども、部分をと
りだしてつないだだけのテキストからは、その魅力は充分に
は伝わってきませんでした。

あのとき、私のこころを打ったのは、どうしても、イセさんを
演じたいという女優・夢実子の、魂の叫びとでもいうべ
き、想い
だったのではないかと思うのです。

もちろん、それからあらためて、『岬に駈ける女』を取り寄
せ、全編を読んで、イセさんのすごさに感嘆するわけです
けれども。

ともかく、私にとっては、すべてのはじまりは、女優・夢実
子の、渾身の語り
、だったというわけなのです。

だからこそ、書き手として、これを、より普遍的な作品にみ
がきあげたい、という想いが、ふつふつと湧いてきたのです。

ただ、ふだんは、おとな対象のお芝居はあまり書かないこと
もあり、すぐに、「脚本を書きましょうか」とは言えず、

まずは、作品を深めるためにも、イセさんが生きた、網走の
地をたずねてはどうか…というところから、

あとは、これまで何度か書いてきたように、

天国のイセさんに、突き動かされるように、あれよあれよの
展開になったわけですが…。


さて。今週末10月22日、東京で、
夢実子さんの「語り」
を聴くチャンス
があります。


「語り劇」ではなく、「語り」、つまりは、トークです。

テーマは、「中川イセのあきらめない精神」

この2年近く、語り劇「零(zero)に立つ〜激動の一世紀を
生きた中川イセの物語〜」の劇づくりにかかわってきた
夢実子さんの、

さらなる熱い想いを、聴くことができるでしょう。

そして、その伝えたい核心テーマ「あきらめない精神」は、

10年以上も、この作品をかたちにすることを、「あきらめ
なかった」夢実子さんの生きかたにも、つながるものと想っ
ています。

来年は、「零(zero)に立つ」の首都圏公演
も構想しています。


まずは、ぜひ、その出発点となった、女優・夢実子の熱い想い
にふれてみませんか?

その語りに、魅せられてみませんか?

かめおかゆみこのメルマガ「今日のフォーカスチェンジ」13周
年記念イベントでの、ゲスト出演となります。

どうぞお楽しみに!

お待ちしています!

                
---------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------

メルマガちらしおもて-1.jpg
-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! 
---------------------------------------------
---------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら

----------------------------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1016198.jpg
「カムバックサーモンin網走湖」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 17:34| Comment(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月15日

これまでのあらすじ/10月22日、夢実子さん講話!

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

土日祝日は、連載はお休みさせていただいています。


これまでのあらすじ

★第1章★ いせよ誕生
明治34年(1901年)、今野安蔵・サダの娘、いせよ(のちの中川イセ)
誕生。サダは、産後の肥立ちが悪く、死を予感。ヤクザものの安蔵にあとを
託すことを怖れ、佐藤コウに里親を頼むと、その年のうちに亡くなった。
    

★第2章★ 差別と貧しさのなかで
イセは佐藤家の里子になった。佐藤家は貧しく、イセはまわりからいじめられ
たり、差別を受けたりするが、コウの愛情、親友・渡辺みよしの存在、自身の
負けず嫌いの性格で、それらをはね返して成長していく。
     10 11 12 13 14 

★第3章★ はじめての家出
10歳で実家に連れもどされイセは、学校にも行けず、仕事に明け暮れる。
11歳の夏、モヨとの口論から、初めての家出。山形の船山先生夫妻の
家で住み込みの女中をし、かわいがられるも、翌春、船山先生に満州へ
の転勤辞令が出て、再び実家にもどることになる。
15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25

★第4章★ イセの初恋
またまた家出し、米沢の寮づきの織物工場ではたらく。仲間もできて楽し
い日々。そんな中、隣に住む名家の次男坊・戸田茂雄との初恋も体験。し
かし、安蔵にイセの居場所を知られたことで、イセは実家に帰ることに…。
26 27 28 29 30 31 

★第5章★ 女優志願
実家にいる間、地域巡演で山形にきた松井須磨子(実はにせもの)にあこが
れ、家出して上京する。しかし、たずねた帝国劇場に須磨子はおらず、い
くつかの仕事を転々とするが、結局あきらめて山形にもどることになる。
32 33 34 35 36 37 

★第6章★ 運命の歯車
人絹工場、機織り工場などではたらくうち、かつて実家に出入りしていた
芸人・八重松と再会。乱暴されて子どもを身ごもり、17歳で娘・愛子を
出産。その後、北海道の遊廓への話をもちかけられ、悩んだ末、イセは3
年で500円の借金をし、そのお金で愛子を里子に出すことにする。
38 39 40 41 42 43 44 

★第7章★ 網走まで
大正7年暮れ、イセは北海道に旅立った。ところが途中で虫垂炎から腹
膜炎をおこし、到着した旭川で即入院。借金が倍の1000円となり、
網走の遊廓に売られることに。駅前の島田食堂の夫婦にかわいがられる。
45 46 47 48 49 

★第8章★「お職」になる!
自転車を借りて町内を乗り回したり、柔道場に通ったりしたイセだが、娼
妓になると今度は、囲碁や将棋をおぼえ、お客を楽しませる工夫をした。
また酒に強く、何度も杯を重ね、そこから収益をあげることも考えた。
51 52 53 54 55 56 57 58 59

★第9章★「小梅」の死
イセは、娼妓に乱暴した客を一本背負いで投げ飛ばすなどで、娼妓たちの
信頼を勝ち得ていった。しかし一方で、妹ぶんの「小梅」が、失恋を苦に
自死。小梅の死をきっかけに、娼妓みんなでちからをあわせることを誓う。
60 61 62 63 64 65 66 

★第10章★中川卓治という男
イセは、柔道場で出会った中川卓治と親しくなり、急速に気持ちが近づい
ていく。卓治の妹・タマは、2人の交際をはげしく反対するが、卓治はイ
セに求婚し、イセは身請けされて、ついに遊廓を出る。
67 68 69 70 71 

★第11章★樺太にて
中川家よりもイセを選んだ卓治。2人は樺太にわたり、仕事を見つけて
はたらき、暮らしを立てた。卓治は、酒がもとでけんかをして大けがを
したりもするが、ついに茂市の許しが出て、網走に帰れることになる。
72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 

★第12章★岬の日々
網走の能取岬にある中川牧場の管理をまかされたイセたち。その雄大な
景色にイセは魅了される。乗馬も覚え、少しずつ馬との暮らしに親しみ、冬
になれば、流氷の美しさに見とれる。平和な日々がすぎていく。
85 86 87 88 89 90 

★第13章★茂市の死
卓治の父・茂市が、娘婿・東条貞の選挙資金調達で14万円の借金を残
して死去。イセと卓治はその借金を引き受ける。拓銀に50年割賦(ロー
ン)を頼むため、イセは札幌本店に出向き、交渉を成立させる。
91 92 93 94 95 96 97 98 99

★第14章★戦況のなかで(2016.10.14ぶんまで)
借金返済のため、卓治とイセは、牧場経営だけでなく、馬喰として馬の
売買にもかかわることにする。良心的なイセの仕事は、評判を呼び…。
100 101 102 



いよいよ、来週末にせまりました!

夢実子さん講話
中川イセの
 
あきらめない精神を語る


ご期待のみなさんにはスミマセンが、今回は、語り劇では
ありません
。講話です。

とにかく、とんでもなく波瀾万丈な人生を送った中川イセさん
の物語は、このブログでもご紹介してきたとおりです。

そのなかで、イセさんが、苦境に直面するたびに、どんなふう
に乗りこえてきたのかを、熱く語っていただきます。

なお、かめおかのメルマガ「今日のフォーカスチェンジ」
13周年記念イベント
への、ゲスト出演というかたちになります。


日時/2016年10月22日(土)13時30分〜16時45分
会場/東京・日本橋ホール
(馬喰町・馬喰横山・東日本橋から数分)
中央区日本橋馬喰町1-9-1 NKビル5階
※三越前の「日本橋三井ホール」とは別の建物です。
 最寄り駅もちがいます。広めの会議室です。


13時15分〜 開場

13時30分〜13時40分 かめおかあいさつ

13時40分〜14時20分 女優・夢実子による講話
「中川イセのあきらめない精神を語る」
 ココ

  女優・夢実子が演ずる、語り劇「零(zero)に立つ」の
  主人公・中川イセとは?

  105歳で没するまで、波瀾万丈の人生を生き抜いたひと。
  志のまま生き、弱い立場のひとのために全力を尽くしたひと。 
  数々の武勇伝・伝説を残しながら、最期まで愛のひとだった。

  その人生の根底をつらぬいた「あきらめない精神」を、
  イセを演じる女優・夢実子が、渾身の想いで語ります!

14時30分〜16時45分 かめわざワーク「いのちの使いかた」

  かめおかによる、イメージワーク+体感ワークで、
  あなたの、これまでをふりかえって肯定し、
  あなたの、これからをあらたに創造しましょう。

参加費/5000円
ただし、冊子「零(zero)に立つ」(1200円)を
おもちのかたは、記念価格で、3000円

お申し込み/こちら
お問い合わせ/info@kamewaza.com
メルマガちらしおもて-1.jpg


-----------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------

----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら

----------------------------------------------------------------
-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! 
---------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1015195.jpg
「カムバックサーモンin網走湖」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 09:57| Comment(0) | 報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月14日

物語版「零(zero)に立つ」第14章 戦況のなかで(3)/通巻102話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


しかし、イセの評判を快く思わないものたちもいた。これまで、
農家をだまして、悪どくもうけてきたものたちである。

「女のくせにつけあがりやがって」

「ちっと、痛い目にあわせてやったほうがいいんじゃないか」

駅前の食堂で酒を飲みながら、息荒く、そんなことを言うもの
たちもいた。

すると、注文された焼酎をテーブルにおきながら、食堂のおか
みが、さらっと言った。

「そいつは、やめたほうがいいと思うけどねえ」

言われて、男たちは、目をむいた。

「なんだと。オレたちをばかにしようってのか!」

おかみさんは、軽くいなすように手を振って言った。

「そうじゃないよ。あんたたち、知らないのかい? あのイセ
さんはね、柔道3段だよ」

「何?」

酒に口をつけようとした男の手が、思わず止まる。

「樺太にいたときに、あっちの荒くれ男を、一本背負いでやっ
つけちゃったのを、あたしゃ、見たんだよ。そりゃすごかった
ねえ。こーんな大男が、ズサーッって…」

そう言って、一本背負いの手振りまでしてみせた。

そう。駅前の食堂のおかみとは、あの島田のおばさんであった。
イセたちより遅れたが、樺太の仕事に、ひと区切りつけてもど
ってきていたのである。

男たちが臆したのを見て、島田のおばさんは、さらにつづけた。

「だけど、それよりすごいのが、イセさんのだんなの卓治さん
だよう。その樺太で、火の見やぐらをゆさぶって、引っこ抜いち
まったくらいだ。柔道の腕も5段というからねえ」

引っこ抜いた…というのは、いささか盛りすぎだが、卓治のばか
ぢからに、まちがいはない。

聴いている男たちの顔が、青ざめていく。

「あ、いや、ま、まあ、酔ったいきおいだ」

「あ、ああ。そうだな。さっきの話、ひとには言うなよ」

そう言うと、そそくさと飲み代をはらって出ていってしまった。

そんなこんなで、イセたちの評判はあがり、卓治は、網走地方の
馬喰組合の組合長をまかされることになった。

イセもいよいよ多忙になり、これまでの和装姿では、どうにも動
きにくくてしょうがない。

とくに馬に乗るときに乗りづらい。そこで服装を変えようと思う
のだが、もんぺは機能的ではあるが、馬に乗るのに、あまり見栄
えがいいとはいえない。

そもそも、馬喰たちは、馬をあつかうために、いくらよごれても
かまわないような、粗雑な服装をしているものが多かった。

そんな馬喰たちのなかに、まじるようなかっこうはいやだったの
である。

あれこれ考えた末、イセは、乗馬ズボンを採用することに決めた。

当時、そんな「ハイカラ」なかっこうをしているものは、まわり
には誰もいなかったが、イセは、ひとづての話や新聞などから、
情報は仕入れていた。

考えてみると、イセは、子どものころから、「一番」が好きだっ
た。誰もいないなら、私が最初に…と思うたちである。

自分がいいと思えば、ためらいはないのである。

取り寄せた乗馬ズボンは、小柄なイセの体型を、よりひきしまっ
たものに見せた。

「おお、イセ、かっこいいぞう」

「母ちゃん、すごくにあってるよ!」

卓治と宗治にほめられ、イセもまんざらではない。

以来、網走のひとたちは、乗馬ズボンで、きりりと馬に乗り、さ
っそうと町なかを駆ける、イセの姿を見ることになるのである。


----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------

-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)

詳細/こちら! 
---------------------------------------------
---------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1014194.jpg
「あばしりオホーツク流氷まつり」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:15| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月13日

物語版「零(zero)に立つ」第14章 戦況のなかで(2)/通巻101話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


1931年(昭和6年)、満州事変勃発。
-------------------------------------------
1931年(昭和6年、民国20年)9月18日に中華民国奉天(現瀋陽)
郊外の柳条湖で、関東軍が南満洲鉄道の線路を爆破した事件(柳条湖
事件)に端を発し、関東軍による満洲(現中国東北部)全土の占領を
経て、1933年5月31日の塘沽協定成立に至る、日本と中華民国との間の
武力紛争(事変)である。中国側の呼称は九一八事変。(以下略) 

-------------------------------------------
出典はこちら

日本は、ここから、太平洋戦争終結までの15年戦争に突入
していくわけだが、それはやがて、イセたちの日常にも、じわ
りと影響をおよぼしていく。

しかし、いまはまだ、イセたちは、日々をやりくりすることに、
懸命の日々を送っていた。

馬喰の仕事は、好調だった。

何より、イセは、馬の売買において、けっして相手をだまし
たり、故意に値をつり上げようとしなかった。

それどころか、故障をもつ馬については、その故障のことを
正直に伝え、馬に合ったはたらきかたまで提案した。

こんなエピソードがある。

一軒の農家が、ある馬喰から、農耕馬を買った。

ところが、いざ使ってみると、馬は、なぜかまっすぐ歩く
ことができず、右へ右へと曲がってしまう。これでは畑で
畝を引くこともできない。

困った農家の奥さんが、イセに相談をした。イセが、その
馬を点検すると、左の目が見えていないことがわかった。

馬を売った馬喰が、それに気づかぬはずがない。わざ
と知らんふりをして、農家に馬を押しつけたのである。

「いまさら言ったって、どうにもならんだろうねえ」

奥さんは、途方に暮れた。

たしかに、「おまえんとこで、おかしくしたんだろう」と、うそ
ぶかれるのがおちだろう。

かといって、新しい馬を買う金などどこにもない。

肩を落としている奥さんに、イセは、あっさりと言った。

「よかったら、うちのいい馬と交換しないかい? まあ、
ちょっとだけ上乗せはしてもらうけどさ」

「いいのかい? でも、この馬はどうするんだい」

「まかしておいて。なんとかするから」

そう言って、イセが連れてきてくれた馬は、若くて元気で、
もりもりと、力強く畝を引いた。

おかげで、遅れていた仕事を、あっというまに、とりもどす
ことができた。農家は、こころからイセに感謝した。

そして、あの左目の見えない馬はどうなったか。

さけ番屋が、船を陸に引き上げる際、綱を巻くための馬を一
頭さがしていた。

イセは、この情報を聴きつけてきたのである。

「この馬は、左目が見えないけど、右まわりにまわしてやる
ようにすると、問題ないよ」

そこまで説明して引き渡した。さけ番屋としても、必要な仕
事をしてくれる馬が手に入るなら問題はない。

こうして、万事かうまくおさまったわけで、イセの評判はま
すます高まり、遠くから引き合いがくるほどになった。


----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------

-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)

詳細/こちら! 
---------------------------------------------
---------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1013193.jpg
「あばしりオホーツク流氷まつり」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:16| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

100話記念★「零(zero)に立つ」感想が、零に立った〜!?

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


「零(zero)に立つ」100話記念★感想募集の結果です。



じゃーん!!

















応募……   0!


ひええええ。文字通り、
物語のタイトルどおり
になっちゃいました〜


零(zero)に立つ!


たしかに、募集期間も告知期間もみじかかったです。

あまり、大々的に宣伝もできなかったです。

実は、昨日(あ、もう一昨日になっちゃった)、
「まだヒトケタです。片手で数えられます」と書いた時点
でも、実は、

ただし、「書きますよ〜」と声をかけてくださったかたは、
何名かいらしたので、それを「予想数」と計算して、あの
ように書いたのでした。


しかし、結果は、

「400字以上」という制約が、ネックだったのでしょうか。

「ブログ等で使わせていただく」ということが、負担につな
がったのでしょうか。


…と、あれこれ悶々(笑)としていたらば、T・Nさんから
メッセージが。

------------------------------------------------------
感想…今書いてお渡しするのが、私にはもったいないというか、
最後の最後まで読ませていただいたほうがいい気がしてきまし
たので、今回は、(賞品のひとつ)北海道のおみやげ、仕方な
く譲ることにします(笑)

------------------------------------------------------


あ、そういう見かたもあったんですね!

たしかに、まだ完結していない物語の感想って、書きにく
いですよね。

とほほほほ。企画そのものがミスだったのかあ〜。 ←意味不明(笑)


と思っていたら、昨日(12日)の昼近くになって、投稿が…。

「サニー」こと、尾上晴美さんからです。

冊子「零(zero)に立つ」第1巻を読んでくださっての感想を、
「期限に間に合いませんでしたが」と、送ってくださいました。


-------------------------------------------------------
本はじっくりと読むたちなのですが、「零に立つ」はあまりにも
展開が速くて止められず、ジェットコースターに乗った気分。
おもしろすぎて一気に読んでしまいました。

どの章を読んでも、まるでドラマ!

どんな逆境にもめげずに立ち向かっていく。まだ16歳なのに、
実にしっかりとした足取りで、自分の人生を切り開いていく
主人公イセ。

里子に出されて嫌な思いをたくさんしてきた。だのに、今度
は自分が生んだ子を里子に出す決断をする。これからどう
なっていくのだろう? 

第2巻がとても楽しみです。


貧乏だからという理由で学校の先生からも差別されたイセ。

成績がトップなのに総代になれなかったくだりは、もう、自分
のことのように悔しくて、でもどうしようもなくて、読みながら
涙を呑みました。


イセの偉いところは、このとき先生を恨むでもなく、貧乏を嘆
くでもなく、ただ、悔しさだけを心に刻んだこと。

弱い者の気持ちがわかるから黙っていられない。

決してへこたれない、あきらめない強い気持ちと、社会的
弱者へのいたわりとやさしさを併せ持つイセは、将来大変尊
敬される人物になっていったのでしょう。

イセの強さも好きです。やられっぱなしではなく、策を練って
報復するところ! 気持ちがスカッとしました。

いじめっ子の家の柿をすべて叩き落すという行動は奇異だし、
同義的にもやってはいけないことですが、

「上級生のくせして、下級生の女子ば、よってたかってなぐる
ようなやつには、こんぐらいのことして当たり前だ」

というイセのことばを聴き、いじめっ子たちの親は自分の子ど
もたちを叱りつけました。

このあと上級生たちにいじめられることもなくなったので、自
分を守ることにもなりました。

イセは周りの人や大人たちまでも教育したわけです。

イセには生まれつき「生きるちから」が備わっていました。
だから読んでいて実に気持ちがいい。

現在ではタブーとされていることもするけど、そうそう! その
とおりだよ! いいぞイセ! と、応援してしまいます。

この、波乱万丈の人生を、お涙頂戴物語にしないで、読者に
勇気と希望を与えてくれる読み物にしてくれたかめおかゆみこ
さんに感謝します。

夢実子さんの劇も観てみたい。いや、絶対に観ます!
-------------------------------------------------------


というわけで、
なんとか、1に立つことができ、ほっとしています。

もしかしたら、〆切がすぎて、投稿をあきらめたかたもいら
っしゃるかなあと、思うこともできました。


物語は、ただいま、後半にさしかかっています。
完結したら、ぜひまた、感想募集をさせていただきます。

そのときには、ぜひ…、

零に立たせないでくださあい。


ちゃん、ちゃん。



----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------

-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! 
---------------------------------------------
---------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?



P_20160624_151940.jpg
(「能取岬にて」かめおか撮影)
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 02:26| Comment(0) | 報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月12日

物語版「零(zero)に立つ」第14章 戦況のなかで(1)/通巻100話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


しかし、本当に大変なのはそれからであった。まずは、最初
の3年を乗り切らなければならない。

処分できるものは処分し、少しでも金に換えた。

また、牧場も、飼育をするだけでは、高い収益は得られない。
馬喰(ばくろう)の資格をとろうということになった。

馬喰とは、馬の売買や仲介にかかわる仕事で、馬のもつ能
力や性質を見抜き、病気の治療にまであたる。

馬の売買は許可制だったため、鑑札をとる必要があった。

「わかった。わたすもその鑑札をとるよ」

イセは言った。

もともと、馬喰は男の仕事だ。荒っぽく、売買をめぐっては、
駆け引きもあり、ときにはけんか沙汰になることもある。

しかし、卓治は、イセが自分と一緒に鑑札をとってくれるこ
とをよろこんだ。

卓治は馬の目利きは一流だったが、性格がら、およそ駆け
引きなどというものには向いていない。

その点、イセは、なにごとにもものおじせず、思ったことは
はっきり言える。

牧場ではたらくようになって4年。馬に関する知識のうえで
も、もうすっかり、卓治と並ぶほどになっていた。

「おらとイセと2人でやれば、百人力だ」

卓治がうれしそうに手をたたいて言うと、そばで聴いていた
宗治が口をはさんだ。

「馬の仕事なんだから、百人力でなくて、百馬力だ。父ちゃ
ん、オレも一緒に手伝うよ」

「そうか、それはたのもしい。そしたら、3人で百万馬力だ」

3人は、そんな他愛ない冗談を言って、笑いあうのだった。

一方、イセが馬喰の鑑札をとったという話は、またたくまに
町じゅうのうわさになった。

卓治は単純によろこんでいたが、それほど、男社会の馬喰の
世界に、女が入るというのは、特別なケースだったのである。

しかも、当時の馬喰のなかには、少しでも馬を高く売りつけ
ようと、故障をごまかしたりなどする、悪どいものも少なから
ずいた。

そのため、あまり評判のいい仕事とは言えなかった。

これにがまんならなかったのは、ほかでもない、卓治の妹、
タマである。

親戚の集まりで顔をあわせたとたん、いきなり卓治にかみつ
いてきた。

「兄さん! それって、本当の話なの? 女だてらに、そん
な仕事につくなんて、はずかしいったらありゃしない。私、
東条の身内に顔向けできないわ。いますぐやめさせてちょう
だい!」

それを聴いた卓治は、顔色を変えた。

「タマっ! おまえ、イセが、なして、馬喰になったかわかっ
てるのか! もとはといえば東条の選挙の借金を返すためで
ねえか! 二度とそんな口きいてみろ。兄妹の縁を切るど!」

ふだんの卓治からは想像もつかない激昂ぶりに、タマは呆然
とし、おそれをなした。

そして、それ以後、その話にふれることは、すっかりやめた。

そうして、がむしゃらにはたらく日々がはじまったのだが、
時代もまた、おおきな曲がり角を見せていた。


----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------

-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)

詳細/こちら! 
---------------------------------------------
---------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1012192.jpg
「あばしりオホーツク流氷まつり」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 06:33| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月11日

物語版「零(zero)に立つ」第13章 茂市の死(9)/通巻99話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


じっとだまって聴いていた頭取だったが、イセが語り終え
ると、ほうっと息をついて、こう言った。

「うまいことを言うねえ、君。こんなことを言われたのは、
初めてだよ。君にはやられた」

それから、真顔になって、考えるふうに間をおいて、頭取
は言った。

「わかりました。50年割賦、引き受けましょう」

「本当ですか?! ありがとうございます!」

飛び上がりそうになるイセを、頭取はおさえるように言った。

「ただし、ふたつ、条件があります。

ひとつは、50年で返すといっても、額が額ですから、私
どもとしても、まず、あなたがたが本当に返済能力がある
かどうかを、たしかめなくてはなりません。

3年間、まずはこちらが提示した額をはらってください。
3年間、遅延なく支払いができた時点で、正式に50年契
約を結びましょう。もちろん、一度でも遅延があれば、即
財産没収です」

イセは、神妙にうなずいた。頭取はつづけた。

「もうひとつは、利子です。お貸しした金額にくわえて、
当然、利子が付随します」

イセは、とまどった。利子のことまで頭になかったからだ。

「それについては、元金をはらい終わってから、返済して
いただく。利子といっても、ばかにならない金額ですからね」

イセは、はっとして頭取を見た。それは、イセたちにたい
する救済策にほかならないではないか?

目が合った頭取は、これまでと打って代わって、柔和な笑
顔を見せて、イセに言った。

「いや、毎日、借金を50年割賦にしろと言ってくる客が
いる、という話は、下から聴いてはいたんですよ。

もちろん、そんなこと、許可できるわけがない。だから、
帰ってもらえと返事をした。

ところが、何度ことわっても、毎日毎日、その客はやって
くる。

しかも、銀行のあく時間には、もう外に待っていて、誰よ
りも早く入ってくる。

しかも、銀行中にひびきわたるような声で、『おはようご
ざいます!』と、あいさつをしてね。

ある行員が言ったんですよ。普通、借金をしているものは、
もっと陰気な顔をしている。あんな満面の笑顔で、はきは
きした声で、あいさつなんかしないって。

それを聴いてね、一体どんなひとだろうと、興味をもって
いたんですよ」

それから、頭取は、ふっとため息をついて言った。

「実は、茂市さんには、拓銀網走支店をつくるときに、
大変お世話になってるんですよ。

顧客になりそうなところを紹介していただいたり、一軒、
一軒、一緒にまわっていただいたりしたそうです。

当時、開発担当だったものから、そういう話も聴いてお
りまして。まあ、そのご恩に報いるという気持ちもあり
ましてね」

そのことばに、イセは深々と頭を下げた。

そして、網走にもどり、卓治に結果を報告すると、ひと
息ついて、しみじみ言ったのだった。

「なんだか、わたすひとりのちからでやった、なんて気
分になっていたけど、お義父さんが、あの世から助けて
くれていたんだねえ」

そんなイセのことばに、卓治は、

「なんも、親父がこさえた借金だもの。そんくらいのこ
と、して当たり前だべ」

と言って、豪快に笑ったのだった。

---------------------------------------------------------
10月12日で100話!物語版「零(zero)に立つ」感想募集
募集期間/2016年10月1日〜10月11日23時59分
条件/物語版「零(zero)に立つ」の感想を、400字以上 
※一部の感想でもOK! 詳細/こちら! 
---------------------------------------------------------

----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------

-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)

詳細/こちら! 
---------------------------------------------
---------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1011191.jpg
「あばしりオホーツク流氷まつり」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 05:04| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月10日

【閑話休題】夢実子とゆみこ

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

土日祝日は、連載はお休みさせていただいています。

これまでのあらすじは、こちら


3連休も、今日で終わりですね。みなさま、いかがお過ごし
になられましたか?

私は、この3日間は、ほとんど、パソコンにはりつき状態で、
途中、ときどき意識をうしなって(笑)、椅子にすわったまま
眠っていることも。(器用な…)

土日祝日ということで、連載はお休みさせていただきましたが、

エッセイの更新、10月22日の、メルマガ13周年記念イベ
ントや、11月26日の札幌・夢実子×ゆみこの語り劇&ワー
クショップの告知などなど。

そして、ちらっと新作のかおりただよう、なんちゃらとか。
(何?)(笑)

それにしても、さすがに、1日に椅子にすわる時間が、16時
間を超えると、おしりが変になりますね。(汗)

でも、やるべきことはしっかりやりきりたいので、もうひとが
んばりです!


と、前置きはこのくらいにして。今日は、3連休の最後という
ことで、軽い読みものにしてみたいと思います。


最近、ときどき、こんな質問を受けるようになりました。

「夢実子さんと、かめおかゆみこさんは、同一人物なんですか?」

えええええ〜?と、ふたりでびっくり。

このブログの最初からの読者さん、あるいは、「網走取材旅行
記」を読んでくださったかたなら、当然ご存じでしょうが。

別人です!(きっぱり)>←力説しなくても…。(笑)


あらためて、情報って、おもしろいなあって思いました。

たしかに、知らないひとからしたら、混同しても不思議じゃな
いですよね。

実際、夢実子さんは、夢実子と、本名の「今田由美子」を、そ
のときどきで使い分けていますから。

なので、さらに、もうひとつ、ペンネーム?があってもおかし
くないですからね。(笑)

いずれにしても、知らないところでの告知は、ちゃんとしなけ
ればならないという教訓でした。

そして、この「ダブルゆみこ」の一件にかぎらず、発信をして
いくということは、それなりの責任をともなうということ。

とくに、ここでは、中川イセさんの人生をあつかっているわけ
ですから、イセさんの生きざま、ありかたを、誤解なく伝えら
れたらいいなあと。

夢実子さんとも、最初の取材旅行のときには、時間が足りずに
聴けなかったお話も、もう一度うかがって聴きたいね、なんて
話をしています。

11月の札幌でも、イセさんゆかりのかたに、取材できること
が決まっています。楽しみ、楽しみ♪

それらの積み重ねが、より、お芝居の深まりにつながればいい
なあと願っています!


以上、閑話休題でした。

明日からまた、物語再開です。お楽しみに!

---------------------------------------------------------
10月12日で100話!物語版「零(zero)に立つ」感想募集
募集期間/2016年10月1日〜10月11日23時59分
5名のかたに特別プレゼント、ほかの特典があります!
詳細/こちら! 
---------------------------------------------------------

-----------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------

-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! 
---------------------------------------------
---------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら

----------------------------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?

----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
※イセさんの誕生〜北海道に渡るまでを、まとめて一気に読めます。
詳細は、こちら! お申し込みは、こちら

----------------------------------------------------------------



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1010190.jpg
「あばしりオホーツク流氷まつり」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 19:16| Comment(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月09日

「掌編・中川イセ物語」が生まれたわけ

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

土日祝日は、連載はお休みさせていただいています。

これまでのあらすじは、こちら


きたる2016年11月26日、札幌で、夢実子さんの語り劇
「掌編・中川イセ物語」の上演があります。

この作品は、この夏、山形で上演された語り劇「零(zero)に
立つ」の、いわばエピソード編です。

このエピソード編がつくられるいきさつを、本日はご紹介します。

これまでも書いてきたように、昨年、「零(zero)に立つ」がつく
られ、網走と天童で初上演されました。

この作品は、夢実子さんが、すべてひとりで演じます。そし
て、いわゆる、ひとり芝居ではなく、語り主体の劇です。

動きはほとんどなく、ことば中心の展開になるわけです。

ですから、1時間ちょっとが、観客にとっても適切な時間と
考えられ、75分の作品として仕上げられました。

しかし、中川イセさんというひとは、2時間、3時間あって
も、語り尽くせないだけのエピソードの持ち主なのです。

削りに削り、磨きこんで、75分の作品におさめたわけです
が、入れ込めなかったエピソードの数々が、なんとしても
惜しい。

なんとか、かたちにできないかと想っていたところ、夢実子
さんが、今年1月に、東京のアポックシアターで開催された、
ひとり芝居フェスティバルに出演することになりました。

もともと、夢実子さんには、10年間やってきた「真知子」
というひとり芝居かあり、それを数年前から、語り劇にリメ
ークして、上演してきました。

こちらは、約25分の作品です。

ひとり芝居フェスティバルの、出演者の持ち時間は、60分
(搬出・搬入ふくむ)ですから、あと30分近く、持ち時間が
あります。

(「零(zero)に立つ」のほうは、そもそもが時間オーバー
のため、上演できません)

ということで、「零(zero)に立つ」でとりあげられていない
エピソードを抜き出して、朗読しようかという案もあったの
ですが、ここはせっかくだから、きちんと1本つくりましょう。

…ということで、つくったのが、今回の「掌編・中川イセ物語」
なのです。

本編「零(zero)に立つ」が、どちらかというと、歴史の重み
を背負った、重厚さをもっているのにたいし、

「掌編・中川イセ物語」は、イセさんの人間味が色濃く反映さ
れていて、どちらもおもしろかった…

とは、両作品をご覧になったかたの感想です。

また、本編をご覧いただいていないかたでもお楽しみいただ
けるように、「掌編…」のほうでも、イセさんの半生について
ふれていますので、安心してご覧いただけます。

…あれ、宣伝みたいになっちゃいましたね。(笑)

ともあれ、おかげさまで、ひとり芝居フェスティバルでも好評
を博し、そのあと、山形県内で、依頼を受けて、3か所、立て
つづけに上演をさせていただきました。

「零(zero)に立つ」は、劇場用の作品ですので、それなりの
準備も必要ですが、

「掌編・中川イセ物語」は、劇場でも、会議室でも、喫茶店
でも、音響設備(CDプレイヤーで充分)のあるところなら、
どこでも上演可。

その作品が、今回、札幌に行く、ということです。

ぜひぜひ、お楽しみに!

                    
-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! 
---------------------------------------------
---------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------

---------------------------------------------------------
10月12日で100話!物語版「零(zero)に立つ」感想募集
募集期間/2016年10月1日〜10月11日23時59分
5名のかたに特別プレゼント、ほかの特典があります!
詳細/こちら! 
---------------------------------------------------------

-----------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------



夢実子の語り劇を上演してみませんか?


----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
※イセさんの誕生〜北海道に渡るまでを、まとめて一気に読めます。
詳細は、こちら! お申し込みは、こちら

----------------------------------------------------------------



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1009189.jpg
「豊郷神楽」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 17:45| Comment(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月08日

これまでのあらすじ/「もしも、人生が45年だとしたら」

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

土日祝日は、連載はお休みさせていただいています。


これまでのあらすじ

★第1章★ いせよ誕生
明治34年(1901年)、今野安蔵・サダの娘、いせよ(のちの中川イセ)
誕生。サダは、産後の肥立ちが悪く、死を予感。ヤクザものの安蔵にあとを
託すことを怖れ、佐藤コウに里親を頼むと、その年のうちに亡くなった。
    

★第2章★ 差別と貧しさのなかで
イセは佐藤家の里子になった。佐藤家は貧しく、イセはまわりからいじめられ
たり、差別を受けたりするが、コウの愛情、親友・渡辺みよしの存在、自身の
負けず嫌いの性格で、それらをはね返して成長していく。
     10 11 12 13 14 

★第3章★ はじめての家出
10歳で実家に連れもどされイセは、学校にも行けず、仕事に明け暮れる。
11歳の夏、モヨとの口論から、初めての家出。山形の船山先生夫妻の
家で住み込みの女中をし、かわいがられるも、翌春、船山先生に満州へ
の転勤辞令が出て、再び実家にもどることになる。
15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25

★第4章★ イセの初恋
またまた家出し、米沢の寮づきの織物工場ではたらく。仲間もできて楽し
い日々。そんな中、隣に住む名家の次男坊・戸田茂雄との初恋も体験。し
かし、安蔵にイセの居場所を知られたことで、イセは実家に帰ることに…。
26 27 28 29 30 31 

★第5章★ 女優志願
実家にいる間、地域巡演で山形にきた松井須磨子(実はにせもの)にあこが
れ、家出して上京する。しかし、たずねた帝国劇場に須磨子はおらず、い
くつかの仕事を転々とするが、結局あきらめて山形にもどることになる。
32 33 34 35 36 37 

★第6章★ 運命の歯車
人絹工場、機織り工場などではたらくうち、かつて実家に出入りしていた
芸人・八重松と再会。乱暴されて子どもを身ごもり、17歳で娘・愛子を
出産。その後、北海道の遊廓への話をもちかけられ、悩んだ末、イセは3
年で500円の借金をし、そのお金で愛子を里子に出すことにする。
38 39 40 41 42 43 44 

★第7章★ 網走まで
大正7年暮れ、イセは北海道に旅立った。ところが途中で虫垂炎から腹
膜炎をおこし、到着した旭川で即入院。借金が倍の1000円となり、
網走の遊廓に売られることに。駅前の島田食堂の夫婦にかわいがられる。
45 46 47 48 49 

★第8章★「お職」になる!
自転車を借りて町内を乗り回したり、柔道場に通ったりしたイセだが、娼
妓になると今度は、囲碁や将棋をおぼえ、お客を楽しませる工夫をした。
また酒に強く、何度も杯を重ね、そこから収益をあげることも考えた。
51 52 53 54 55 56 57 58 59

★第9章★「小梅」の死
イセは、娼妓に乱暴した客を一本背負いで投げ飛ばすなどで、娼妓たちの
信頼を勝ち得ていった。しかし一方で、妹ぶんの「小梅」が、失恋を苦に
自死。小梅の死をきっかけに、娼妓みんなでちからをあわせることを誓う。
60 61 62 63 64 65 66 

★第10章★中川卓治という男
イセは、柔道場で出会った中川卓治と親しくなり、急速に気持ちが近づい
ていく。卓治の妹・タマは、2人の交際をはげしく反対するが、卓治はイ
セに求婚し、イセは身請けされて、ついに遊廓を出る。
67 68 69 70 71 

★第11章★樺太にて
中川家よりもイセを選んだ卓治。2人は樺太にわたり、仕事を見つけて
はたらき、暮らしを立てた。卓治は、酒がもとでけんかをして大けがを
したりもするが、ついに茂市の許しが出て、網走に帰れることになる。
72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 

★第12章★岬の日々
網走の能取岬にある中川牧場の管理をまかされたイセたち。その雄大な
景色にイセは魅了される。乗馬も覚え、少しずつ馬との暮らしに親しみ、冬
になれば、流氷の美しさに見とれる。平和な日々がすぎていく。
85 86 87 88 89 90 

★第13章★茂市の死
卓治の父・茂市が、娘婿・東条貞の選挙資金調達で14万円の借金を残
して死去。イセと卓治はその借金を引き受ける。拓銀に50年割賦(ロー
ン)を頼むため、イセは札幌本店に出向き、交渉を成立させる。
91 92 93 94 95 96 97 98 99


昨日(10月7日)の私のメルマガに、イセさんのことを書いた
ので、転載します。


★今日のフォーカスチェンジ♪★

もしも、人生が45年だとしたら



いま、連載中の小説「零(zero)に立つ」では、
明治初期から戦後までの時代をあつかっています。

いまはちょうど、昭和初期にさしかかったあたり。

事実をもとにした作品なので、そのときどきで、
それなりの時代考証が、必要になります。

第98話では、主人公・中川イセさんが、
北海道拓殖銀行札幌本店の頭取に、
50年ローンを申し込む場面があります。

そのとき、頭取が、イセさんに、
「はらい終わったとき、何歳ですか?」とたずねます。

これには理由があります。

昭和初期、日本人の平均寿命は、
なんと、45歳前後だったのです。

当時の死因のトップは、感染症・伝染病。
結核、気管支炎、肺炎、それに胃腸炎、脳疾患などで、
ひとはいのちを落としていたのです。

平均寿命45歳で、50年ローンでは、
あの世の時間まで必要になってしまいます。

それにしても、45歳。

2015年現在の平均寿命が、男性80歳、女性87歳
とされていますから、なんという差でしょうか。

これをお読みのあなたは、いま、何歳でしょうか?

もうとっくに過ぎておられるかた。
そろそろさしかかるかた。
あるいは、これからむかえるかた。

人生が、あとよぶんに40年近くあるとしたら、
あなたは何をしますか?

もしくは、逆に、人生が45年しかないと、
最初からわかっていたら、
あなたは、どんなふうに使いますか?

連載を書きながら、私は、
そんな想いにかられずにはいられなかったのです。

ちなみに、くだんのイセさんは、
頭取の質問に、こうこたえています。

「私は、からだが丈夫だから大丈夫」

50年ローンが終わる80歳近くまで、
はたらく意欲満々だったというわけですね。

そして、そのことばのとおり、
80歳はおろか、105歳まで生き、
しかも103歳までは現役で活躍しています。

天の運もありますから、
自分の寿命を決めることはできませんが、

もしよかったら、
今日は、ちょっとだけ考えてみてください。

もしも、人生が45年だとしたら、
あなたはどんなふうに生きますか?

その密度で、今日から生きてみるとしたら、
これから、どんな人生が待っているでしょうか?

あなたの一日一日が、
満ち足りたものでありますように!


----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------

---------------------------------------------------------
10月12日で100話!物語版「零(zero)に立つ」感想募集
募集期間/2016年10月1日〜10月11日23時59分
5名のかたに特別プレゼント、ほかの特典があります!
詳細/こちら! 
---------------------------------------------------------

-----------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------

-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! 
---------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?




網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1008187.jpg
「七福神まつり」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:03| Comment(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月07日

物語版「零(zero)に立つ」第13章 茂市の死(8)/通巻98話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


イセは、東条貞と北海道議会で一緒だったという道議とともに、
ふたたび、拓銀札幌支店の受付の前に立った。

受付係は、イセの顔を見て、「また…」という表情になったが、
うしろにひかえている道議を見て、けげんそうな顔をした。

「頭取さんに、ちょっとご挨拶しにきましたよ。昨日、電話は
入れてありますのでね」

道議は言って、名刺をさしだした。

名刺の名前を見たとたん、受付係は飛び上がって、2人を案内
するべく、奥の部屋への扉を開けた。

イセは、ようやく交渉に入れるよろこびと、権力があるもの・
ないものにたいする対応の差に、理不尽さを感じながら、あと
につづいた。

頭取室では、頭取が待ち受けていて、道議と親しげに握手を
かわした。

「で、今日はどんなご用事で」

「いえ、私は、挨拶にきただけです。ただ、私の知り合いが、
どうしてもご相談したいことがあるというものですからね」

そう言って、自分はさっさとソファにすわり、出された茶を
すすりはじめた。

イセは、意を決して、頭取の前に進み出、深々と頭を下げた。

「はじめてお目にかかります。わたす…いえ、私は、網走で
町議会議員をやっておりました、中川茂市の息子、卓治の妻
で、中川イセと申します」

「ああ、中川茂市さんですか。存じておりますよ」

「ありがとうございます。今日、おうかがいしたのは…」

イセは、これまで受付で何度となく繰り返した話を、もう一
度、頭取に話した。

頭取は、最後まで話を聴き終えると、イセに言った。

「イセさん、あなたはいま、おいくつですか」

「27歳です」

「50年かけて返すということは、そのころあなたは、80
歳近くになってしまいますが?」

当時の平均寿命は、せいぜい45歳くらいなのである。

寿命.JPG
※出典はこちら

しかし、イセは、堂々と胸をはってこたえた。

「わたすは、親から、丈夫なからだに産んでもらって、これ
まで病気らしい病気は、ほとんどしてません。これからも長
生きして、しっかりはたらくつもりです!」

もちろん、この時点で、105歳まで生きるとは想っていな
かったろうが、この返答に、頭取は思わず目を丸くした。

頭取の反応を見て、イセは、ここぞとばかりに、持論を展開
した。

「頭取さん、北海道拓殖銀行は、北海道開拓のためにつくっ
た銀行ではないですか。

私らは、これから開拓する牧場を三つもってるんです。開拓
しながらお金をかえすには、どうしても50年かかるんです。

それに、いま、私らの全財産を没収したとしても、牧場には
管財人を置かねばなんないっしょ。管財人はただではおけま
せん。そこによぶんなお金がかかる。

私らにあずけたままにしてもらえれば、無料で管理しながら、
お金も返ってくる。これ、双方にとっていいことでないですか」

またまた出た、強引な、イセの論法である。

そばで、聴かない素振りで聴いていた道議は、内心で冷や汗を
かいた。


----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------

---------------------------------------------------------
10月12日で100話!物語版「零(zero)に立つ」感想募集
募集期間/2016年10月1日〜10月11日23時59分
5名のかたに特別プレゼント、ほかの特典があります!
詳細/こちら! 
---------------------------------------------------------

-----------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------

-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! 
---------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1007184.jpg
「JRノロッコ号内部」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:11| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月06日

物語版「零(zero)に立つ」第13章 茂市の死(7)/通巻97話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


1928年。網走と札幌を結ぶ、石北本線は、まだ開通して
いない。

イセは、9年前、遊廓に入るため、山形から旭川を経由し、
網走までやってきたルートを、逆にもどることになる。

(この路線のことについては、エッセイ「消えた線路」で詳
しくふれた)

あのとき背負った借金など、比べものにならないほどおお
きな借金を、いま、イセたちは背負っている。

けれども、不思議なほど、こころは重くはなかった。

たしかに、この先、50年、それを返しつづけることを思うと、
心臓がぎゅっとちぢむ想いにかられることもある。

けれども、何よりも、自分で決めたという自負が、イセには
あった。何もいわず、それをあと押ししてくれた卓治への深
い信頼もあった。

(これまでだって、乗り切ってきたんだ。やってやる!)

イセのなかに、ふつふつと熱い想いがわきあがってくるのだ
った。

しかし、現実はそう簡単には運ばない。

「網走の支店長から、話は通っております」

北海道拓殖銀行本店の受付でそう告げても、

「それは承知しております。が、ご用件につきましては、当
行としてましては、規則にないことは受けることができない
との上からの回答がありますので」

との一点張りである。

「とにかく、上のひとと直接、話をさせてください」

何度頭を下げても、通らない。

イセは困った。札幌本店にさえくれば、話は通ると想ってい
たのに、かんじんの話をさせてもらうことができないのである。

安い宿に泊まってはいたが、それでも宿賃はかさむ。

思い余って、イセは卓治に電報を打った(この時代、まだ電話
は一般には普及していない)

卓治の返事はこうだった。

「イッタンモドレ。ソウダンスベシ」

それで、イセもいったん網走にもどることにした。

もどってみると、卓治は卓治なりに動いてくれていた。

そして、知人のアドバイスもあり、卓治の妹・タマの夫、東条
貞をとおして、東条が以前、北海道議会で議員をしていた
ころの知り合いを、紹介してもらえることになったのだ。

「いいのかねえ、関係ないひとまで引っ張りこんで」

イセが逡巡すると、めずらしく、卓治が強い口調で言い切った。

「もとはといえば、東条の選挙資金のために、こったら借金
ができたんだ。本来だば、東条が返すべきもんだべ。やつに
頼むのは、なんもはずかしいことではねえと思う」

それでも納得のいかないイセではあったが、とにかく、いま
一番大切なことは、この借金を返すめどをつけることだ。

「わかった。だけど、余計な口出しは無用だよ。わたすは、
わたすのやりかたで、相手を説得したいんだ」

そんなやりとりの結果、札幌在住の道議会議員が、イセに
同行してくれることになり、イセは、ふたたび札幌に出向
くことになったのだった。


----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------

---------------------------------------------------------
10月12日で100話!物語版「零(zero)に立つ」感想募集
募集期間/2016年10月1日〜10月11日23時59分
条件/物語版「零(zero)に立つ」の感想を、400字以上 
※一部の感想でもOK! 詳細/こちら! 
---------------------------------------------------------

-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)

詳細/こちら! 
---------------------------------------------
---------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1006182.jpg
「JRノロッコ号内部」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 05:48| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月05日

物語版「零(zero)に立つ」第13章 茂市の死(6)/通巻96話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
『零(zero)に立つ〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』
※この作品は、もともと、女優・夢実子が演ずる語り劇として書かれたものを、
 脚本を担当したかめおかゆみこがノベライズしているものです。

※これまでのあらすじと、バックナンバーは、こちら


支店長は、自分の耳をうたがった。

割賦というのは、わかる。検討してみないこともない。が、
50年なんて長期の割賦など…。

「中川さん、失礼ですが、50年という割賦は…」

「わかっております。ないことは承知でお願いしておりま
す。でも、私どもは、本気で全額お支払いする気でおりま
す。私ら夫婦はまだ若い。これから開拓する牧場もある。
拓銀さんとしても、この先50年、そこからずっと収入が
入りつづけるわけですから、損な話ではないはずです」

支店長はふたたびうなった。すぐに返すことばが出なか
った。

イセの理屈は、おもしろい。ときどきこんなふうに、強引
に自説を押してくる。子どものときからそうだった。

14歳で家出するとき、親の金5円をもちだしたときも、
「学校にも行かせずに、さんざんはたらかせたぶんの給
金だ」と言い切った。

今回も、自分たちは金を返したいから、ローンの期限を
延ばせとは、なんと無茶な要求だろう。

しかし、その気迫が、けっしてその場しのぎのごまかしで
はなく、本気の決断であることを伝えてくる。

「しかし、規則にないものは…」

支店長は、弱々しく抵抗をこころみたが、そんなことばで、
イセが引き下がらないことは、すでに感じとっていた。

「わかりました。しかし、規則外のことを、我々のような一
支店がやるわけにはいかんのです。札幌の本店に行って
聴いてみてください。ご紹介はします」

支店長は、その場で、札幌本店に電話をかけた。

「…はい、そういうわけで。ええ、もちろん、おことわり
しましたが…。ですから、会うだけでも会ってやってくだ
さい。とにかく、本人は全額返すということですので…」

なかば押し切るように、支店長は電話を切った。

「そういうことですので、本店に行ってみてください」

「わかりました! 支店長さん、ありがとうございます! 
ご恩は忘れません!」

イセは、何度も何度も深々と頭を下げた。

「うまくいくように、願ってますよ」

イセを見送りながら、支店長は、自分がなかば本気で
そう想っていることに気づいて、おどろいた。

「たいしたひとだ。まだ若いのに。いつか何か、おお
きなことをしとげるかもしれないな…」

思わずそんなことを、ひとりごちるのであった。

ちなみに、イセ、このとき、27歳。


----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻
イセさんの誕生〜北海道に渡るまで。波瀾万丈の人生の幕開けです!
 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
詳細は、こちら
----------------------------------------------------------------

---------------------------------------------------------
10月12日で100話!物語版「零(zero)に立つ」感想募集
募集期間/2016年10月1日〜10月11日23時59分
条件/物語版「零(zero)に立つ」の感想を、400字以上 
※一部の感想でもOK! 詳細/こちら! 
---------------------------------------------------------

-------------------------------------------------------
札幌★夢実子 語り劇「掌編・中川イセの物語」
ほか
日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1
(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)

詳細/こちら! 
---------------------------------------------
---------------------------------------------------
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら
 
-----------------------------------------------

夢実子の語り劇を上演してみませんか?



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1005181.jpg
「てんとらんど祭」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:15| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月04日

物語版「零(zero)に立つ」第13章 茂市の死(5)/通巻95話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


夢実子の語り劇を上演してみませんか?

------------------------------------------------------
札幌★夢実子×ゆみこ 語り劇&ワークショップ

日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! お申し込み/こちら
------------------------------------------------

-----------------------------------------------------
いのちの使いかたを切り換える日
かめおかのメルマガ「今日のフォーカスチェンジ」13周年記念企画
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら! お申し込み/こちら

-----------------------------------------------------
---------------------------------------------------------
10月12日で100話!物語版「零(zero)に立つ」感想募集
募集期間/2016年10月1日〜10月11日23時59分
条件/物語版「零(zero)に立つ」の感想を、400字以上 
※一部の感想でもOK! 詳細/こちら! お申し込み/こちら
---------------------------------------------------------



脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬を駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47 
48 49 第8章 51 52 53 54 55 56 57 58 59
第9章 60 61 62 63 64 65 66 第10章 67 68 69 
70 71 第11章 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 
82 83 84 第12章 85 86 87 88 89 90 第13章 91 
92 93 94 
※これまでのあらすじは、こちら


数日後、イセは、北海道拓殖銀行網走支店をたずねた。
まっすぐに受付に行くと、行員に告げる。

「おはようございます。支店長さんはお手すきでしょうか。
中川イセと申します。ご面会をお願いしたくまいりました」

「中川」と言った瞬間、行内の空気がさっと変わった。

さほどおおきくない町のこと、中川家の跡取り息子が、
14万円の借金を背負い込んだことは、すでに知れ渡って
いた。

「網走一の借金王」「中川家はもうだめだな」といううわさ
が、どこへいっても聴かれるほどだった。

それを融資していた拓銀であればこそ、受付の行員にい
たるまで、知らないものはいないだろう。

「はっ、はい」

飛び上がるように、行員が、支店長に取り次ぎに行く。

みな、見て見ぬふりをして、イセのようすを注目している
が、イセはまったく気にかけるふうもない。

ほどなくして、支店長室にとおされたイセは、そこにいる
支店長を見ると、ていねいに頭を下げた。

支店長の顔は、茂市の葬儀のときに見て、知っていた。

「生前は、中川茂市が大変お世話になりました。ありがと
うございます」

支店長も、居住まいを正して、頭を下げた。

「こちらこそ、長年にわたり、ごひいきにしていただき、
感謝いたしております。このたびは、本当にお悔やみ申
し上げます」

行員が、茶をもってきて、テーブルにおいたが、イセは、
まっすぐに起立したままだ。

「さ、どうぞ、おすわりください。ご用件の向きをうかがい
ましょう」

支店長は、イセに着席をうながした。

ことばはていねいだが、借金の減免などはみとめないぞ
とでもいうかのような、すきのなさも感じられる。

「ありがとうございます」

イセは、席に座ると、茶には手をつけず、正面にすわっ
た支店長をまっすぐに見据えた。

そのまなざしに、支店長は、内心、おやと思った。

これだけの借金に関する話なのだから、本来なら、当主
の卓治がきて当然だ。その代わりに、なぜ、妻が? 

しかも、まったく悪びれるふうも、こびるふうもない。

それどころか、かくしようもないほど強い意思が、まなざ
しをとおして伝わってくる。

通常、莫大な借金を背負っているものは、こんな眼力は
もっていないものである。

過去には、遊廓ではたらいていたという、うわさも聴くが、
そんな雰囲気は微塵も感じさせない。

「どうぞ、お話しください」

支店長にうながされ、イセはうなずいた。

「私ども、故人が貴行から借り受けましたお金を、必ず全
額お返しいたします。しかしながら、いますぐは困難です。
私どもに時間をください。単刀直入に申し上げます。50
年の月賦にしていただきたいのです」

イセは一気に言うと、もってきた、牧場や家屋の権利書
一切の担保書類を、テーブルのうえにおいた。

「50年…ですか?」

支店長の声がかすれた。


ぜひ、感想をお聴かせください
物語版「零(zero)に立つ」の感想を、ぜひお寄せください。
ブログのコメント欄にお書きいただくか、
こちらまで、メールでお寄せいただければ幸いです。
※メール画面が立ち上がらない場合は、こちらまで→info@kamewaza.com

その際、掲載してよいお名前を教えてください。(匿名・イニシャル可)
また、ブログ等をおもちのかたは、URLも、よかったらお知らせください。
あわせて、ご紹介させていただきます。

----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
※イセさんの誕生〜北海道に渡るまでを、まとめて一気に読めます。
詳細は、こちら! お申し込みは、こちら

----------------------------------------------------------------



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1004175.jpg
「感動の径ウォーク」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 04:29| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月03日

物語版「零(zero)に立つ」第13章 茂市の死(4)/通巻94話

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


夢実子の語り劇を上演してみませんか?

------------------------------------------------------
札幌★夢実子×ゆみこ 語り劇&ワークショップ

日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! お申し込み/こちら
------------------------------------------------

-----------------------------------------------------
いのちの使いかたを切り換える日
かめおかのメルマガ「今日のフォーカスチェンジ」13周年記念企画
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
10月22日・東京  詳細/こちら! お申し込み/こちら

-----------------------------------------------------
---------------------------------------------------------
10月12日で100話!物語版「零(zero)に立つ」感想募集
募集期間/2016年10月1日〜10月11日23時59分
条件/物語版「零(zero)に立つ」の感想を、400字以上 
※一部の感想でもOK! 詳細/こちら! お申し込み/こちら
---------------------------------------------------------



脚本担当・かめおかゆみこです。

山谷一郎著『岬を駈ける女』を主要資料としながら、かめおかの視点で、イセさんの
物語をつむいでいます。物語ですので、すべてが事実ではなく、想像やフィクション
がまじる部分もあります。けれども、イセさんの生きかたの根本ははずさないで書い
ていくつもりです。ご感想をいただければ励みになります。よろしくお願いします。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47 
48 49 第8章 51 52 53 54 55 56 57 58 59
第9章 60 61 62 63 64 65 66 第10章 67 68 69 
70 71 第11章 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 
82 83 84 第12章 85 86 87 88 89 90 第13章 91 
92 93 
※これまでのあらすじは、こちら


茂市の葬儀が終わり、ふたたび、親戚一同が集まった。

中川家は、長男である卓治がつぐことになる。卓治を上
座に、みながぐるりとすわった。

年かさの親戚のひとりが、声を発した。

「卓治よ、茂市さんの相続のことだがな…」

すると、イセが、静かに、けれどもきっぱりと言った。

「あのときもお話しましたが、借金は、私どもで引き受け
ます」

親戚たちはざわめいた。

「無茶だ。返せるはずがない!」

「あとで泣きついても、知らないからな」

「身のほど知らずにも、ほどがある」

しかしそのとき、卓治が太い声で一喝した。

「イセがやると言ってるんだ。やらせろ」

結婚して7年。卓治は、イセをこころの底から信頼していた。

イセはやる。いったん、やると決めたら絶対にやる。それを
ささえるのが、おれの役目だと。

その気迫に、親戚たちは、それ以上言うことができずに、不
承不承引き下がった。

けれども、それからが大変だった。一刻のゆうよもなく、借
金返済のために、動かなくてはならなかったからだ。

イセたちは、能取の牧場をいったんひとにまかせ、自分たち
は町に出てきて、中川の家で暮らすことにした。

当初は、町で仕事を見つけてはたらき、それで返していこう
と想っていたが、額が大きすぎて、そんなことではまともに
返せそうにない。

14万円の借金先は、すべて、北海道拓殖銀行だった。

茂市は、町会議員という肩書と信用で、それだけのお金を融
資してもらっていたわけである。

「イセよう、どうするつもりだ。何か考えはあるのか」

卓治がたずねると、イセはこたえた。

「うん。とにかくいきなり全額は無理だから、銀行さんとか
けあって、割賦にしてもらおうと思うんだ」

「なるほど。それなら、一回に返すぶんが、少しは楽になる
な。しかし、それにしても、何回くらいにしてもらうんだ」

イセはじっと考え込んでいたが、ひとこと、言った。

「50年って、想ってる」

「ご、50年?」

卓治は、めんくらったように聴き返した。

「そんなに長い割賦って、あったかのう」

「ないと思う」

「なら…」

「だけど、そのくらいでないと、どうしたって返せない。わた
すは、返すつもりで考えてるんだし、銀行さんだって返して
もらったほうが得なんだから、とにかくかけあってみる」

イセは、にこっと笑って、立ちあがった。


ぜひ、感想をお聴かせください
物語版「零(zero)に立つ」の感想を、ぜひお寄せください。
ブログのコメント欄にお書きいただくか、
こちらまで、メールでお寄せいただければ幸いです。
※メール画面が立ち上がらない場合は、こちらまで→info@kamewaza.com

その際、掲載してよいお名前を教えてください。(匿名・イニシャル可)
また、ブログ等をおもちのかたは、URLも、よかったらお知らせください。
あわせて、ご紹介させていただきます。

----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
※イセさんの誕生〜北海道に渡るまでを、まとめて一気に読めます。
詳細は、こちら! お申し込みは、こちら

----------------------------------------------------------------



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1003174.jpg
「感動の径ウォーク」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 05:18| Comment(0) | 物語版「零(zero)に立つ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月02日

「2巻目はまだですか?」〜寄せられた感想より〜

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


夢実子の語り劇を上演してみませんか?

------------------------------------------------------
札幌★夢実子×ゆみこ 語り劇&ワークショップ

日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら! お申し込み/こちら
------------------------------------------------

-----------------------------------------------------
いのちの使いかたを切り換える日
かめおかのメルマガ「今日のフォーカスチェンジ」13周年記念企画
夢実子ゲスト出演!講話「中川イセのあきらめない精神」
詳細/こちら! お申し込み/こちら

-----------------------------------------------------
---------------------------------------------------------
10月12日で100話!物語版「零(zero)に立つ」感想募集
募集期間/2016年10月1日〜10月11日23時59分
条件/物語版「零(zero)に立つ」の感想を、400字以上 
※一部の感想でもOK! 詳細/こちら! お申し込み/こちら
---------------------------------------------------------



脚本担当・かめおかゆみこです。

土日祝日は、連載はお休みさせていただいています。


これまでのあらすじは、こちら


この1週間で、立てつづけにいただいた、うれしい感想です。


あるかた(30代・女性)。

イセさんのことは全然知らず、
たぶん、お義理で買ってくださったのですが(笑)、
先日たまたまお会いしたら、

「一気に読んでしまいました! えええ、ここで終わるの? 
つづきはまだですか〜?



夢実子さんより報告

シベールアリーナ公演を観劇していただいた方から

「物語版『零(zero)に立つ』の第2巻はどこで買えるの?」
と、お問い合わせがあったそうです。

なんでも、会社の専務さんに読んでいただいたところ、
「すぐにつづきが読みたい!」
と言われたのだそうです。


そして、なんと、ご自身のブログ記事で、
取り上げてくださったかたがいらっしゃいます!

栄養療法で、イギリス・日本で活躍されている
キンロス・一美さん


「おしん」、あるいは「細うで繁盛記」から
浪花節っぽさを引いて、もっともっと力強くした、
何だかもう、拝みたくなるような人


この「イセさん像」…なんて、的確な表現なんでしょうか!

一気に読了しましたよ!
すると何だか、体中に、熱い潮が
押し寄せたような気持ちになったんです!!


以下、全文はぜひ、一美さんのブログでお読みください!


かめおかは、かつて児童文学作家をめざしたことはありますが、
作家ではありません。(脚本家ではありますが)

ですから、毎日、小説を連載するなんて、いままで考えたこと
もありませんでした。

でも、とぎれないんですね。毎日、パソコンの前に向かうと、
その日の原稿が、すっと書けてしまうんです。

何か、すでに下書きがすんだものを、ただ書き写しているだけ
のような、そんな気持ちになることさえあります。

もちろん、骨子は、山谷一郎さんの『岬を駈ける女』を参照さ
せていただいているのですが、事実確認をするだけで、具体的
な中身は、すべて、自分で書いています。

だから、自分でも不思議な感じがするときがあります。


物語は、第13章「茂市の死」に入り、いよいよ、イセさんの
半生記の後半です。

のしかかる莫大な借金。

この箇所を読まれた、A・Oさんが、
あぁ、また(@_@) なんで、人の尻拭いばかり…

と、ご自身のお知り合いであるかのような感想を。(笑)

困難に立ち向かう、イセさんの叡知をお楽しみに!


ちなみに、第12章「岬の日々」は、私自身にとっても、とても
なじみの深い、能取岬のシーン。

その光景を書いているときは、自分が体験してきた風や雪を、
からだとこころにありありと感じながら、楽しく書きました。

常連読者さんの、「Nobuko Yoshimoto」さんが、

能取岬での新生活もワクワクして好きです。
こういう大自然との描写、ほんとうに生き生きとして巧みで
すねぇ。五感で追体験する思いです


と書いてくださったのには、我が意を得たりという気持ちがして、
うれしかったです。


期間限定10日間の「感想募集」もスタートしました!

10月22日には、かめおかのメルマガ13周年イベントで、
夢実子さんの講話も聴けますよ。

こちらのお申し込みも、お待ちしています!



ぜひ、感想をお聴かせください
物語版「零(zero)に立つ」の感想を、ぜひお寄せください。
日曜日のブログにて、紹介させていただきます。
ブログのコメント欄にお書きいただくか、
こちらまで、メールでお寄せいただければ幸いです。

その際、掲載してよいお名前を教えてください。(匿名・イニシャル可)
また、ブログ等をおもちのかたは、URLも、よかったらお知らせください。
あわせて、ご紹介させていただきます。

----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
※イセさんの誕生〜北海道に渡るまでを、まとめて一気に読めます。
詳細は、こちら! お申し込みは、こちら

----------------------------------------------------------------



網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1002173.jpg
「感動の径ウォーク」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 05:46| Comment(0) | 報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月01日

10月12日で100話!記念★物語版「零(zero)に立つ」の感想募集!

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


夢実子の語り劇を上演してみませんか?

------------------------------------------------------
札幌★夢実子×ゆみこ 語り劇&ワークショップ

日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら
お申し込み/こちら
おもて面小.JPG うら面小.JPG
------------------------------------------------



脚本担当・かめおかゆみこです。

土日祝日は、連載はお休みさせていただいています。


これまでのあらすじは、こちら


今年5月19日、語り劇「零(zero)に立つ」の、シベール・アリー
ナ公演100日前を記念して、しばらくお休みしていたブログを、
フッカツ

その翌20日、うっかりぽっかりお休みしてしまったものの、
5月23日からスタートした、物語版「零(zero)に立つ」は、
1日の休載もなく、書きつづけることができました。

おかげさまで、あと11日(平日連載なので、実質は8日)で、
ちょうど、100話になります!


ここまでつづけてこられたのは、こうして読んでくださる、
あなたのおかげです!

連載は、ほぼ、朝4時半〜6時半くらいまでのあいだにアップ
していますが、とにかく、アップした直後から、アクセスが
ぐぐっと伸びるのです。

それも、5人や10人ではなく、2時間くらいのあいだに、30人
〜50人くらいのかたが、読みにいらしてくださいます。

朝の5時、6時にですよ〜。本当に、もう、感涙以外の何も
のでもありません。


そこで、せっかくの100話めを記念して、(といってもお話
的には、何の区切りもないとこになるかと思うのですが)、

プチ感謝企画をやっちゃいます


「零(zero)に立つ」感想募集〜

募集期間/2016年10月1日〜11日23時59分
条件/物語版「零(zero)に立つ」の感想を、400字以上

  ※すべて読んでいなくてもかまいません。一部の感想でもOK!
お申し込み/https://1lejend.com/stepmail/kd.php?no=ylTstIRnMXza
問い合わせ/info@kamewaza.com



スペシャル特典

投稿していただいたかた全員に、 WEB上でプチプレゼント。(後日発表)

いただいたすべての感想のなかから、5名のかたに特別プレゼント

 1)10月22日・東京・かめおかメルマガ13周年イベントにご招待!
 2)冊子「零(zero)に立つ」第1巻をプレゼント
 3)かめおかより北海道土産を進呈
(お届けは、帰省時12月になります)

※いわゆる文章の優劣ではなく、
 完全に、かめおかのシュミ・好みで決定します!
 どうぞ、自由な感想をお寄せくださあい

※いただいた感想は、ブログ上でご紹介させていただくとともに、
 今後、この冊子や、語り劇を、より多くのひとに知っていただくために活用
 させていただきます。

ご応募、お待ちしてまあす!!

----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
※イセさんの誕生〜北海道に渡るまでを、まとめて一気に読めます。
詳細は、こちら! お申し込みは、こちら

----------------------------------------------------------------




P_20160624_153334.jpg
「能取岬にて」(201606かめおか撮影)
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 22:09| Comment(3) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

これまでのあらすじ/河北新報と山形新聞に掲載されました!

天童で産まれ網走で活躍した、中川イセさんの半生を描いた
語り劇『零(zero)に立つ
〜激動の一世紀を生きた中川イセの物語〜』


夢実子の語り劇を上演してみませんか?

------------------------------------------------------
札幌★夢実子×ゆみこ 語り劇&ワークショップ

日時/2016年11月26日(土)10時〜16時45分
会場/ちえりあ演劇スタジオ1(地下鉄東西線宮の沢駅約5分)
詳細/こちら
お申し込み/こちら
おもて面小.JPG うら面小.JPG
------------------------------------------------



脚本担当・かめおかゆみこです。

土日祝日は、連載はお休みさせていただいています。


第1章     第2章      10 11 12 13 14 
第3章 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
第4章 26 27 28 29 30 31 第5章 32 33 34 35 36 
37 第6章 38 39 40 41 42 43 44 第7章 45 46 47 
48 49 第8章 51 52 53 54 55 56 57 58 59
第9章 60 61 62 63 64 65 66 第10章 67 68 69 
70 71 第11章 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 
82 83 84 第12章 85 86 87 88 89 90 第13章 91 
92 93 94 95 96

★第1章★ いせよ誕生
明治34年(1901年)、今野安蔵・サダの娘、いせよ(のちの中川イセ)
誕生。サダは、産後の肥立ちが悪く、死を予感。ヤクザものの安蔵にあとを
託すことを怖れ、佐藤コウに里親を頼むと、その年のうちに亡くなった。

★第2章★ 差別と貧しさのなかで
イセは佐藤家の里子になった。佐藤家は貧しく、イセはまわりからいじめられ
たり、差別を受けたりするが、コウの愛情、親友・渡辺みよしの存在、自身の
負けず嫌いの性格で、それらをはね返して成長していく。

★第3章★ はじめての家出
10歳で実家に連れもどされイセは、学校にも行けず、仕事に明け暮れる。
11歳の夏、モヨとの口論から、初めての家出。山形の船山先生夫妻の
家で住み込みの女中をし、かわいがられるも、翌春、船山先生に満州へ
の転勤辞令が出て、再び実家にもどることになる。

★第4章★ イセの初恋
またまた家出し、米沢の寮づきの織物工場ではたらく。仲間もできて楽し
い日々。そんな中、隣に住む名家の次男坊・戸田茂雄との初恋も体験。し
かし、安蔵にイセの居場所を知られたことで、イセは実家に帰ることに…。

★第5章★ 女優志願
実家にいる間、地域巡演で山形にきた松井須磨子(実はにせもの)にあこが
れ、家出して上京する。しかし、たずねた帝国劇場に須磨子はおらず、い
くつかの仕事を転々とするが、結局あきらめて山形にもどることになる。

★第6章★ 運命の歯車
人絹工場、機織り工場などではたらくうち、かつて実家に出入りしていた
芸人・八重松と再会。乱暴されて子どもを身ごもり、17歳で娘・愛子を
出産。その後、北海道の遊廓への話をもちかけられ、悩んだ末、イセは3
年で500円の借金をし、そのお金で愛子を里子に出すことにする。

★第7章★ 網走まで
大正7年暮れ、イセは北海道に旅立った。ところが途中で虫垂炎から腹
膜炎をおこし、到着した旭川で即入院。借金が倍の1000円となり、
網走の遊廓に売られることに。駅前の島田食堂の夫婦にかわいがられる。

★第8章★「お職」になる!
自転車を借りて町内を乗り回したり、柔道場に通ったりしたイセだが、娼
妓になると今度は、囲碁や将棋をおぼえ、お客を楽しませる工夫をした。
また酒に強く、何度も杯を重ね、そこから収益をあげることも考えた。

★第9章★「小梅」の死
イセは、娼妓に乱暴した客を一本背負いで投げ飛ばすなどで、娼妓たちの
信頼を勝ち得ていった。しかし一方で、妹ぶんの「小梅」が、失恋を苦に
自死。小梅の死をきっかけに、娼妓みんなでちからをあわせることを誓う。

★第10章★中川卓治という男
イセは、柔道場で出会った中川卓治と親しくなり、急速に気持ちが近づい
ていく。卓治の妹・タマは、2人の交際をはげしく反対するが、卓治はイ
セに求婚し、イセは身請けされて、ついに遊廓を出る。

★第11章★樺太にて
中川家よりもイセを選んだ卓治。2人は樺太にわたり、仕事を見つけて
はたらき、暮らしを立てた。卓治は、酒がもとでけんかをして大けがを
したりもするが、ついに茂市の許しが出て、網走に帰れることになる。

★第12章★岬の日々
網走の能取岬にある中川牧場の管理をまかされたイセたち。その雄大な
景色にイセは魅了される。乗馬も覚え、少しずつ馬との暮らしに親しみ、冬
になれば、流氷の美しさに見とれる。平和な日々がすぎていく。

★第13章★茂市の死(20160930ぶんまで)
卓治の妹タマは、のちに衆議院議員になる東条貞と結婚。卓治の父・茂市
は東条の経済援助をする。その茂市が倒れた。しかも14万円もの借金が
あるという…。


8月27日にシベール・アリーナで、語り劇「零(zero)に立つ」
を上演して、はや1か月。

今回は、山形県で2度目の上演だったこともあり、昨年のよ
うに、マスコミでとりあげていただく機会も、ほとんどあり
ませんでした。

(にもかかわらず、400名余の客席が、ほぼ満席という、
 ありがたい結果にはなったのですが)

そのなかで、とりあげていただいたのが、河北新報さんです。
9月26日の掲載となりました。

20160926河北新報_o.jpg


また、9月30日付の山形新聞に、当日の劇評が掲載されま
した!

執筆してくださったのは、表現集団「エッグ・プロジェクト」の
池田はじめさん。

池田さんは、夢実子さんの最初の語り劇「真知子」のもと
になる、ひとり芝居「真知子〜ある女医の物語〜」の脚本
を書いてくださったかたです。

今回も、こんな偶然のご縁がつながったこと、感謝でいっぱ
いです。

14516493_1110497675700150_4767472484328717698_n.jpg


さてさて。
おたずねいただくことのふえてきた、首都圏公演についてで
すが、少しずつ準備をすすめております。

ついては、10月22日に、東京で
夢実子さんに、公演ならぬ講演になりますが、

「中川イセのあきらめない精神を語る」を、
お願いすることが決まりました。

詳細は、今日、のちほど告知します。

そのほかにも、いろいろと企画中です。どうぞお楽しみに!



ぜひ、感想をお聴かせください
物語版「零(zero)に立つ」の感想を、ぜひお寄せください。
日曜日のブログにて、紹介させていただきます。
ブログのコメント欄にお書きいただくか、
こちらまで、メールでお寄せいただければ幸いです。

その際、掲載してよいお名前を教えてください。(匿名・イニシャル可)
また、ブログ等をおもちのかたは、URLも、よかったらお知らせください。
あわせて、ご紹介させていただきます。

----------------------------------------------------------------
「零(zero)に立つ」第1巻 
1200円+送料200円=1400円 ※2冊以上でも、送料は据え置き200円
※イセさんの誕生〜北海道に渡るまでを、まとめて一気に読めます。
詳細は、こちら! お申し込みは、こちら

----------------------------------------------------------------


網走市観光協会さまのサイトより、ご承諾を得て
網走の写真をお借りしています。ありがとうございます。
1001172.jpg
「ワカサギ釣り(網走湖)」 
一般社団法人網走市観光協会さまご提供
posted by 夢実子「語り劇」プロジェクト at 05:19| Comment(0) | 報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がない ブログに表示されております。